昨夜のNHK-Eテレ「にっぽんの芸能」の中の「古典芸能玉手箱」では、歌舞伎に登場する「悪役」を取り上げていた。「公家荒」「実悪」「色悪」などいくつかの悪役のパターンの中に「悪婆」という女性の悪役があり、代表的なキャラクターとして「於染久松色読販(おそめひさまつうきなのよみうり)」などに登場する「土手のお六」が、この役を演じている坂東玉三郎さんの映像とともに紹介された。「土手のお六」というのは江戸中期、日本堤(吉原土手)で引き手茶屋を営んでいた実在の女性のことで、歌舞伎の中では、この土手で人を殺したり、女だてらに啖呵をきってゆすったりする毒婦だが、滅法人気のある悪役だそうである。ただ「悪婆」といってもけっして婆さんではなく、妖艶な中年女性のことらしく、今日的な表現だと、さしずめ「美魔女」とか「美熟女」というニュアンスのようだ。
ところで、父が書き遺した回想録の中に、一人の町芸者が登場する。父がこの人に出会ったのは小学6年の頃というから、大正10年頃だと思われる。ある日、祖母と一緒に街を歩いていると、齢70前後と思しき老女に呼び止められる。怪訝な表情の祖母に「お人違いかもしれませんが、阿部さんのお嬢さんではありませんか」と。祖母もすぐには思い出せなかったらしいが、実はその老女は祖母がまだ娘時代、大江村の村長をやっていた曾祖父の家の酒宴によく呼んだ町芸者で、皆から「ドテ検」と呼ばれて人気があったという。父はまだ子供だったので、名前の由来などは知らなかったようだ。僕はなんて品のない名前なのだろうと思っていたが、昨晩「土手のお六」の話を聞いて、ひょっとしたら「土手のお六」を連想するような、妖艶できっぷのよい芸者だったので付けられた呼び名だったのかもしれないなと思うようになった。
※右の絵は歌川豊国作「土手のお六」
ところで、父が書き遺した回想録の中に、一人の町芸者が登場する。父がこの人に出会ったのは小学6年の頃というから、大正10年頃だと思われる。ある日、祖母と一緒に街を歩いていると、齢70前後と思しき老女に呼び止められる。怪訝な表情の祖母に「お人違いかもしれませんが、阿部さんのお嬢さんではありませんか」と。祖母もすぐには思い出せなかったらしいが、実はその老女は祖母がまだ娘時代、大江村の村長をやっていた曾祖父の家の酒宴によく呼んだ町芸者で、皆から「ドテ検」と呼ばれて人気があったという。父はまだ子供だったので、名前の由来などは知らなかったようだ。僕はなんて品のない名前なのだろうと思っていたが、昨晩「土手のお六」の話を聞いて、ひょっとしたら「土手のお六」を連想するような、妖艶できっぷのよい芸者だったので付けられた呼び名だったのかもしれないなと思うようになった。
※右の絵は歌川豊国作「土手のお六」