まい、ガーデン

しなしなと日々の暮らしを楽しんで・・・

ざらっとする  3冊 『何者』『コンビニ人間』『冷血』

2017-10-15 09:43:07 | 

発行された順に並べると

2012年 『何者』 朝井リョウ
2013年 『冷血』 高村薫 
2016年 『コンビニ人間』 村田沙耶香 

となるが、私が9月下旬から十月上旬にかけて読んだ順は、
「何者」から始まって佐渡で「コンビニ人間」そして最後に「冷血」となる。
今までなら手に取らないような小説ばかりが目に入って3冊読破。

3冊をひとくくりにするなんて乱暴で失礼な話とは思うけれど。それを承知の上で。
どんなストーリーだったか、そもそもこれといった変化にとんだ物語はあっただろうか。
うっすらとしか思い出さないけれど、偶然3冊とも、
読後にどこか身体にざらっとする感覚が残るという気味の悪さはいつまでもそのままで残っている。

20代の朝井リョウさんが20代の若者たちの生態を就職活動を通して描き、
大学生が仲間とともに就職活動に励んでいく中、自分とは何者?と突きつけるそんな小説かな
と読み進めていくうちにちょっと退屈になって来たと思ったのが、最終でまさかの展開。

Twitterでのやり取りや空気を読みあって表面はいかにもなかよしこよしの関係を気づいているけれど、
実は裏のアカウントを取って、そのアカウント名が「何者」。そこで仲間への攻撃、挑戦、本音。
それをまた仲間のひとりがのぞきにいっている、と。なんだか気持ちが悪い、胸が悪くなる。
彼ら彼女に理解も共感もできなく、ああそういうものなのかと。
でもやはり何となくの生きづらさは伝わってきて切ない。

30代の村田沙耶香さんが、コンビニで働くことで自己の確立を実感している30代の女性を描いている。

「コンビニ人間」として生まれ変わってから19年間、コンビニでアルバイトとして働き続けてきた主人公・恵子。
完璧なマニュアルの存在するコンビニこそが、 私を世界の正常な「部品」にしてくれる――。
そんな生活に満足していた恵子のもとに、ある日、婚活目的の新入り男性、白羽がやってきて、
そんなコンビニ的生き方は「恥ずかしくないのか」とつきつけられるが……。
「普通」とは何か?現代の実存を軽やかに問う衝撃作。

「普通」とはなにか?と問われても困るがこの小説を読んでいると、世間の普通もおかしいのかもしれないが
やはり「普通」であることが普通よ、と言いたくなってくる。
主人公の恵子の考え方も不気味なら、なんのかんの理屈をこねまわして白羽さんという同居人が潜り込んでくるといっそう不気味さが増してくる。白羽さんという男性は気持ちが悪いくらいにもっと不気味だ。

sns、コンビニを背景にどちらもその時の今を映しだしていて。
それが象徴するのかどうかわからないけれど、生身の人間同士のやり取りが少なくなり、
人が他者に対して不寛容なことをつくづく実感するわけ。

 

2002年クリスマス前夜。東京郊外で発生した「医師一家殺人事件」。
衝動のままATMを破壊し、通りすがりのコンビニを襲い、目についた住宅に侵入、一家殺害という凶行におよんだ犯人たち。彼らはいったいどういう人間か?何のために一家を殺害したのか?ひとつの事件をめぐり、幾層にも重なっていく事実。

犯行までの数日間を被害者の視点、犯人の視点から描く第一章『事件』、容疑者確保までの緊迫の2ヶ月間を捜査側から描く第二章『警察』を収録。

「子どもを二人も殺した私ですが、生きよ、生きよという声が聞こえるのです」
二転三転する供述に翻弄される捜査陣。容疑者は犯行を認め、事件は容易に「解決」へ向かうと思われたが・・・・・・。合田刑事の葛藤を描く圧巻の最終章

携帯で知り合った30代の男同士が大した目的もなく留守と踏んで侵入した家で家人がいたことに
動転して殺人、目が合ったその目が気に喰わないというだけで殺人、次は自分がやらねばというだけで子供二人を殺害。金が目当てでもなく。犯行理由を問われても「わからないっす」の言葉。
こんな犯人たちを理解できようか。「わからないっす」の裏に隠れている心理を探れようか。

「刑事さん、俺は、自分にとって不本意な結果を招いたら後悔はする。でも反省はできねえ。
自分が可哀そうで泣くということもしないのに、人のために泣くなんてできるわけがねえ。
そんなことができるんなら人の頭を叩き潰すなんてことは吐き目からしてねえよ。」

と30代の犯人の男ひとりは告白している。
もう背中がぞわぞわしてくる不気味である。それでいながら、奇妙にどこかでそうかもしれないなと思ったりもして。

全編が取り調べ、供述書、録音などの記録。下巻はほとんどが供述供述書だけ。
供述は供述でしかない。それ以上でもそれ以下でもない。犯行の動機を詮索するのは止め。

「事件のなぞが解かれた先の、答えの出ない堂々巡りの世界を言葉で編んでいくのが私の仕事だと思うんですよ」
と高村さんはインタビューに答えている。

ここ1週間でも父親が妻と5人の子供を包丁で殺害するという事件。
出頭してきたとき震えていたという父親の内なるものはいかがだったのだろうか。
そもそもそんなものはあったのだろうか。
これからも理解不能の痛ましい犯罪が起きるたびに、この小説が浮かびそうだ。

 

 

コメント
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