マチンガのノート

読書、映画の感想など  

話の聴き方からみた軽度発達障害:対話的心理療法の可能性  畑中千紘

2018-10-31 00:55:17 | 日記
70代の発達障害のクライアントのことを取り上げているが、
治療者とこのクライエントが会話すると、「話の表面から違う話にどんどん横滑りしていく」
ことで、話の内容では関われないとのことだが、これを小林隆児氏の研究と対比させると、
子供が寂しそうにしているので関わろうとすると、反射的に距離をとる、
という事と、対応しているのだろう。
畑中氏は、換喩的に移り続ける会話の中で時折出てくる
機知を楽しむスタンスで接していくと、時折、お互いに笑ってしまうことが出てくるとのこと。
このようなことは、ある程度距離を保ちつつ、快の体験を経験することに繋がるのだろう。
このようなことは距離をとりつつ、快の体験を積むことで、
相手に対する前言語的な不安や恐怖を軽減して、他人と関わることへの抵抗を
減らしていくのだろう。
実際このクライアントも、妻との離婚協議が立ち消えになったことや、
孫が「おじいちゃんが急に怒り出すことが減った」と言った事などに
繋がったことから解るように、他人との関われなさを減らし、
話の内容で関わり易い方向に少しずつ向かうのだろう。

友罪 瀬々敬久監督 2018年

2018-10-30 23:49:09 | 日記
神戸の少年事件をモチーフにした映画だが、
劇中「抱え続けるしかない」というセリフが語られていた。
これまでは被害者の人権や遺族の心情などが取り上げられることがメインだったが、
このような映画が作られて、そのようなセリフが語られるのは
少年犯罪が減り続けても猟奇的事件が時折起きることや、
さまざまな犯罪予防策が行われても、ゼロにはならないことも、
理由の一つだろう。
以前は被害者と遺族が無視されていたのは、経済情勢のみならず、
中井久夫氏の言うように「冷戦時代は核爆弾がぶら下がっていた」というような、
日本国内でいくら議論しても変えられないことがあったことが大きかったのだろう。
さらには海外でのテロや紛争のことが、国内でもすぐに知ることが出来ることも
大きいのだろう。