マチンガのノート

読書、映画の感想など  

悪逆 黒川博行 朝日新聞出版 感想 

2023-12-31 19:05:47 | 日記

著者の黒川博行さんは、これまでバディ物の作品を多く書かれていて、建設コンサルタントとヤクザの

コンビものシリーズやチョイ悪刑事のコンビものシリーズを書いてこられて来た方です。

これまでのバディ物では主人公たちが合法違法の手段を組み合わせて物語が展開していました。

本作もバディ物ですが、主役二人は双方とも普通の刑事という設定で、合法的な捜査で犯人を突き止めてゆきます。

その分なのか、悪役がとても有能な設定になっていました。

【あらすじ】

サラ金の過払い金返還ビジネスで儲けた黒幕が自宅で射殺されたため、捜査本部が箕面北署に設けられ、

大阪府警の舘野は箕面北署の玉川と組んで捜査を始めます。しかし何が持ち去られたのかが、警察には分かりません。

被害者は詐欺で大金を得たことが裏社会では知られているのと、犯行の荒っぽさから外国人犯罪グループなどの

犯行ではないかと捜査本部内では推測されますが、手がかりが少なく捜査は進展しないのでした。

そうしているうちに、更に強盗殺人事件が大阪市内で起きるのでした。

【感想】

前作の「連鎖」も普通の刑事達が捜査を進めてゆく話でしたが、本作も普通の刑事が捜査をする話なので、

いかに刑事の仕事が大変なのかが判るものになっています。

犯人は用意周到に犯行をしてゆきますが、それでも交通監視システムや防犯カメラなどの様々な記録から、

徐々にあぶり出されてゆく所が読み応えがありました。

著者は長年執筆するに当たり、刑事の仕事をかなり取材してきたでしょうから、そのことをメインに使ったのでしょう。

本作でも主人公たちの掛け合いや食べ物に関するところは健在で、関西を舞台に進む物語にリアリティを感じさせました。

600ページ近くありますが、最後まで引っ張る内容でした。

 

 

悪逆

過払い金マフィア、マルチの親玉、カルトの宗務総長――社会に巣食う悪党が次々と殺害される。 警察捜査の内情を知悉する男 vs. 大阪府警捜査一課の刑事と所轄のベテラン部屋...

朝日新聞出版 最新刊行物

 

 

 

 


山下清の発達について

2023-12-26 18:55:36 | 日記

山下清は1922年に産まれ1971年に亡くなった画家ですが、その作品を見ていると、

年代ごとに変化していることが解ります。

芸術的にどう優れているのかはこちらにはあまり解りませんが、初期の作品は居住していた八幡学園やその近辺で

見たものか、身の回りのものや東京の風景を描いたものが多いようで、平面的な感じの作品になっています。

しかし後年、東京オリンピックを描いたものや、ヨーロッパの風景を描いたものでは、遠近法が取り入れられ、

空間的な奥行きが表現されています。

風景は見たまま描いても、見たようには描けないことを理解したからのことでしょう。

 

 

遠近法の歴史|誰にでも分かりそうなのに1000年も発明されなかった技法|ジュウ・ショ(アートライター・カルチャーライター)

遠くの人は小さく、近くの人は大きく見える。 今となっては、当たり前に成立している遠近法。しかし1200〜1300年以前、つまりルネサンス期より前の絵画には、遠近法はほと...

note(ノート)

 

 

ヨーロッパにおいて、ルネッサンスの頃から一つの視点から見た風景画が描かれだして、遠近法に繋がってゆきますが、

近代になり他の人とは異なる主体というものが出来てきたこととも並行していることです。

デカルトの「我思う、ゆえに我あり」という言葉も、17世紀のものです。

山下清が遠近法を取り入れたことは、本人の認識の発達のみならず、主体の生成にも関係しているのでしょう。

精神科医の神田橋條治さんは、「発達障害は治りますか?」という本の中で、発達障害の人も発達します、と言われていて、

他の著書の中では、自分の家の事を手伝ってもらっている知的障害を抱えたお手伝いさんも、

できることが増えて行っていることを書かれていました。

適切な日常的なサポートがあれば、様々な所が発達してゆきやすいのでしょう。

 

 発達障害は治りますか? |花風社 - 発達障害に関する本の出版

 


Saltburn ソルトバーン 監督 エメラルド・フェネル 出演 バリー・コーガン ジェイコブ・エロルディ 感想 ネタバレ

2023-12-25 21:33:44 | 日記

Saltburn(ソルトバーン)とは劇中舞台となる大きな屋敷のある地名で、

大英帝国時代から続く階級を描いた映画です。

若者のひと夏を描いた映画かと思い見ていると、意外な展開になっていました。

【あらすじ】

オリバー(バリー・コーガン)はオックスフォード大学の新入生ですが周囲に馴染めません。

かたや貴族の息子のフェリックス(ジェイコブ・エロルディ)は周囲と楽しそうに過ごしています。

オリバーはフェリックスに自分の父親は麻薬の売人で、などと自分のことを話します。

そして夏休みにオリバーは、フェリックスの実家の屋敷に招かれるのでした。

【感想】

バリー・コーガンの表情の乏しさがハマっている映画で、最後に彼が一人で踊るシーンがありますが、

表情の乏しい演技がそのシーンに生きていました。

あまり解りやすい演技をせず、物語が進むにつれ不穏さを出せていました。

 

ともに過ごすファーリー(アーチー・マデクウィ)はオリバーが何かを企んでいることを察しますが、

何も言わずにいるところは有色人種ということで、フェリックス家族との距離がある所を上手く描いていました。

 

イギリスの階級や人種などの様々な所を、上手く描いた映画でした。

こちらのポスターの方が内容を上手く表していると思います。

現代の貴族の家族が執事などの使用人に囲まれて、現代的な生活をしているところが、

独特な印象を与えるところでした。

 

 


BS世界のドキュメンタリー「マトリックスの衝撃-仮想現実に覆われる社会-」感想

2023-12-21 00:34:04 | 日記
 

「マトリックスの衝撃 -仮想現実に覆われる社会-」 - BS世界のドキュメンタリー

仮想現実の世界で戦う主人公を描き大ヒットした1999年の映画「マトリックス」。その後のSF映画を変え、文化や社会に影響を及ぼした“驚異の映像革命”を深掘りする。...

「マトリックスの衝撃 -仮想現実に覆われる社会-」

 

この番組によると、主に多くの'80年代生まれの人達がこの映画に大きな衝撃と影響を受けたとのことです。

十代後半からパソコンを持つ人が増えてきたことの影響が大きかったのでしょう。

こちらの感想としては、CGが良く出来ていて、それを上手く使った映画という感じでした。

こちらに強く印象が残った映画というと、ニキータ・ミハルコフ監督の「太陽に灼かれて」(’94)と、

その続編である「戦火のナージャ」と「遥かなる勝利へ」の三部作でした。

 

 

太陽に灼かれて | 内容・スタッフ・キャスト・作品情報 - 映画ナタリー

太陽に灼かれてのあらすじや作品情報・関連ニュースのまとめページ。「黒い瞳」「ウルガ」等、叙情的な作品で高い評価を得ているN・ミハルコフ監督が、製作、脚本、主演を兼...

映画ナタリー

 

 

 

 

戦火のナージャ | あらすじ・内容・スタッフ・キャスト・作品情報 - 映画ナタリー

戦火のナージャのあらすじや作品情報・関連ニュースのまとめページ。ロシアの巨匠ニキータ・ミハルコフが'94年の自作『太陽に灼かれて』の続編の形をとり、同国史上最...

映画ナタリー

 

 

 

遥かなる勝利へ | あらすじ・内容・スタッフ・キャスト・作品情報 - 映画ナタリー

遥かなる勝利へのあらすじや作品情報・関連ニュースのまとめページ。場面写真も。巨匠ニキータ・ミハルコフ監督が『太陽に灼かれて』『戦火のナージャ』に続いて手がけた三...

映画ナタリー

 

 

 

米ソ冷戦時代に育ったことや、戦争映画をよく見ていたことや、第二次大戦の頃の歴史を扱った

本を読んでいたことが大きかったのでしょう。

冷戦時代の日本では、結構、パウル・カレルなどの戦争を扱った書籍が読まれていました。

第二次大戦を扱ったロシア映画などは泥臭く、主要な登場人物がほとんど死んでしまうものが

多かったのに対して、「マトリックス」などの映画は、スタイリッシュなSFなので、落差が大きく、

それほど強い印象を受けなかったのでしょう。