石川県は去る1月29日、志賀原発事故時の避難時間推計シミュレーションを公表した。
様々な条件を組み合わせ、30キロ圏内の住民の90%が30キロ圏外に避難するのに、最短で8時間45分、最長で14時間15分との推計結果となっている。
(1)このシミュレーション自体の妥当性を検討する必要がある。
(2)このシミュレーションが妥当だとして、そこから想定される様々な問題点を検討する必要がある。
これから少しずつ様々な角度から検討を重ねていきたいが、今回は根本的な問題を提起したい。
最短で8時間45分。
これでは立地条件がすでにアウトということではないか?
福島第一原発事故の経過を参考までに見ておきたい。
11日14:46 地震発生
15:37 1号機が全面緊急事態の前段である全交流電源喪失となり施設敷地緊急事態(避難準備)に至った。
※現在の防災計画でPAZ(5キロ圏)の住民の避難実施となる全面緊急事態に至った時刻は不明。
20:00頃 メルトダウンを起こしていたと見られている。
12日14:30、ベント実施(12日3時30分から実施しようとしたができなかった)。
15:36 水素爆発
ベント実施前にはすでに周辺の放射線量は高くなっていたことが確認されているが、仮にこれを考慮せず、全交流電源喪失から水素爆発までの約24時間の経過だけを見れば、最短8時間45分の避難を実現できれば、被ばくはほぼ回避できるように思える。
しかし、福島第一原発事故の事故の進展は、ある意味では非常に幸運であったことを忘れてはならない。
原発事故で私たちが恐れてきたのは核暴走と、メルトダウンによる水蒸気爆発である。
今回、11日の20時頃にはメルトダウンを起こし、いつ水蒸気爆発が起こっても不思議ではなかったし、いまだになぜ水蒸気爆発が起こらなかったのか、その原因いついて正確には解明されていない。
溶け落ちた燃料が塊りとなって再臨界となり核暴走を起こす可能性も指摘されていた。
このような事態が起これば、気象条件によって被害は異なるが、シミュレーションに基づくPAZ(5キロ圏)の住民はもとより、UPZ(30キロ圏内)の住民もかなりの被ばくを強いられることは間違いない。
新規制基準では、シビアアクシデントは起こりうるという想定の下、多重防護の最後の5番目の砦として原子力防災が位置付けられたが、志賀原発の立地条件を前提に考えたとき、避難は間に合わないことがシミュレーションから明らかになったのである。
今回の避難時間推計シミュレーションに掲げられた目的をみれば「・・・より効果的な避難指示や避難経路、交通規制などを検討するために実施。」とあるが、それ以前に、この結果を立地の適否の判断材料として俎上に上げるべきではないか。
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