徒然なか話

誰も聞いてくれないおやじのしょうもない話

四股(しこ)と反閇(へんばい)

2014-09-24 20:39:23 | 歴史
 大相撲秋場所は11日目を終え、新入幕の21歳、逸ノ城の快進撃が止まらない。ところで、お相撲さんの土俵上での動作の中で最もなじみ深いのはおそらく四股ではないだろうか。片足を高くあげ、強く地を踏む所作のことで、基本的な稽古の一つでもあるが、もともと宗教儀式として始まった相撲の所作の一つで、地を踏み鎮めるという意味をもっている。四股によって大地の邪悪な霊を踏み鎮め、あるいは踏むことで春先の大地を目ざめさせて豊作を祈願する意味をも持つという。ちなみに人気力士遠藤の、人気の要素の一つが高く真っ直ぐに上がる綺麗な四股である。
 この四股と同じ意味を持つのが、能や日本舞踊の「三番叟」の中で行われる独特の足使いの所作「反閇」である。もともと「三番叟」自体が五穀豊穣の祈りをこめた儀式として始まったと言われるが、大正・昭和時代の代表的な民俗学者・折口信夫は「日本芸能史六講」の中で次のように述べている。

 
 天宇受賣命(アメノウズメノミコト)が木槽(ウケ)を突き踏みとゞろかして踊つたりしたといふことは、大地に籠つてゐる魂を呼び醒したといふことになりますが、これはまた惡い魂を抑へつけたことにもなるのです。つまり踏みとゞろかすといふことは、惡い魂を踏み抑へつけて再び出て來られないやうにする、といふことにもなります。それでその抑へつける方は何か、といふと、これは「反閇」であります。これは力足を以て惡いものをば踏み抑へつけるといふ形をする、同時に、惡い霊魂が頭をあげることが出来ないやうに、地下に踏みつけておく形です。このことは日本人のもつてゐる踊といふ藝の中に傳承されてゐますが、このをどりといふ吾々の語は、語自身をみると何の意味もなかつたといふことが訣ります。つまり下から上にぴん/\と跳び上ることをば繰り返すやうな動作のことを言うた語です。

 そんなことを考えながら相撲や能や日本舞踊を見ていると、また違った面白味が湧いてくる。

▼相撲の四股


▼三番叟の反閇