北野進の活動日記

志賀原発の廃炉に向けた取り組みや珠洲の情報、ときにはうちの庭の様子も紹介。

SDGsと世界終末時計

2019-07-31 | 平和
SDGs(Sustainable Development Goals=持続可能な開発目標)という言葉を様々な場面で耳にし、SDGsのロゴも頻繁に目にするようになってきた。
政府から「SDGs未来都市」に認定された珠洲市では広報すず7月号でSDGsの特集を組み、市内の様々な取り組みを紹介している。



国連が加盟する193か国すべての賛同を得て採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」。その中に掲げられたSDGsの実現に向けて、能登半島の先端珠洲市でも多くの市民が取り組みを始めたことはすばらしいことだ。

2030アジェンダで掲げられた内容はまさに「野心的」なものだ。
その実現に向け全ての国が力を合わせていく重要性は全く否定するものではない。

だけどその一方で私にはSDGsに関して理解できないこと、果たして大丈夫?という不安や疑問も尽きないのだが、SDGsを実現する上での課題についてはあまり議論されてないように思えてならない。

そこで以下、私の素朴な疑問をスタートに、頭の中のもやもやを少し整理してみたいと思う。

素朴な疑問その1は今年の2月11日に書いた「志賀原発再稼働がSDGs?!」だ。(北陸電力グループCSRレポート2018参照

この際、と思って他の電力会社についても調べてみると、
北海道電力 北電グループレポート2018年度版
 
東北電力 東北電力グループ統合報告書2018 

東京電力 TEPCO 統合報告書 2018

中部電力 2019年度経営課題への取り組み

関西電力 関西電力グループ中期経営計画達成に向けた重点取組み(2018)

中国電力 中国電力グループの環境目標と実績

四国電力 2018 よんでんグループ アニュアルレポート

九州電力 九電グループサステナビリティ報告書2019

と、各社それぞれ事業報告書や経営方針などで、原発再稼働がSDGsのターゲットに適うものと記載している。
※東北電力だけは社長がトップメッセージの中で触れているものしか見つけられなかった)

なにこれ?言ったもの勝ち?というのがこのブログだ。
9電力揃って我が社もSDGsだと言われると、この暑さの中「原発再稼働」がSDGsのわけないやろ!と思う自分の方が間違えてるのか、SDGsについて勘違いしているのかと不安になってくる。

素朴な疑問その2。SDGs未来都市の認定は内閣府、要するに安倍政権が行うが、国内の格差・貧困を拡大してきた安倍政権が世界の貧困の撲滅に向けたSDGsに取り組むって矛盾もいいとこでは?実施指針やアクションプランを策定しているがその内容に問題はないの?

素朴な疑問その3は以下の写真をご覧いただきたい。



珠洲市の今年度の主要施策を整理したペーパーだが、5つの基本目標それぞれに関連するSDGsのロゴがつけてある。
「SDGs未来都市」認定を受けての新規事業だけでなく、継続事業の含めSDGsに関連づけてある。各事業がSDGsにつながるものだという職員の意識付けということだったが、言いかえればこれまでの珠洲市の事業の多くもSDGsに関連付けられるということ。さらに言うなら全国すべての自治体の事業の多くもSDGsに関連付けられるということ。職員の意識付けをしながらさらに事業を進化させようという狙いがあると思われるが、ここまでハードルを低くしていいの?

そして素朴のその4。SDGsの前身は2000年に採択されたミレニアム開発目標(MDGs)。貧困や伝染病の撲滅に大きな成果を上げたと言われており、これを引き継ぎ発展させようとが2105年に採択されたのがSDGsだが。
ところがこれらの取り組みが進められる一方で「世界終末時計」は昨年、過去最悪の1953年と並んで「人類滅亡まであと2分」という危機的判断が示された。米ロ中の新型核兵器の開発競争激化に加え、気候変動問題では米国がパリ協定から離脱したことも大きな要因だ。この「2分」という数字は今年も維持されたが、公表されると同時に実態はもっと深刻だとの声が殺到したそうだ。米ロ中距離核戦力全廃条約はこの8月2日に消滅する。イラク核合意も米国は破棄した。サイバーテロの脅威やフェイクニュースの氾濫など「情報環境」を取り巻く状況も深刻化、技術革新が続くIT分野での技術悪用への懸念なども指摘されている。

危機をもたらしているのは世界の指導者、特にアメリカ・トランプ大統領の責任は重大なことは言うまでもないが、いずれにしても持続可能な社会の実現に向けたSDGsの取り組みが進む一方で世界は破滅の危機へと向かっていることもシビアに認識しておく必要がある。

以上の素朴な疑問を踏まえながら、SDGsについて少し考えてみたいと思う。

1.17の目標、169のターゲットについて
「持続可能な社会に向けて望ましいことを積み重ねていけば持続可能な社会へと近づき、そして実現される」という命題は正しいのか。
そうした取り組みを重ねることの重要性は言うまでもないが、それだけで持続可能な社会が実現すると考えるのは、あまりに予定調和的な楽観論ではないか。
「持続可能な社会に向けて望ましくないことを止め(させ)なければ持続可能な社会へは近づかない。」
という考えも盛り込まないと、気づいた時は終末時計0分ということになりかねない。

2.どういう行動がSDGsの目標やターゲットに適うのかを誰が判断するのか
(1)言ったもの勝ちでは様々な企業や団体からSDGsが利用されるだけ
 SDGsの実施手段は、「グローバル・パートナーシップ」が必要とされるとしつつも、第一義的には各国政府の自主的な取組みが期待されている。フォーローアップとレビューも国主導とされている。
 そこで日本政府(安倍政権)が策定した実施指針アクションプランをみると随所にアベノミクスの匂いがプンプンと。
原発再稼働についてもあからさまな文言はないが例えばアクションプランP5では「エネルギー転換・脱炭素化を進めるため、あらゆる選択肢を追求」と、原発再稼働を盛り込んだエネルギー基本計画と同様の文言が見えてくる。同P2では「質の高いインフラ投資」について記載されているが、これも経団連が原発輸出に弾みがつくと喜んだ箇所だ。
電力会社よりもまず安倍政権が「言ったのも勝ち」でSDGsを歪めていることに着目しなければならない。
2030アジェンダを受けてつくった指針やプランだから、さすがの安倍政権でも変なことは書かないだろうというのは大間違い。

民間企業も、問題があるのは電力会社だけではない。戦車や艦船など兵器を製造する企業が、風力発電もゴミの焼却炉も作ってるので我が社もSDGsだなんていいのか?
大学も同様だ。防衛省から予算もらって軍事研究やってる大学がSDGsの取り組みを自慢している。

安倍政権にこれらのレビューを期待しても無駄だ。
政府や多様なステクホールダー、そして市民の取り組みについて、様々な分野の専門家からなる第三者機関を設けて調査、検証していく仕組みが必要ではないか。。

(2)みんなが取り組んでいるようでも、実際は全くGOALに近づかない
 原発再稼働にや原発輸出に象徴されるように、、多くの民間企業の取り組みや行政の事業が解釈次第でSDGsにつながる行動とされてしまう。SDGsは、野心的な目標を掲げた一方ですべてのステークホールダー、全ての人に取り組みへの参加を呼びかけているので、具体的な取組みのハードルはかなり低い。みんながちょっと意識すれば取り組めることが数多くある。そこは大事なところだが、フォーローアップやレビューの仕組みが整えられていないと、結果的にはほとんど効果が見られず自己満足で終わってしまうということにもなりかねない。

3.世界終末時計を逆戻りさせるSDGsにしなければならない
 各国の取り組みは第一義的にはそれぞれの政府に委ねられているが、米国や中国が消極的あるいは後ろ向きではGoalは遠のく一方だ。
世界各国の取り組み状況を調査したSDGsランキングが公表されている。予想通り北欧を中心としたヨーロッパが上位を占め、アメリカは35位、中国は39位となっている。国連と言えど両政府に口出しできないのはわかるが、このままでは持続可能な社会どころか世界終末時計は深夜0時に向かっていく。まさにグローバル・パートナーシップの力が求められている。少なくともSDGsに真正面から向き合い取り組んでいる企業や団体、市民は、今の取り組みの延長線上に持続可能な社会がやってくるという安易な楽観論は捨てた方がいい。

※もう少し課題を整理したかったが、整理まで至らず


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