著者の黒川博行さんは、これまでバディ物の作品を多く書かれていて、建設コンサルタントとヤクザの
コンビものシリーズやチョイ悪刑事のコンビものシリーズを書いてこられて来た方です。
これまでのバディ物では主人公たちが合法違法の手段を組み合わせて物語が展開していました。
本作もバディ物ですが、主役二人は双方とも普通の刑事という設定で、合法的な捜査で犯人を突き止めてゆきます。
その分なのか、悪役がとても有能な設定になっていました。
【あらすじ】
サラ金の過払い金返還ビジネスで儲けた黒幕が自宅で射殺されたため、捜査本部が箕面北署に設けられ、
大阪府警の舘野は箕面北署の玉川と組んで捜査を始めます。しかし何が持ち去られたのかが、警察には分かりません。
被害者は詐欺で大金を得たことが裏社会では知られているのと、犯行の荒っぽさから外国人犯罪グループなどの
犯行ではないかと捜査本部内では推測されますが、手がかりが少なく捜査は進展しないのでした。
そうしているうちに、更に強盗殺人事件が大阪市内で起きるのでした。
【感想】
前作の「連鎖」も普通の刑事達が捜査を進めてゆく話でしたが、本作も普通の刑事が捜査をする話なので、
いかに刑事の仕事が大変なのかが判るものになっています。
犯人は用意周到に犯行をしてゆきますが、それでも交通監視システムや防犯カメラなどの様々な記録から、
徐々にあぶり出されてゆく所が読み応えがありました。
著者は長年執筆するに当たり、刑事の仕事をかなり取材してきたでしょうから、そのことをメインに使ったのでしょう。
本作でも主人公たちの掛け合いや食べ物に関するところは健在で、関西を舞台に進む物語にリアリティを感じさせました。
600ページ近くありますが、最後まで引っ張る内容でした。