実効性ある防災計画が全くできていないにもかかわらず、再稼働に向けた動きが加速している。
今日は久々の原発避難シミュレーションの批判。
朝日新聞(3月15日)
新潟県の泉田知事はこれまでも様々な角度から防災計画の不備を指摘しているが、この記事では労働者の被ばく線量限度の関係で、バスによる避難が難しいと語っている。
防災業務従事者は50mSvを限度とするが、民間企業の運転手さんらの被ばく線量基準をどうするのか、かねてから検討課題になっていた。
昨年10月9日、原子力防災会議連絡会議コアメンバー会議は下記の事項を確認している。
<民間企業の運転手等の被ばく線量の目安>
民間企業等から車両等と共にその運転手等を提供してもらう際、運転手等の被ばくの線量の目安と、被ばくした場合の責任を明確化してほしいという要望があることから、これを整理すると次のとおり。
民間企業の運転手等は、放射線業務従事者や防災業務関係者とは異なり一般公衆の被ばく線量管理の考え方の適用が適当であることから、道府県及び市町村が民間企業との協力協定を締結する際に前提とする運転手等の被ばく線量の管理の目安は、ICRP勧告における平時(計画被ばく状況)の一般公衆の被ばく線量限度である1ミリシーベルトを基本とする。管理の目安を超えて被ばくすることがないよう、運転手等には、防護服や個人線量計等の装備を自治体から提供し、運転手等の雇用者は、個人線量計による被ばく線量が1ミリシーベルトを超えないよう管理する。
また、放射線及び放射線防護についての知識の取得が重要であることから、原子力規制庁や道府県及び市町村は、研修等の機会を提供する。
1mSvを超えないようにしなければならないということである。
一方、PAZ(5~30キロ圏)の避難指示基準は空間線量が500μSv/hである。バスの中で何割かは被ばくが低減されるとしても、県のシミュレーションでも避難(30キロ圏外に出る)に10時間前後を要するわけだから、1mSvを超える可能性はかなり高いと言わざるをえない。
30キロ圏15万人(石川県内)で9割が自家用車を利用するとしても1万5千人がバスによる避難となる。50人乗りの大型バスで計算しても300台必要となる。
必要なバスの台数を確保すること自体、かなりの時間を要すると思われるが、仮にバスを確保できても運転手に行ってくれとは言えないということである。
民間企業に要請するのはバスの運転だけではない。たとえば大雪のときの除雪作業員や地震による土砂崩れで道路が塞がれたときの土木作業員なども同様である。
まさに避難計画は絵に書いた餅。
「形だけで実際は機能しない計画だ」との泉田知事の指摘は全くその通りである。
<これまでのページ>
志賀原発 避難時間シミュレーションを考える(1)~立地不適は明白~
志賀原発 避難時間シミュレーションを考える(2)~避難率90%の意味~
志賀原発 避難時間シミュレーションを考える(3)~スクリーニングポイントの矛盾~
志賀原発 避難時間シミュレーションを考える(4)~ヨウ素剤配布をめぐる矛盾~
今日は久々の原発避難シミュレーションの批判。
朝日新聞(3月15日)
新潟県の泉田知事はこれまでも様々な角度から防災計画の不備を指摘しているが、この記事では労働者の被ばく線量限度の関係で、バスによる避難が難しいと語っている。
防災業務従事者は50mSvを限度とするが、民間企業の運転手さんらの被ばく線量基準をどうするのか、かねてから検討課題になっていた。
昨年10月9日、原子力防災会議連絡会議コアメンバー会議は下記の事項を確認している。
<民間企業の運転手等の被ばく線量の目安>
民間企業等から車両等と共にその運転手等を提供してもらう際、運転手等の被ばくの線量の目安と、被ばくした場合の責任を明確化してほしいという要望があることから、これを整理すると次のとおり。
民間企業の運転手等は、放射線業務従事者や防災業務関係者とは異なり一般公衆の被ばく線量管理の考え方の適用が適当であることから、道府県及び市町村が民間企業との協力協定を締結する際に前提とする運転手等の被ばく線量の管理の目安は、ICRP勧告における平時(計画被ばく状況)の一般公衆の被ばく線量限度である1ミリシーベルトを基本とする。管理の目安を超えて被ばくすることがないよう、運転手等には、防護服や個人線量計等の装備を自治体から提供し、運転手等の雇用者は、個人線量計による被ばく線量が1ミリシーベルトを超えないよう管理する。
また、放射線及び放射線防護についての知識の取得が重要であることから、原子力規制庁や道府県及び市町村は、研修等の機会を提供する。
1mSvを超えないようにしなければならないということである。
一方、PAZ(5~30キロ圏)の避難指示基準は空間線量が500μSv/hである。バスの中で何割かは被ばくが低減されるとしても、県のシミュレーションでも避難(30キロ圏外に出る)に10時間前後を要するわけだから、1mSvを超える可能性はかなり高いと言わざるをえない。
30キロ圏15万人(石川県内)で9割が自家用車を利用するとしても1万5千人がバスによる避難となる。50人乗りの大型バスで計算しても300台必要となる。
必要なバスの台数を確保すること自体、かなりの時間を要すると思われるが、仮にバスを確保できても運転手に行ってくれとは言えないということである。
民間企業に要請するのはバスの運転だけではない。たとえば大雪のときの除雪作業員や地震による土砂崩れで道路が塞がれたときの土木作業員なども同様である。
まさに避難計画は絵に書いた餅。
「形だけで実際は機能しない計画だ」との泉田知事の指摘は全くその通りである。
<これまでのページ>
志賀原発 避難時間シミュレーションを考える(1)~立地不適は明白~
志賀原発 避難時間シミュレーションを考える(2)~避難率90%の意味~
志賀原発 避難時間シミュレーションを考える(3)~スクリーニングポイントの矛盾~
志賀原発 避難時間シミュレーションを考える(4)~ヨウ素剤配布をめぐる矛盾~
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