結構多くの臨床家が家族の影響というものが見えていなかったようです。
テッド・チャンの小説「あなたの人生の物語」を映画化したものです。
[あらすじ]
ある日、世界各地に12機の異星人の宇宙船が出現し、それとコミュニケーションを
取るため言語学者のルイーズ(エイミー・アダムス)たちは米軍に招聘されます。
ルイーズたちが宇宙船の中に入ると、異星人たちは独特の文字を示すのでした。
その事と並行してルイーズが娘のハンナと過ごした日々が回想されてゆきます。
[感想]
こちらにとってSF映画としての要素以上に大きかったのは、ルイーズの決断でした。
ルイーズは、自分が娘のハンナを産んで、その後にハンナが病気になり、大人になる前に
亡くなることを知っていても、ハンナを産みます。
子供が産まれ、子供時代に病気になり、大人になる前に亡くなるということは、
本人や周囲の人の様々な欲望を叶えたり、利益に結びつくことはありませんが、
それでもルイーズがハンナを産むことにするという展開は、現代の支配的な価値観に対する
疑問の投げかけ、反論なのだと思いました。
この映画に関しては、様々なSF映画としての論評や、科学的な解説がありますが、
こちらにとってはその点が、一番大きな映画でした。
存在価値というものを考えさせる映画でした。
映画 『メッセージ』 予告編
いろいろな多くの資料を上手くまとめて小説にしていますが、
捕虜や民間人が虐待されたりするごとに、その都度色々と考えたりするというところは、
現代ロシアでもプーチンが支持されていて、全体主義的なところの多い
国家が続いている事と相容れない描写でした。
主人公の少女自身、ソ連の農村で生まれ育ったので、物質的にとても貧しいという
背景があるはずですが、それも感じさせない内容でした。
さらにソ連兵なのに「飯を食らう」という表現などは、感覚的なところで著者が
違う時代や状況への想像力をあまり持てていない感じを与えました。
全体的に安全で物に溢れた現代の日本の感覚から出ないで書かれた感じのする
一冊でした。
雑目のアクション映画かと思い観ましたが、ダーク・コメディ映画でした。
人間の愚かさや醜さ、弱さを上手く映画化しています。
[あらすじ]
軍人のマーカス(マッツ・ミケルセン)は、アフガン派遣中に妻と娘が列車事故に
遭った事を知らされて帰国しますが、同じ車両に乗っていた数学者のオットー
(ニコライ・リー・カース)から、その事故は同じ車両に乗っていたギャングの裁判の証人を
抹殺するための陰謀ではないかと告げられ、オットーの友人のハッカーや、
画像解析の専門家と真相を探るのでした。
[感想]
何かとデコボコグループが行き当たりばったりで行動する展開で、そこからすでに
何かと不快感を感じさせる描写です。
グループはみな色々と醜く不快なところがある面々なのですが、
そこにはそれぞれ笑えない理由があるのでした。
そのあたりのことに関しては、あまり明示的に描かれていないところもあるので、
見る人が社会に関する知識を持っていないと解らないのかもしれません。
西ヨーロッパは近代になってからの歴史が米国より長いので、このような人間の愚かで弱い部分を
考えて、様々な社会制度を作っているのだろうかと考えさせる内容でした。
その事が死刑制度の廃止や、様々なドラッグの非犯罪化につながっている部分は大きそうです。
デンマーク映画と言えば「ヒトラーの忘れもの」(’16)がありますが、
何か通じるものを感じさせる内容でした。
映画批評サイト「Rotten Tomatoes」で批評家から高い評価を受けたことを
納得できる内容の映画です。
『ライダーズ・オブ・ジャスティス』予告編
映画『ヒトラーの忘れもの』予告編