マチンガのノート

読書、映画の感想など  

表現 する「私」はどのように生まれるのか:岡田彩季子 ミネルヴァ書房

2019-07-31 23:50:06 | 日記

本書で印象に残ったのは、母親である著者と5歳の息子さんとの言葉と描画と身体を含んだやり取りの部分である。

そのやり取りの中で、いかに子供の自らの能動的な部分と、母親から受ける受動的な部分により、

主体が生成されていくのかが解り易く解説されている。

これまでプレイセラピーなどの臨床場面において、どのように主体が生成されていくのかが

解らなかった臨床家の方にも、解り易く解説されていると思う。

その部分だけでも、多くの臨床家にとって役立ちそうである。

多くの部分はラカンや抽象芸術について書かれているが、その辺りが難解で解りにくくても、

多くの臨床家にとって一読の価値があると思う。


獣道 監督:内田英治 出演:伊藤沙莉 須賀健太 アントニー

2019-07-26 23:48:29 | 日記

ジャケットの写真から、コメディタッチの映画かと思って鑑賞しましたが、

扱っている内容は、結構シリアスなテーマでした。

主演の伊藤沙莉が、恵まれない家庭で育ち、親のはまっている宗教から行政に引き離されたその後も、

学校は居場所にならず、様々な所に居場所を求め、ヤンキー一家に身を寄せて暮らしたり、

サラリーマン家族に引き取られたりと、彼女なりに居場所を求めていくというストーリーです。

地方都市はかなり社会が崩れて行っているのだろうかと思わせる演出でした。

閉塞した地方都市の描き方と、その中で何とかやっていこうとする伊藤沙莉さんの演技がよかったです。

 でんでんさんやアントニーもよかったです。

また、表面に顕れている思考の展開に働きかけようとする認知行動療法が、

いかに浅い考えに基づいていて、深い影響を与えられないかが、

よく解る映画でした。

 

 


身体の聲 武術から知る古の記憶 光岡英稔

2019-07-26 23:24:56 | 日記

本書では、文化や気候、歴史、社会などにより、身体の在り方、捉え方も違ってくることが、

ハワイや中国での生活体験や、武術を教えた体験、習った体験を基に解り易く解説されている。

それぞれ日本とは大きく違う現地の事や、物事の捉え方が具体的に紹介されていて、解り易い。

それぞれ文化や歴史が違っていても、近代化とともに機械的、合理的な身体観に変化して、

それ以前のものが忘れられて、世代間ギャップ、断絶が生じることが解り易く解説されている。

漢字文化圏では稽古も型から入り、静的なとらえ方をするが、欧米の影響の強い地域では、

稽古の各段階を、重視せずに、流れの中の一部分として捉えているというのが

興味深かった。

 

 


「下種の愛」監督:内田英治 出演:渋川清彦 岡野真也 その2

2019-07-22 01:03:43 | 日記

劇中で気になった点だが、演技を指導する監督が、はっきりしない理由で、

俳優の演技にダメ出しをして、否定し、違うやり方を要求するというのは、

演技指導者による、自己の欲望によるコントロールや相手の支配、

洗脳、パワハラに繋がりそうである。

映画監督が主演女優と私生活で交際したり、結婚したりという事が結構見られるのは、

そのようなことの結果であることも多いのではないだろうか。

これからは、映画や演劇、芸術などの分野でも、説明責任やモラルが

問われる必要がありそうである。


タンク・ソルジャー 重戦車KV-1 監督 コンスタンティン・マクシモフ 2019年公開

2019-07-21 23:33:12 | 日記

泥臭いロシアの戦争映画だが、パーツが足りないところは、

戦場で撃破されたり故障したりしたもののパーツを回収して、

故障したものの修理に使っていたというのが、実際ありそうなところであった。

味方もどんどんと戦死していくところがいかにもロシア映画と言う感じである。

戦う相手はドイツ軍のⅣ号戦車ばかりだが、長砲身48口径75ミリ砲装備で、

シュルツェンを装備しているという事が、時代考証が甘かった。

解説にはタイガー戦車が出てくるとあるが、実際は4号戦車のみである。

実際に1942年頃に配備されていたドイツ軍戦車は50ミリ砲装備の3号戦車や、

短砲身75ミリ砲装備の4号戦車がほとんどだったので、重装甲のKV-1を撃破するのは、

かなり困難だっただろう。

1942年のスターリングラードで撮影されたこの画像を見ると、いかにKV-1の装甲が

貫通しにくいものだったのかがよく解る。

KV-1 wikipedia より

 

画像の女性は整備士です。