マチンガのノート

読書、映画の感想など  

学力喪失──認知科学による回復への道筋  今井むつみ 岩波新書 感想

2024-10-26 00:19:46 | 日記
 

学力喪失 - 岩波書店

子どもたちが本来の「学ぶ力」を学校で発揮できないのはなぜか。学力の躓きの原因を認知科学の知見から解明し、希望をひらく。

岩波書店

 

いかに日常生活における遊びなどを通じて、様々な知識を記号接地させることが、

生きた知識というものを身につけるうえで必要なのかが解りやすく紹介されていました。

学校で様々な知識を学んでも、それを感覚的に記号接地できないと、単なる断片的な知識を

覚えるだけになり、それが生きた知識にならないことが様々な事例で描かれています。

学力があるように見えても、日常生活でそれを活かせなかったり、応用が効かない子どもは

感覚的なところで様々な知識や考えが、自分につながっていないことが多いのでしょう。

現代社会では、子どもが体を使って遊んだり、親の手伝いをすることが減ったことも、

そうなる一因なのでしょう。

いかに一見非効率に見える失敗などを含む試行錯誤などの探索活動の価値がわかる一冊でした。

 


朽ちないサクラ 監督 原廣利 出演 杉咲花 安田顕 豊原功補 原作 柚木裕子 感想 あらすじ ネタバレ

2024-10-22 22:34:57 | 日記

『孤狼の血』などの柚木裕子さん原作の警察物の映画化です。

可愛いらしい杉咲花さんが主演なので、どのような映画なのかと思い観てみましたが、シリアスな展開でした。

杉咲花さんはテレビで流れていた回鍋肉のCMに出ていた人です。

本作では警察の事務職員役で、その上司が安田顕さんです。

【あらすじ】

愛知県のある町でストーカー被害を受けていた女子大学生が殺されますが、警察が被害届を受理しなかったことと、

その理由が慰安旅行だったことからそこの警察署には非難の電話が殺到します。

警察官ではない事務職員の守口泉(杉咲花)は、新聞記者で友人の津村千佳(森田想)とお酒を飲んでいた際に、

偶然、慰安旅行のことを話してしまい、記事にしないように約束させますが、報道された事から、相手を疑います。

疑われた記者は疑いを晴らすため、取材を進めますが、1週間後に死体で発見されます。

そのため守口泉は、みずから事件を調べ始めるのでした。

【感想】

本作では最初こそ主人公の杉咲花さん中心に話は進みますが、後半になるにつれ上司を演じる

安田顕さんが話の要になってきて、何を護り何を切り捨てるのかについて、考えさせる展開になります。

警察などはキャリアが長くなるにつれて、普通の人は知らなかったり考えつかないようなことも

知ったり経験してゆくでしょうから、様々な困難な決断を迫られそうです。

人を駒と考え行動する機会も様々な場面で必要とされるのでしょう。

昔の左翼の活動が盛んだったころなら、そちらを見張ることが公安の活動の中心だったでしょうが、

今はどのようなところに力を入れて活動しているのでしょうか。

安田顕さんの演技も良かったですが、最後の方の杉咲花さんの演技も気迫があり良かったです。

映画「朽ちないサクラ」本予告

 

 

 


増補版 精神科臨床とは何か: 「私」のゆくえ 内海 健 春秋社 2024年

2024-10-15 23:15:01 | 日記

2005年に出版された『精神科臨床とは何か』(星和書店)の増補版ということですが、最近何かと取り上げられている

主体の問題に関して、かなりいろいろと取り上げている一冊です。

何かと解りにくいラカンのことも、解りやすく取り上げていました。

ラカンは難解で苦手、という人に向いているかもしれません。

 

増補版 精神科臨床とは何か - 春秋社 ―考える愉しさを、いつまでも

 

対峙 (2021) 監督 フラン・クランツ 出演 リード・バーニー アン・ダウド 感想 ネタバレ

2024-10-06 16:08:44 | 日記

【あらすじ】

田舎にある教会の一室で、学校での銃乱射事件の遺族である一組の夫婦と、加害者の親である夫婦が

会って話し合います。

遺族の方の夫婦は、何故事件が起きるまで何もしなかったのかを相手に問うのでした。

【感想】

評価の高い本作ですが、シリアスな作りにより、いかに現代の親というものが、

大きな義務と責任を負うことになっているのかが解ってくる内容になっています。

近代以前であれば、適当に子どもを作り、親でなくても誰かが育てたりしていたのでしょう。

事件を起こした子供の親を非難する人は多いでしょうが、これからはちゃんと子どもを育てる事が出来なかったり、

する気自体がない、という親は増えてきそうです。

そのことを考えると、あらかじめ子どもを育てない親がいることを想定して、様々な制度を

作っていくことが必要なのでしょう。

映画『対峙』日本版予告編