「中動態の世界 意志と責任の考古学」〈医学書院〉などを書いた國分功一郎氏と
当事者研究を実践している熊谷晋一郎氏のトークイベントをまとめたもので、
言語としては能動態と受動態の以前にあった中動態に関する知見と、
当事者研究の知見を元にした両氏の対話をまとめた一冊です。
能動/受動が支配的となった現代社会で、中動態と当事者研究について論じることで、
これまで見えていなかった、意思と責任などに関する様々なことが見えてくる内容となっています。
近代において個人の選択、責任とされてきた事を歴史を遡り掘り下げて行く内容なので、
様々なことが深く論じられています。
何かをしたことを周囲が個人の責任に負わせることを止めることは、
本人が逆に自ら責任を引き受けようとする契機になるという点は、
マイクル・バリントの「治療論から見た退行」(金剛出版)で書かれている、
「新規蒔き直し」に近いものなのではないかと思わせるところでした。
様々な依存症を抱える当事者にもオススメの一冊です。