現代人なら普通にあると思っている現代のような個人の「心」というものですが、そのようなものが「発明」されたのは
紀元前5世紀のソクラテスの頃で、それ以前は、ホメロスが叙事詩で取り上げている紀元前13世紀くらいの古代の物語の中で、
いろいろな行動について、登場人物たちが何々の神がそうさせたとしていることから、
ソクラテス以降のような「心」の成立以前の古代の人達は、いろいろな行動についてそう捉えていたのだろうとのことです。
様々な自然現象も様々な神々が原因とされていたことから、「神-心-自然」が混然一体となっている中で
暮らしていたようです。
ホメロスの描いている古代の心のあり方は、その人の中を吹き抜ける風のようなものだったとの事です。
児童精神科医の小林隆児さんは、著書「甘えたくても甘えられない」などの中で、母親が遠ざかると寂しそうにする子供が、
母親が近づくと遠ざかるケースなどを取り上げていますが、その様な子供は寂しいとか母親に対して
何か抵抗を感じるなどを内心ではっきり感じているのではなく、周囲と未分化な感覚と感情の中で動いているのでしょう。
甘えたくても甘えられない :小林 隆児|河出書房新社
甘えたくても甘えられない 母子をひとつのユニットと捉え、その「関係」におけるこころの動きに焦点を当てることで見えてくるものとは? 子が見せる屈折した「甘え」のかた...
河出書房新社
自閉症スペクトラムに関して、何かと「主体のなさ」が論じられていますが、多くの人はデカルト以降の
近代的主体の事を取り上げても、このような「心」が成り立つ以前のことはあまり取り上げていないようです。
療育などで様々な境界設定がされているようですが、その様な境界は本人が自分の中に未分化な感覚や感情を
留めておけないことの代わりとして機能しているのでしょう。
『生成と消滅の精神史 終わらない心を生きる』下西風澄 | 単行本
若き俊英が鮮やかに描き出す、人類と心の3000年。 古代ギリシャから西洋哲学の歴史を紡ぎ直し、認知科学、さらに夏目漱石へと至る。若き独立研究者が切り開く、心と人類の...
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