マチンガのノート

読書、映画の感想など  

トラウマの影響に関する興味深い考察 3

2021-09-28 00:34:53 | 日記

この「まっちゃん」が、バスの運転手に「殺すぞボケ」と言われたことを断片的に取り入れ、

その後に何かフラストレーションがたまると周囲にそう言っていたことは、

うちの父親が何かとこちらに、状況や脈絡を無視して、ああしろこうしろと大声で言って来たことと

同じようなものなのだろう。

父方の祖父は自分の子どもに安い酒を買わせに行かせていたそうだが、

父親も子供の頃から言われるがままにそうしていたのだろう。

そして防衛大学では教官の言うことには服従しなければならなかったので、

自ら考えて話し合って、決めたりするということが身につかなかったのだろう。

援助交際の女子高生なら、自分の体はどうしようと自分の勝手、と言うところまで

身体に基づいた自分というものを持てていたのだろうが、うちの父親の場合は24時間管理の規則と、

身体的にきつい訓練などもあり、自分の体は自分のものと言う感覚さえ持てなかったのだろう。

戦争になったらある程度の死者が出ることは必然的なので、

教官が学生の体調や感情を気にかけたりする文化が防衛大学にはなかったことで、

うちの父親は自分というものを形成できなかったのだろう。

最近は大学生でも主体が希薄だったり無かったりする発達障害の学生が

ある程度いるとのことだが、防衛大学には向いていないのだろう。

もし入学できても、状況に応じて自ら考えて決める主体が生成されにくい生活なので、

幹部候補生学校あたりで脱落することが多いのだろう。

あおざくら:防衛大学校物語 二階堂ヒカル

夢の分析 生成する〈私〉の根源 (講談社選書メチエ)


トラウマの影響に関する興味深い考察 2

2021-09-24 17:00:14 | 日記

ここで取り上げられている「まっちゃん」は、知的な障害があったことで、

自ら考えて判断し、行動する主体となれなかったところが大きいのでしょう。

そのためにバスの運転手の方に何かで怒られて、「殺すぞボケ」などと言われたことが

あいまいな主体に恐怖とともに刻み込まれたので、自分が何かフラストレーションを抱えたときに

それを自分で繰り返していたのでしょう。

主体が未生成なほうが様々な自他境界や時間や場所などの境界が曖昧なため、

何か他人から攻撃されたりして恐怖を感じた体験を、自分から切り離しにくいのでしょう。

自分が介助している相手やカウンセリングしている相手、治療しようと関わっている相手が、

こちらに攻撃性を向けることがある場合は、そのような相手の以前のトラウマ体験を

想定したほうが良いようです。

医師や心理士が相手から向けられた攻撃性で傷ついたり苦労したことを書いていることは少ないです。

山中康裕氏の自閉症児とのプレイセラピーや、織田尚生氏の境界例患者の治療に関してのことで

少し取り上げられていた位のようです。

それだけ治療者にとっては、それを認識して対応すること自体が難しいことなのでしょう。

しかしながら自他境界の生成に関しては大事なポイントのようです。


トラウマの影響に関する興味深い考察

2021-09-23 17:30:33 | 日記

竹端寛さんのブログ

「まっちゃん」という知的障害のある人に関しての考察ですが、子どもや発達に偏りがある人にも

当てはまる事なのでしょう。

渡辺あさよさんの言う「言葉とイメージの解離」や、京大の臨床心理の方たちの言う

「主体の無さ」などとの関係が大きそうです。

臨床心理の教員である東畑開人さんも、最近ツイッターで、

「信田さよ子さんを知っていたが知らなかった」と書いていたように、

トラウマの影響は教わっていても、見えにくいことなのでしょう。

AA(アルコール・アノニマス)や断酒会に関わってきた人なら詳しそうです。


バック・ノール 監督 セドリック・ヒメネス 出演 ジル・ルルーシュ カリム・ルクルー フランソワ・シヴィル

2021-09-19 18:42:59 | 日記

2012年にフランスで起きた事件が基になっている映画とのことです。

【あらすじ】

マルセイユの北地区を担当する国家警察犯罪対策部隊(BAC)でチームを組むグレッグとヤス、

そしてアントワンの3人は、麻薬の売人やこそ泥などを摘発していますが、

ある時、犯人を追跡していった先の団地で麻薬を扱うギャングたちが大勢で押しかけて来たので、

仕方なく撤退することになります。

そこは警察でも入れない無法地帯でギャングが支配しているため、上司からは麻薬などの

危険な事よりも、もっと安全で楽な相手を取締り、ノルマを果たすように言われます。

ある日、アントワンは情報提供者から麻薬組織のアジトを教える代わりに、5キロの麻薬を提供するように

要求されます。上司に押収した証拠品から5キロの麻薬を提供するように提案しますが、

聞き入れられないので、自分たちで集めることにするのでした。

【感想】

アメリカ映画などですと、犯人が向かってきたり武装していたりすると直ぐに警官は発砲しますが、

こちらではギャングたちと警官で銃を向けあっていても、お互いに罵りはしますが発砲しません。

警察が移民や難民を射殺すると、何かとバッシングされるのでしょうか。

以前フランスで起きていた黄色いベスト運動から解るように、社会が上と下に分かれると、

現場で実務を担う人たちが負担を負わされそうです。

代々豊かな政治家や財界人、知識人と庶民の暮らしが別のものになると、実態に合わないことが

どんどん政治家や官僚などから庶民に押し付けられるのかもしれません。

日本のように9割が『自分は中流』と思っている国も、意外とそうなりやすいのかもしれません。

The Stronghold / BAC Nord (2021) - Trailer (English subs)


山中康裕の臨床作法 日本評論社 一部紹介 マジックサークル 身体的枠付

2021-09-19 00:37:40 | 日記

臨床心理学の作法 中川美保子(P104)より

自閉の傾向が顕著な幼児との面接において、保護者が少し目を離した隙に居なくなったので、

院生たちで探して、大声を発し続けて落ち着かないその幼児をなんとか面接室に連れていったときに、

山中先生はその幼児の背後から、相手に触れず、背後に立ちお腹の周りに手を回すと

その幼児の体が緩み、表情も柔らかくなり、その後その幼児は山中先生と遊び始めたとのこと。

院生が尋ねると山中先生は『みんなは、よく、羽交い締めした、と誤解されるんですが、

あれは私の術語で言えば、「マジックサークル」を作って、「彼を魔法の輪で囲った」のです。

いかにも自由を奪っているかの様に見えますが、私の腕と彼の体の間には、隙間があり、

触れていません。つまり、彼は、「枠」がないので、勝手に動き回っているように見えるのですが、

「枠」を作ってやると、安心して、彼の思うことができるようになるのです。

「窓」論というより、「枠」論ですね。』と答えたとのこと。

風景構成法でも枠を描くことにより、描画の際にクライアントに不安を喚起させることを少なく

できるらしいが、臨床の場でそれを身体的に応用できるところが山中先生の

凄いところだろう。

治療者などによる身体的な枠付というのは、周囲の認識が未発達な子供の臨床に

応用できそうなことだと思った。

山中康裕の臨床作法 日本評論社