マチンガのノート

読書、映画の感想など  

透明性 著 マルク・デュガン 早川書房 感想

2022-01-31 08:35:30 | 日記

フランス人作家がグーグルなどの米国の巨大IT企業への懸念から書いた小説ですが、

機械で作った体に元の人の記憶や性質を移し替えると、元の人が死んでもその人は

ずっと生きていることになるという点が、こちらからすると受け入れられませんでした。

元の人が死んだ時点でその人のコピーがあろうと無かろうと、

その人本人は亡くなるとしか思えません。

そのあたりが欧米人と日本人の人間観の違いなのでしょうか。

結構、日本を含めた各国で読まれているようですが、そう思う人は少ないのだろうかと

思いました。


あおざくら 防衛大学校物語 二階堂ヒカル 小学館 感想 考察

2022-01-29 23:37:56 | 日記

普通の学校で過ごしてきた若者が、幹部自衛官になるための学校に行く話ですが、

軍隊の学校なので、当然規則を守ることや、上級生や教官の言うことには従う事が前提になっています。

その中での様々な出会いや出来事が描かれていきますが、あくまで決められたことを達成することが

基本としてストーリーは進んでいきます。

しかしながら最近の日本は保守化していて、決められたことを守る高校生が増えていることを考えると、

防大でも上からの指示や命令に従うことを当然として過ごしていると、自分たちで考えて決めたり、

話し合って決めることが

身に付きにくくなりそうに思いました。

そのような学生生活を送ると、コミュニケーション能力や自分で決める能力が育ちにくそうに思います。

軍事組織の構成員がそれぞれ勝手に何かを決めて行動するのも問題ですが、

立場を超えて周囲と話し合って決めたりする習慣を身に着けないと、

その後の生活でも柔軟性を欠くので、組織としての柔軟性も育ちにくそうです。

最近の国際情勢や価値観は変化が大きいので、様々な価値観や考えに開かれていくように、

防大のあり方も変えていったほうが良さそうに思いました。


信田さよ子さんの臨床について

2022-01-25 18:21:08 | 日記

世の中にはかなりの数で、夫や親に暴力を振るわれたり、大怪我を負わされたりしても

その家から脱出したり逃げ出したりということを考えつかない妻や子がいるようです。

そのような事例に対応する相談機関や心理士は、様々なシェルターや支援施設、

公的制度の実態を知っていて、来談者が希望していなくても、

使うとしたらどれを使おうかなども考えて対応するのでしょう。

そう考えると、どのような支援制度を知っているかというのは、

心理士などがどの学派を学んだかよりも、来談者への影響が大きそうです。

日本に臨床心理学を定着させた河合隼雄氏たちですが、そちらの方の著書を読んでも、

時代的なこともあり、暴力の影響などについて書かれたものは少ないようです。

そのためその後の京大などの臨床心理の方達も、そちらの方には詳しくないのかもしれません。

大学の相談室に来談するという人たちは、その時点でそれなりに恵まれた人が多いので、

暴力が関わる事例が少ないのかもしれません。

そのため来談者が何らかの暴力の影響を受けていても、それが見えないことが

多いということもありそうです。

そのように考えると、信田さよ子さんたちの臨床は、大学の相談室などで臨床をする人たちに

これまで見えていなかった視点を提示しそうです。

 

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アダルト・チルドレン 自己責任の罠を抜けだし、私の人生を取り戻す(ヒューマンフィールドワークス) | 学芸を未来に伝える出版社|学芸みらい社

「日本のアダルト・チルドレン(AC)論を牽引する第一人者による「AC完全理解」の決定版!「私は親から被害を受けた」。そう認めることが回復の第...

学芸を未来に伝える出版社|学芸みらい社

 

 


ミュンヘン: 戦火燃ゆる前に 監督 クリスティアン・シュヴォホー 出演 ジョージ・マッケイ、ヤニス・ニーヴーナー、ジェレミー・アイアンズ 感想

2022-01-24 20:21:37 | 日記

1938年のナチス・ドイツによるチェコスロバキアのズデーテン地方割譲についての映画ですが、

様々な映画などで戦争を避けるために登場人物達が何かをするというものはよくありますが、

これは逆の映画です。

【あらすじ】

チェコスロバキアの領土を得ようとするヒトラーに率いられたナチス・ドイツですが、

それに対応するイギリスのネヴィル・チェンバレン首相(ジェレミー・アイアンズ)は、

国内の反戦の意見に押されていることもあり、フランスとともに介入しそうにありません。

しかしながらナチス・ドイツを危険視するイギリス外務官僚ヒュー・レガト(ジョージ・マッケイ)と

ドイツの外交官ポール・フォン・ハートマン(ヤニス・ニーヴーナー)は、

それぞれチェンバレン首相たちを翻意させようとするのでした。

 

【感想】

歴史ものなのでその後どうなったのかは解っていても、手に汗握る映画になっていました。

同じ大学に居たイギリス人とドイツ人が、その後に双方の国の官僚となり、

それぞれチェンバレン首相の判断を変えようとするところは、とても見ごたえのある

展開でした。

イギリスは戦争をしないことで、軍備を増強することができましたが、

その分ドイツも強大化し、その後の大きな戦争に繋がったとのことで、

歴史家からは当時のチェンバレンの判断は間違っていたとされているとのことです。

「正義の戦争」という概念自体が受け入れられていない日本から見ると、

独特の映画だと思いました。

OGPイメージ

ネヴィル・チェンバレン - Wikipedia

 

 

 

 

チェコという地域事態が、歴史的にややこしいところのようです。

 

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ナチス・ドイツによるチェコスロバキア解体 - Wikipedia

 

 

 

『ミュンヘン: 戦火燃ゆる前に』予告編 - Netflix

 

 

 


カウンセラーは何を見ているか (シリーズケアをひらく) 信田さよ子 医学書院 感想

2022-01-22 22:09:06 | 日記

身の安全を第一に

表紙が漫画なのでこれまで読んでいませんでしたが、暴力や金銭の問題が関係することの多い依存症に

長年関わってきた著者のものらしく、中身はしっかりしたものでした。

河合隼雄氏等のもののように、深い知識でクライアント個人に関わろうとするものとは違い、

実際の関わりで必要性から身につけたらしいことを書いておられました。

 

「生け簀で自由に泳がせて生け簀ごと望ましい方向に移動させる」というのは、様々な生活上の困難や、

配偶者などの暴力から、クライアントを何とか逃れさせるには必要なスタンスでしょう。

一部の「カウンセラー」の人たちは、周囲の人たちがカウンセラーとして機能すればいいので、

心の専門家は要らないと主張していますが、暴力やお金のことが関わると

大抵の人は関わることを止めますので、いかに生活や治療の両面に関わる専門家が

必要なのかが解ります。

 

一般的な心理臨床よりも、身の危険にさらされることの多い依存症やDVに長年関わってきた

著者だから書けるものでしょう。