何かと話題になり売れた本書ですが、敵国の兵士の扱い方にいちいち疑問を持つというのは、
ソ連国内で自国民であっても「反革命的」とされた人物は、拷問し無理やり調書に署名させ、
万単位で処刑していた時代に不自然とは、著者は考えなかったのでしょうか。
自国民でもその様に扱った時代に、自国を侵略し、一般市民も大量に虐殺した敵国の兵士に、
復讐心を持つ人は多くいても、人道的に扱うべきと考える人は、極めて少なかったでしょう。
『騎士道精神』を引き合いに出す人がいそうですが、そのようなものは中世に騎士や傭兵などが
戦争をしていたという時代のもので、第二次大戦とはほとんど関係がないものです。
国民国家が成立し、一般市民を徴兵した国民軍ができたからこそ、その後の大規模な戦争が
可能になったという歴史の流れを考えに入れない人は、そのあたりが曖昧になりそうです。
ジュネーブ条約やハーグ陸戦条約の方が影響を与えていたでしょうが、独ソ両軍とも、
それほど尊重していなかったようです。
後世に書かれた多くの資料を基に書かれた本書ですが、資料を参考にする際に、
何も考えずに使っているようでした。
ベニチオ・デル・トロ主演のクライムサスペンスです。
MVを数多く手掛けてきたグラント・シンガー監督の長編デビュー作とのことです。
【あらすじ】
不動産業者の女性従業員が、案内先の物件内で刺殺されます。周囲を色々と調べても、
あまりはっきりしたことが解りません。
そうこうしているうちに、元夫が死亡し、家の中から大量の麻薬が見つかったこともあり、
彼の犯行だろうということで、捜査は終了することになりかけますが、
刑事のトム(ベニチオ・デル・トロ)は、偶然テレビのニュースで意外なものを目にして、
一人で捜査を続けるのでした。
【感想】
全編にわたり、ほぼ暗い映像で画面が占められますが、たまに映る昼間のシーンなどでは、
きれいな田舎町であることが解ります。
警官をはじめ事件に関係する登場人物たちも、普通の人達のようですが、後半から印象と中身が
違うことが解ってきます。じっくりとストーリーを展開させてゆくので、その変化が印象的でした。
あまり説明しすぎずに展開するところが良かったです。
ベニチオ・デル・トロ&ジャスティン・ティンバーレイク出演『レプタイル -蜥蜴-』予告編 - Netflix
発達障害の人は直ぐに仕事を辞めたりすることがありますが、そのようなことは、
周囲と未分化なことで起きるようです。
周囲との境界が曖昧なので、言われたことを自らの内部で考え吟味してどうするかを決めてから
行動するということが難しいので、言いなりになって行動していて、人に動かされているという
感覚を持つ事が大きな要因だと思います。
人に動かされているという感覚が苦しいのは当然ですが、言いなりになって行動しているので、
物事の優先順位がつけられず、適切に行動できないということも辛いことなのでしょう。
そのような人に周囲ができる事としては、日常の様々なところで境界に関することを
タイミングを見て考えさせることで、周囲との境界を作っていくことなどがあります。
数字などのはっきりしたものを素材にして考えさせると良さそうです。
以前よく取り上げられていた摂食障害の「母子カプセル」などの場合、母親の価値観に合わせ、
そのように行動するのでしょうが、発達障害の人の場合、そのような価値観を取り入れる
相手が居なかったのでしょう。
哲学者のジュリア・クリステヴァさんは、摂食障害の臨床で主体の問題について考察したのでしょうか。
主体の問題は時代と共に変化するので、歴史の知識も参考になりそうです。