マチンガのノート

読書、映画の感想など  

荒野にて/監督 アンドリュー・ヘイ 2018年英 チャーリー・ブラマー スティーブ・ブシェミ

2020-01-26 22:24:19 | 日記

リッチモンド・フォンテーンというバンドにいたウィリー・ブローティンさんの2010年の小説が原作の映画です。

イギリス人のアンドリュー・ヘイ監督が原作を読んで映画化したとの事です。

小さいころに母親が家を出て行き、父親と二人で各地を転々として暮らす15歳のチャーリーですが、

車のタイヤを交換しようとしていた馬の調教師(スティーブ・ブシェミ)に偶然声を掛けられ、

タイヤの交換を手伝ったことがきっかけで競走馬の世界に関わります。

そして父親が怪我で入院をしたことで、そちらで過ごすようになりますが、

馬のピートが処分されそうになったことから、ピートを連れて出ていきます。

そしてピートを連れてアメリカの荒野を伯母さんの住むワイオミング州に向かう話です。

チャーリーは年齢的に、社会的養護の対象になりますが、保護施設につなごうとする

医師や警官から逃れて、馬のピートと荒野を進みます。

途中でトレーラーハウスに住む男性に水をもらったりしますが、その男性が親族と話す内容は

凄惨なものなので、帰還兵だったことが解ってきます。

チャーリーが荒野を抜けて街についても、テントや車で暮らしている人が多く、

その中で暮らすようになります。

そして偶然炊き出しで出会ったキャンピングカーで暮らすカップルに泊めてもらい、

メキシコ人達と働いて報酬のお金を得ますが、泥酔したカップルの男性の方に奪われたので、

近くの車からレンチを取りそれで相手を殴りつけて奪い返します。

レンチで殴るので、相手が死んでもおかしくない状況です。

チャーリーは馬のピートが処分されることを受け入れられないような優しさがありますが、

ちょっとしたことで自分が他人を死なせかねない暴力行為をすることになります。

映画の中で、社会保障に頼るのを良しとしない米国の価値観が、チャーリーをとても縛っていますが、

それなりに社会保障の厚い英国出身のアンドリュー・ヘイ監督から見ると、

米国自体が荒野と感じられるのかもしれません。

先進国はどこも、需要の弱さからデフレ傾向のようですが、何のための供給力なのかと

考えさせられました。

 

 


犬 (文芸書)/赤松利市 主人公の痛みが伝わってきました。

2020-01-25 01:58:20 | 日記

飲み屋の店主のトランスジェンダーの男性が主人公の小説ですが、以前の彼氏が現れて、老後資金に貯めた

1千万円を自分のFXに投資させようとするのを、店員の若いトランスジェンダーの方が、

それを阻止しようとしてそのお金を持ち行方をくらましたのを追う展開でした。

店員の方がSNSで自分を追わせたのを、追っていくうちに元カレが本性を現し、

主人公も店員も激しい暴力にさらされます。

海外ミステリーや映画で暴力シーンがあっても、それ程こちらに痛さは伝わりませんが、

こちらは読んでいて痛さが伝わる描写でした。

それにしても赤松利市さんは、被災地での除染作業のことを題材にしたり、漁師を題材にしたり、

ニューハーフを題材にしたりと、これまでどういう人生を送ってきたのだろうかと考えさせられました。

 


里奈の物語/鈴木大介著のレビューに関する感想

2020-01-22 01:39:41 | 日記

小説の「里奈の物語」の中で鈴木大介氏が書いていることは、これまでの一連の

鈴木氏のノンフィクションの中で書かれていたことが多く、それらと比べると主人公の里奈の境遇は

早いうちに児童養護施設に収容されるなどかなり恵まれていて、さらに頭の回転が良く、

知的にも恵まれているほうで、主体的に行動ができて、周囲の人にも恵まれてるが、

同書のレビューを見てみると、里奈や周囲の人たちの境遇にショックを受けたり、

気の毒に思っている人が多いようである。

いかに同じようなテーマに関するノンフィクションに関心がなく、読んだことのない人が

多かったのかが良く解る。

そのことを考えると、今回、同じような事柄について小説で表現したことで、

これまで同じテーマのノンフィクションを読まなかった人たちが読んでいるのかが良く解った。

小説で表現したことで、恵まれない少年少女の事について知る人がかなり増えたようである。

そのことを考えると、今回、小説として書いたことは大きな価値があったようである。

里奈の物語/鈴木大介 アマゾン

里奈の物語/鈴木大介 読書メーター


いろいろな心理の臨床家と技法について 4

2020-01-20 20:51:33 | 日記

京大の臨床心理の人たちの言っている、近代以降の主体の生成に関する事柄も、

主だったことは中学や高校の世界史で習う範囲に入っていたり、たいていの人が

何となく知っている事柄ですが、ほとんどの人は、

それが近現代の個人の生成や様々な事柄に関わっている事とは認識しないのでしょう。

19世紀以降に推理小説や精神分析などが出てきたことや、個人が自分の家や部屋を持ち個別に暮らす

割合が増えたことは多くの人が知っていても、それがいかに近現代の個人の成立に関わってきたのかを

認識する機会を持たない人が多くを占めているのでしょう。

夢の分析/川嵜克哲 講談社選書メチエ

 

 


いろいろな心理の臨床家と技法について 3

2020-01-20 20:24:36 | 日記

大分前に、新しい心理学のアプローチという感じで注目されていた技法と

それを海外で学んできた人がいましたが、その人は個人開業で、一回一万円くらいの料金だったので、

クライアントはそれなりにリッチで余裕もあり、そういうものを知るだけの知識量や人間関係もある人が

主であったことから、その関係者はそれなりに豊かで余裕のある人にしか関わることが無かったのでしょう。

そのため、成育歴や社会環境がどのようにクライアントに影響するのかをあまり知ることが

無かったので、本人の夢や身体感覚などにアプローチしても、クライアントが親やその前の世代や、

社会的な事柄から、いかに影響を受けて来たかなどが解らなかったのでしょう。

最近になって、臨床心理の大学院を出た人が、非正規雇用で雇われる割合が増えたため、

養護施設や矯正施設などに関わることが増えて、様々なクライアントが

家族や社会からいかに影響を受けているかを知る人が増えたのかもしれないです。