マチンガのノート

読書、映画の感想など  

内省型の精神病理 湯沢千尋

2018-09-30 09:05:38 | 日記
この本の中では、ブランケンブルクの「自明性の喪失」と類似している、
寡症状で「当たり前ということが解らない」「普通ということが解らない」などの
症例が取り上げられている。
しかしながら、ブランケンブルグと違い、この著者の場合は
自身がどのような態度で臨床をしているかで、そのようなことを
自分に話す患者さんが出始めたかについて書かれている。
この著者の場合は、自分が四十歳を超えて、運命共感的になってから、
自分に対してそのようなことを話す患者さんが出始めたとのこと。
自分の患者さんに何かをしようという態度よりも、運命共感的な態度での臨床のほうが、
患者さんが自分の状態について考え、言語化して医師に伝えるという、
患者さんの動きが活性化する場になったのではないだろうか。
様々な知識や技法を身に着けるのは時間がかかり難しくても、
診察室の中などで、運命共感的な態度をとってみる、というのは
比較的容易そうである。

こころは内臓である:計見一雄著

2018-09-28 23:59:55 | 日記
第十章 心を概念化するメカニズム メタファー経由の理解

ヨーロッパでは伝統的に、言葉は人間が神から与えられたもの、
遺伝子に備わっているものとの先入観があるが、
「肉中の哲学」ジョージ・レイコフ著 計見一雄訳
等や訳者の考えでは様々な抽象的概念は身体に基盤と由来を持つとのこと。
抽象的な概念は、天から降ってきた理性ではなく、我々の五体から
得たのだろうとのこと。
枠組みとしては、身体の機能から、メタファー経由で、概念になったのだろうとのこと。
・「時間」を説明するメタファー
 時間は動くもの。動く時間メタファー。
 流れる時間がその代表。
・「時間の経過」を私がそれに沿って動く位置と理解する、時間・位置メタファー。
 これは前者の動く時間のメタファーのバリエーションと考えられる。
・時間を資源として理解する「時間・資源」メタファー。
 これによって時間の浪費なる表現が可能になる。
・「多いは高いメタファー」:数、量に関する現象を高低で表現する。
 源泉は物を積み上げると高くなるという視覚体験。
 ここから「株の高低」なる表現が可能になる。

子供が臨床において安心感を持つ、絵画や夢などを通して治療者と
関わりを持てるようになると、バラバラでアイコンのような絵から
まとまりのあるものに変化して、「川が立つ」などの段階を経て
抽象化能力を持つようになり、症状が治まったり、適応が良くなったりすることは、
京大の臨床心理などで、よく取り上げられている。
安心感を持つことにより、身体感覚が動きだし、視覚や運動感覚と繋がり、
抽象化概念に繋がるのだろう。

精神医療 no.91「働くことの意義と支援を問う」

2018-09-20 10:47:50 | 日記
座談会「働くことの意義と支援を問う」就労支援の商業化の中で
 司会:古屋隆太、 参加者:藤井克徳、平野方紹、大塚淳子、
まとめ
 
 個別給付化により出勤日数や平均工賃額など、数字で見ようとの傾向が強くなり
 柔軟性が失われてきている。
 総合支援法でも「自立」を前面に挙げているが、それが「経済的自立」に限定されている。
 そのため、障害者を経済的に「自立できる障害者」と、「自立できない障害者」に
 分断している。
 支援費制度以降は、密度や利用の頻度も問われるようになり、福祉的ニーズとずれが
 生じている。賃金と自立を同一視しているところが問題。
 総合支援法等の改正前に議論されていた、意思決定支援、コミュニケーション支援が、
 なぜか抜け落ちている。
 主体性に関する部分が抜け落ちて、新自由主義的な政策の中での、自立が言われるように  
 なっている。
 国の財政から見て、「他人事、丸投げ」になるような、自助や互助へ方向づけられている。
 利用者側が、A型、B型、一般就労という制度に合わせようとしている。
 A型の総数は3500を超え、60%弱の経営主体が株式会社。
 業界全体ではA型は黒字経営で破綻はごく一部。
 株式会社の役割の一つである「営利追及」を社会福祉に当てはめていいのか。
 福祉的指向の強い所は経営が厳しく、企業経営の一部としているところは
 収益がいいというように、A型は二極分化している。
 厚労省としては「量から質への転換」と言っていて、質の悪いところは出て行ってもらって
 良いというスタンス。
 平均工賃が高いと公費が多く入るという成果主義強化の方向に向かっている。
 その結果、障害の重い人は肩身の狭いことになるのではないか。
 厚労省は成果主義と障害者政策は基本は相容れない事を明確にすべき。
 財務省所管の経済財政審議会から、厚労省は公費の削減や費用対効果を
 求められているが、政策に詳しい厚労省は抗し切れていない。