マチンガのノート

読書、映画の感想など  

抵抗都市/佐々木譲 

2020-05-31 22:23:32 | 日記

著者インタビューによると「今の日本社会のひずみを語るのであれば、歴史改変という形がいいだろうと思って」

本作を書いたとの事であるが、ロシアが日本を統治し、天皇制も大日本帝国憲法も維持されていても、

外交権も軍事権もロシア側が握っているにも関わらず、二帝同盟と呼んでいるというのは、

戦後の日本を連想させる設定になっている。

さらに物語の中で、欧州の戦場のロシア側に日本の陸軍がさら追加で送られるという事になっていて、

最近の集団的自衛権に関することを連想させる展開にもなっている。

主人公の刑事は、万年筆の外商をやっていた人物が殺害された事件を捜査するのだが、

その人物が色々な所の情報提供者だったことが解り、捜査を進めるうちに、

日本には伝えられていないが、欧州でロシアがかなり苦戦していてポーランドやバルト三国も

独立を伺っているという将校や、日本で抵抗運動が起きてもロシアはこちらへ陸軍を

派遣する余裕が無いので、とりあえず騒乱を起こし、日本国内を戦場にすれば

ロシアの属国であることから自立する方向になるのではとして、いろいろと計画している

勢力も出てくる。

主人公は日露戦争からの帰還兵という設定で、実際に大量の死者が出た戦地を体験しているので、

それらのことが正しいのかどうかよりも、自分の国が戦場になることを避けるために

捜査を続けていく。

これまで戦争物の小説や映画の設定といえば、外国で戦闘に巻き込まれるとか、加わるというものが

多かった印象があるが、本作で主人公が戦地から帰った人物で、その時のことを今もありありと

思い出すという設定は、やはり米国のイラクやアフガンでの事の報道や、シリアなどに関する

報道の影響が大きいのだろう。

 

 


囚われた国家/Captive State 監督 ルパート・ワイアット 出演 アシュトン・サンダース

2020-05-25 22:58:54 | 日記

異星人に侵略、支配されて9年目の2027年のシカゴを舞台にしたSF映画です。

米国映画によくある異星人と派手に闘う映画ではなく、支配、管理されている米国を

描いた映画になっています。

侵略してくる異星人とある程度闘ったのちに和平を結び、軍隊を解散して

異星人が各国政府を通して人類を統治して、そのもとで企業もメディアも活動しています。

なにかと米国が色々な国を支配して、そのもとでそこの政府が活動するというのは

多かったでしょうが、今回の映画の中では米国も支配の対象となり、

一部の人たちが異星人の監視を逃れて抵抗活動をするところがメインのストーリーです。

この映画が製作された背景としては、やはり、イラクやアフガンで上手くいかなかった事と、

それに続くその後の混乱、そしてそれらに関する様々な事を伝えたメディアの影響が大きいのでしょうか。

この映画の中では、監視を逃れるためにデジタルからアナログにしているなどのシーンが出てきて、

以前にあったヨーロッパを舞台にしたスパイ映画のような世界が、近未来の米国で展開するという、

米国映画らしくない、独特の映画です。

映画『囚われた国家』予告篇|4.3[金]全国公開


グッドライアー 偽りのゲーム/THE GOOD LIAR 監督ビル・コンドン 出演ヘレン・ミレン イアン・マッケラン

2020-05-23 18:12:15 | 日記

「RED」ではうさぎちゃん役を演じ、「黄金のアデーレ」でも主演していたヘレン・ミレンと

「ゴールデン・ボーイ」でナチの残党を演じたイアン・マッケランが出演しています。

マッケラン演ずる詐欺師のロイは、ネットの出会い系サイトで資産家のベティ(ヘレン・ミレン)

と会うことになり、カモにしようとします。

ロイは他でだました相手に偶然出会うと、あっさり相手を殺すほどの冷酷な詐欺師で、

ベティは元大学教員で、孫も歴史の研究者のインテリ一族のように見えます。

二人でベルリンに旅行に行った際に、ロイはベティの孫に過去の経歴の矛盾を指摘されますが、

納得できるいきさつを説明してたので、ベティはロイに対する警戒を解いて、二人で投資することにします。

そこからが意外な展開になるのですが、戦中の出来事から続く展開で、意外な結末を迎えます。

時々ロイが見かけるアウディに乗った黒人男性がベティの孫で、孫を名乗っていた人は

その彼氏という設定に時代の変化を感じました。

単なる詐欺の映画ではなく、歴史や時代の変化を盛り込んだ内容の深い映画になっていました。

映画『グッドライアー 偽りのゲーム』本予告 2020年2月7日(金)公開

 

 


ネバー・ダイ 決意の弾丸:監督リオール・ゲラー 出演ジャン・クロード・バン・ダム

2020-05-22 23:10:22 | 日記

ワシントンDCの一角の中南米からの移民が多い地域で薬物売買などを仕切っている

中米系ギャングのボスに雇われて集金をしている14歳のルーカスですが、

兄は市民権を得るために軍隊に行き戦死したので、自分で小学生の弟を養っています。

ギャングのボスも、祖国で父親が殺され、米国に越境するときに母親も殺されたために、

障害のある妹のためにギャング稼業を情け容赦なくして、その一帯を仕切っています。

ダニエル(バン・ダム)は戦争に出征した際に、誤って子供を撃ち殺した上に、爆発で重傷を負い、

話すことも出来なくなり、PTSDなどを緩和するためにルーカスから薬物を買っていますが、

なにかとルーカスを気にかけています。

ギャングたちは顔にタトゥーを入れるくらいなので、将来更生したり普通の仕事に就くことを

考えていないことが伺えます。

ボスの側近に行動を疑われて狙われるルーカスですが、偶然ダニエルに助けられ、

街から脱出しようとしますが捕らえられます。

ルーカスを助けにボスの所に乗り込むダニエルですが、衰えているために、

これまでのバン・ダム映画のようには行きませんが、張り込んでいたFBIを巻き込んでの

銃撃戦に乗じてルーカスたちを助けて、街から連れ出そうとします。

これまで様々なギャング映画が作られてきましたが、みなある程度普通の格好をした

ギャングたちでしたが、こちらは顔にタトゥーを入れるくらいの、これまでと違った

ギャングたちなので、とてもインパクトがありました。

今回、バン・ダムはほとんど格闘などをしませんが、渋い演技がよかったです。

 


日本の臨床心理、精神医学への影響が大きそうな記事

2020-05-22 10:00:15 | 日記

日本ではいち早く、中井久夫氏が紹介した「人殺しの心理学」デイブ・グロスマン著だが、

そのもとになったS.L.A.マーシャル准将のデータは、信ぴょう性に欠けるものとのこと。

デジタル社会の現代ならばそのような調査はある程度簡単にできそうだが、

第二次大戦当時にそのような調査をしようとすると、かなりの年数が必要なので、

創作なのだろうとしている研究者もいるとのこと。

ヤフーニュース

戦争における「人殺し」の心理学:デーブ・グロスマン