父と同室のセキグチさんの娘さんがお世話しに来た。
しばらくして、「この部屋は静かですねえ」って。
えっ??
脳疾患の患者さんの部屋だから、皆さん、言葉が出てこない。
それが悲しくて切ないのに・・・
娘さんは話す。
お舅さんが認知症になり入院した。入院したはいいけれど、昼夜逆転生活で夜中に病院内を徘徊し、大声を出し、ときには暴れて大変だったそう。
看護師さんも根をあげて、ご家族が夜は看護することになって。
ご夫婦だけでは限界にきて倒れてしまいそうだから、兄弟や都会にいる息子さんまで呼び寄せて皆でお舅さんの世話にあたったって。
今は、ようやく施設に入ってひと息ついているところだそう。
それに比べたら「皆さん、静かでいいわ」と言う。
私はちょっと衝撃受けた。そういう見方もあるのか。
そういえば、家で寝たっきりのお姑さんのお世話をしている知人が話していたことを思いだす。
「家で看るのは大変でしょ」と言ったら、
「こう言ってはなんだけど、今のほうがずっと楽。時間がきたらおむつを替えて、
経管栄養の食事をあげればいいんだから」と。
おとなしくなるそれまでが、それはそれはの出来事ばかりだったと。
身体はきかなくても頭がしかしかしているから、罵詈雑言、言いたい放題でどれだけぐさぐさ傷ついたことか、息子であるご主人が本気で怒ってしょっちゅう喧嘩していたと話す。
このときも、「私なんてまだまだな」と痛感した。
ほんとうに、介護は10人いれば10通りの苦労や悩みや怒りがある。似ていても皆同じということはない。
それでも、介護生活をしているという一点でお互いの日々を思いやることができ、それはそれでとても貴重な経験をさせてもらっていることを実感する。
「静かなほうがまだいい」・・・か。