まい、ガーデン

しなしなと日々の暮らしを楽しんで・・・

手練れなおふたり 浅田次郎『椿山課長の七日間』宮部みゆき『あやかし草紙』

2018-09-09 09:19:15 | 

  浅田次郎さん『椿山課長の七日間』 2002年著

大手デパート勤務働き盛りの46歳で突然死した椿山和昭は、家族に別れを告げるために、美女の肉体を借りて七日間だけ“現世”に舞い戻った!親子の絆、捧げ尽くす無償の愛、人と人との縁など、「死後の世界」を涙と笑いで描いて、朝日新聞夕刊連載中から大反響を呼んだ感動巨編。

んんんーん、胸にジーンとくるものもありほろ苦くもあり 、なんということなくニヤニヤもして。
ユーモアとペーソスに溢れた作品で手練れな作家さんだなと。
つるつるつるつる喉越しよく、あまりに喉越しがよくて引っかかるものがないので、ちょっとつまらなかったりして。
何とも贅沢な話。

そして『一路』でも感じたけれど、主人公よりも周りの人達の方が時に生き生きと描かれているいて。
混乱するやら面白いやら。
主人公の椿山課長よりそれ以外の人物、
例えば一緒に姿を変えて現世へ「逆送」を願い出たヤクザの武田や実の両親を探し出すことを希望していた少年の雄一クン。
椿山の同僚の知子、父親の昭三、息子の陽介クンなどがとても魅力的なのよ。
中でも同僚の知子さんが気に入ったわ、「けっこうつらかったでしょ」なんて声をかけてあげたりしたくなる。

私、椿山課長の容姿が作者の浅田さんをイメージしてしまったことは内緒。

 

 『あやかし草紙 三島屋変調百物語伍之続』宮部みゆき

固く封じ込めたはずのわだかまりが、どこまでも追いかけてくる。一歩を踏みだすために、
人は胸につかえる秘事を吐き出し心の重荷をそっと下ろす。「語ってしまえば、消えますよ」

江戸は神田の筋違御門先にある袋物屋の三島屋で、風変わりな百物語を続けるおちか。
塩断ちが元凶で行き逢い神を呼び込んでしまい、家族が次々と不幸に見舞われる「開けずの間」。
亡者を起こすという“もんも声”を持った女中が、
大名家のもの言わぬ姫の付き人になってその理由を突き止める「だんまり姫」。
屋敷の奥に封じられた面の監視役として雇われた女中の告白「面の家」。
百両という破格で写本を請け負った男の数奇な運命が語られる表題作に、
三島屋の長男・伊一郎が幼い頃に遭遇した椿事「金目の猫」を加えた選りぬき珠玉の全五篇。
人の弱さ苦しさに寄り添い、心の澱を浄め流す極上の物語、シリーズ第一期完結篇!

今回は5つのお話。
中でもどきどきしたのは第4話「あやかし草紙」
これを最後に、聞き手がおちかから三島屋の次男坊富次郎へと変わっていくのよ。
おちかは百両という価格で写本を請け負った貸本屋の若旦那勘一に嫁ぐことに。
自分の寿命を知った勘一のなんとも穏やかな顔に心惹かれておちかの方から「嫁にしてほしい」と。
請け負った者は百両という大金と引き換えに自分の命の終わりを知ることになるというの。
はたして、おちかは勘一から寿命を知らされているのか。
それは3年後なのか10年後なのか。
何とも気になる結末でして。

それにしても宮部さん、よくもこう次から次へと奇怪な話が浮かんでくるものね。
ほんと、百の話を紡ぎ出していくかもしれないわ。
私、百の話が終わるときまで生きているかしら。

インタビューに答える宮部さんの言葉(抜粋)

百物語の聞き手が交替して、次巻からは富次郎とみじろうタームに入ります。
富次郎は三島屋の次男坊で、将来を決めかねているモラトリアム青年。
そんな青年が聞き手になることで、進むべき道を見つけていくという展開になる予定です。
先日シリーズ五冊をあらためてふり返って、あら、意外とバラエティ豊かじゃないと、再発見したんですよ(笑)。
まさか九九話書くことになるとは夢にも思っていませんでしたけど、
なんとか古希を迎えるまでに到達できたらいいなと思っています。
今後もゆるゆると書き継いでいくので、気長にお付き合いください。

そして『三島屋変調百物語』シリーズは表紙絵も挿絵も全部違う画家。
その中で私はこの「伍之続」担当の原田維夫さんの挿絵がいちばん気に入った。
版画なのだけれど、もうぴったり。挿絵を見ているだけで話の怖さが迫ってくるの。
宮部さんも、原田さんの版画を使用させていただくのが長年の夢だったとおっしゃっているしね。 

 本の挿絵は白黒です。

よろしかったらどうぞ。語りは宮部さんご本人です。

『あやかし草紙 三島屋変調百物語伍之続』PV こちら

宮部みゆきが朗読する『あやかし草紙 序』 こちら

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする