マチンガのノート

読書、映画の感想など  

「暴力」 スラヴォイ・ジジェク

2015-03-23 06:52:13 | 日記
本書によると、イスラム教徒との問題は「寛容さ」の問題として
語られる事が多いが、実際は社会経済的な問題だとのこと。
西ヨーロッパは社会保障がそれなりに在り、教育に対する社会的支出も大きいが
それでも日常的な差別に加え、社会経済的な差別、排除が大きいのだろうか?
ヨーロッパは階級社会で、中産階級と労働者階級が分かれているというが、
アラブ系住民が、労働者階級から中産階級に移れないような人種、宗教による差別が、
大きな不満をもたらしているのだろうか?
しかしながら、アラブ系住民に対する、社会的支出を増やそうとすると
極右勢力による差別と暴力が増えるのではないだろうか?
これからISILからヨーロッパに戻る戦闘員によるテロの増加が懸念されているなか、
それらの事を考えると、ヨーロッパはこれから植民地支配のツケを
払わされる時代になるのかもしれない。

「サボタージュ」 監督 デビッド・エアー 主演 アーノルド・シュワルツェネッガー

2015-03-18 01:04:07 | 日記
シュワルツェネッガー主演のアクション・サスペンスとして
作られているが、背景はメキシコの麻薬戦争や、DEA捜査官たちの
過酷な捜査任務から来る多大なストレス、およびそこに起因する薬物依存。
けっこう、グロ描写も多いが、メキシコなどは麻薬戦争で
凄惨な状況になっているようだ。
もちろん原因は、巨大な麻薬消費地のアメリカに接していること。
メジャー俳優を使って、間接的にそれを提示したのは良いアイデアだと
思う。

体感治安の悪化について

2015-03-15 23:54:50 | 日記
以前と比べて、成人の犯罪、少年の犯罪もかなり減っているのにもかかわらず、
体感治安は悪くなっているとの事だが、
精神科医の中井久夫氏は、「冷戦期は核爆弾がぶら下がっていた」
という事を何かで書いていた。
自国ではどう仕様も無い、米ソの核ミサイルがにらみ合っている間は
ある種の諦観が在ったのが、それが無くなったので
犯罪や不正に反応するようになった部分も大きいのではないだろうか?
曽野綾子の書くような、「世の中そんなものだから文句を言うな」的な
意見に対して反発が大きくなったのは、健全な変化だろう。

「時間と出来事」 渡辺由文

2015-03-01 23:03:27 | 日記
この著作では、時間、空間がまず在る事より先に
なぜ時間という概念が、人間社会に広まったのかということから
検討される。
時間という概念を共有することで、どこかで誰かに会う約束をする、
共同で何かをする、という事が成立する。
人と関わりたいからこそ時間概念が広まって、共同で何かをしたり
何かを作ったりできる様になったとの事だ。
時間概念が、現在の様に時間単位、分単位で内面化されたのは
産業革命の頃からで、それによって共同で機械を動かし、
物を効率的に生産できるようになったとの事だ。
この本の様に、「人と関わりたい」ということが時間概念の成立の元という
事を書いてある本は初めて読んだ。
欧米では、神と人間があり、最初に言葉があるという見方をするようなので、
時間概念の成り立ちに、人間の欲求を観る事は少ないのではないだろうか?
欧米では犬やサルに心があるのかどうか議論になるそうだが、日本では
犬やサルに心があることは自明視されている。
その違いも、まず言葉ありきの伝統から来ているのではないだろうか?
以前、教育テレビの「サイエンスゼロ」で、物理か何かの研究者が
どこかで人間と違う生き物が文明を作っていたら、どの様な物の見方をしているかに
興味があるという事を言っていたのを思い出した。