さよなら!志賀原発ネットワークは今日、来月16日に予定されている石川県原子力防災訓練について、下記の通り、申し入れをおこなった。
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2013年10月22日
石川県知事
谷本 正憲 様
さよなら!志賀原発ネットワーク
共同代表 岩淵 正明
細野 祐治
中垣たか子
共同代表 岩淵 正明
細野 祐治
中垣たか子
申 入 書
東京電力福島原発事故から2年7か月。人類が経験したことのない廃炉作業への道。世界が厳しく注視する汚染水問題。依然、避難生活を強いられ、生活を破壊された15万人を超える人々。原発の存在を許してしまった私たちは、延々と将来に続く放射能被害とたたかい続けなければなりません。
こうした中、原発輸出や再稼働を目指す国は、過酷事故に対して全く機能しなかった原子力防災計画の見直しを進め、県は11月16日に原子力防災訓練を予定しています。私たちは原発の復権を狙う国の方針を絶対に許しませんが、たとえ原発が停止していても放射性物質がある限り、住民の安全のためには原子力防災計画は必要だと考えます。その意味において今回の訓練に大きな関心を寄せています。
今回の訓練は、福島原発事故後に発足した原子力規制委員会が新たに策定した原子力災害対策指針を受け、大きく改訂された石川県原子力防災計画(以下「計画」とする)に基づく初めての訓練です。福島原発事故後の訓練としては、昨年6月に続き2回目の訓練となります。昨年の訓練は志賀原発の再稼働に向けた地ならしと言わざるを得ないものでした。昨年のような訓練の繰り返しは許されません。
新たな計画は、①過酷事故や複合災害を想定、②重点対策区域をPAZとUPZに分類・拡大、③EAL(緊急時活動レベル)とOIL(運用上の介入レベル)という新たな意思決定手順を導入、さらに④環境放射線モニタリングを原子力規制委員会の指揮下に置き、原子力災害対策特別措置法の下で進められた国の権限強化をほぼ完成、といった点が大きな特徴となります。
『過酷事故は起こらず住民に被ばくはさせない』という従前の計画から、『過酷事故は否定できず住民の被ばくは避けられない、その影響をいかに小さく抑えるか』という計画への大転換が図られました。関連してヨウ素剤の配布方法や避難方法なども大きく変わりました。そもそも、そのような想定をしなければならない原発の存在は許されるのか、その根本が問われていることは間違いありませんが、まずは新たな計画の実効性を検証し、原発を取り巻く課題を見出していく必要があります。
国は事故で放出された放射性ヨウ素との因果関係を否定していますが、現時点で甲状腺がんとの診断が確定した子どもが18人、疑いのある子どもが25人にものぼっています。セシウム137との関連が疑われる心臓疾患による震災関連死の増加も指摘されています。多くの親や子どもたちの将来への不安や恐怖におびえる姿を前に、被ばくは防げなかったのか、被ばく量は減らせたのではないかと悔やまれます。
原子力災害から住民の生命や健康をどこまで守ることができるのか、下記の項目を踏まえ、行政が本気になった防災訓練をぜひ実施していただきたく、ここに申し入れます。
記
1.事故想定含め訓練全般について
計画第2章第4節2に記載されている通り、①複合災害や過酷事故等原子力緊急事態を具体的に想定した詳細なシナリオを策定すること、②参加者に事前にシナリオを知らせないブラインド訓練を導入し、現場の判断力の向上につながる実践的な訓練とすること。
A.複合災害や過酷事故を想定し、ブラインド訓練も一部取り入れ、より実践的な訓練にしていきたい。
2.緊急時通信連絡訓練について
通常の連絡手段だけでなく、通常の連絡手段が確保できないことも織り交ぜた実践的な訓練とすること。
A.通信手段の多重化を図っている。
3.オフサイトセンター立ち上げ及び運営支援訓練について
各要員の職場、自宅からの実際の参集から始めること。
A.限られた時間であり、防災技術の向上に主眼を置く。参集訓練は行わない。
4.災害対策本部設置訓練について
各要員の職場、自宅からの実際の参集から始めること。
A.限られた時間であり、防災技術の向上に主眼を置く。参集訓練は行わない。
5.緊急時環境放射線モニタリング訓練について
(1)緊急時環境放射線モニタリングはUPZ圏内の住民に対し、OILに基づく緊急時防護措置を決定する極めて重要な活動である。8月の計画改定で、県がおこなう緊急時環境放射線モニタリングは原子力規制委員会の指揮の下に置かれることになった。原子力規制委員会は事故の態様に応じて実施方針の策定、実施計画および動員計画の策定、実施の指示及び総合調整、データの収集と公表、結果の評価を行い、さらに事故の進捗状況に応じて実施計画を改定しなければならない。原子力規制委員会の対応能力が問われる作業となる。原子力規制委員会の実践的な力量を確認し、さらに力量を高めるよう、ブラインド訓練を導入すること。
A.SPEEDIの予測を見ながら、モニタリングの実施を決めるところでブラインド訓練を導入する。
(2)新たにオフサイトセンターに設けられる緊急時モニタリングセンターは、テレビ会議を通じて原子力災害対策本部の会議に参加することになるが機器のトラブルも想定した訓練とすること。
A.専用回線や衛星電話といった多重化を図っている。
6.広報訓練について
(1)災害時要援護者および一時滞在者にも配慮した広報をおこなうこと。
A.市町と最終的な詰めをおこなっているが、一時滞在者に配慮していく。
(2)PAZ内においては、避難行動は一刻一秒を争うので、伝達漏れのないよう万全を期すこと。
A.緊急エリアメールなども活用し、万全を期す。
(3)UPZ圏内における屋内退避の注意喚起にあたっては、緊急時モニタリングの結果や予測される数値を理解しやすい表現で繰り返し伝えること。
A.指摘も踏まえ検討していく。
7.避難等措置訓練について
(1)PAZ内について
ア.EALに定められた全面緊急事態に至った時点で、住民や一時滞在者は原則として即時避難を実施する。移動手段を確保し、渋滞などの道路事情を勘案しつつ、PAZ内の全住民らの避難完了までに要する時間を把握することは、EALの有効性を確認するうえで不可欠である。そのためにも全住民参加を基本とした避難訓練とすること。
A.PAZ内には約2800人が住む。必ずしも全住民避難にこだわる必要はない。自家用車やバスによる避難を踏まえ、シミュレーションをおこなう。
イ.災害時要援護者の一時的な屋内退避施設として「はまなす苑」、福浦小学校、志賀町武道館がある。地域に暮らす災害時要援護者にも可能な限り参加を募り、無理な場合でも該当する災害時要援護者の人数に相当する模擬「災害時要援護者」により訓練を実施すること。
A.はまなす苑入居者は実施。
(2)UPZ圏内について
ア.UPZ圏内の住民はOIL1に基づき空間線量率が500μSv/hに達すると数時間内に避難となる。この基準自体、かなり高い数値であるが、一方で即時避難を実施するPAZ内の住民が円滑に避難できるよう配慮することが求められている。またOILの範囲は、原発の状況や緊急時モニタリングなどのデータの評価を待って設定されるが、段階的に避難をおこなうことも想定されている。すなわち、空間線量率が基準を超えても直ちに避難できるとは限らず、計画によれば屋内退避の勧告もありうるとされる。国の指示で被ばくのリスクを強要する計画であり、どこまで住民が従うか大いに疑問が伴う。自主避難を容認するのか明確に見解を示すこと。
A.速やかに情報提供をおこなう。県の情報に従って行動してほしい。(自主避難を奨励することはないが、自主避難者を強制的に止めることもできない)
イ.計画によれば被ばくのリスクを軽減するためとして屋内退避が求められるが、即時避難と比較すればリスクが高まることは間違いない。空間線量が高くなる中、屋内退避が続くことも想定される。気密性の高いコンクリート建屋で屋内退避可能な施設をリストアップし、その施設への退避を勧めること。
A.市町と協議し、リストアップに向け準備中。
ウ.UPZ圏内の避難指示は、PAZ内の住民避難の状況やモニタリングデータの評価などを踏まえた臨機応変の判断が求められる。UPZ圏内の避難区域の設定や避難指示にあたっては、実践力を検証するためにもブラインド訓練を導入すること。
A.今回の訓練は、UPZ内の8市町すべての自治体が避難訓練を実施する。住民に避難先を知ってもらうことを優先したい。緊急時モニタリングと避難対象地区は連動しない。
(3)避難先自治体について
避難所の開設だけでなく、汚染された車両、被ばくした住民が避難してくることを想定した受け入れ体制をつくること。
A.30キロ圏外でスクリーニングポイントを設けるが、受入自治体の避難所でもスクリーニングと除染をできるようにする。
8.緊急時医療措置訓練について
(1)ヨウ素剤の服用について
ア.PAZ内については、自宅外にいる住民や一時滞在者、3歳未満児など、事前配布されたヨウ素剤をすぐに服用できないケースも想定すること。
A.国から詳細な方針が示されていないので、まだ事前配備できていない。今回は備蓄場所からの搬送で対応する。
イ.PAZ外の住民には事前配布されていないので、遅滞なく配布できるかどうかが最も重要かつ困難な課題である。避難の際にあらかじめ指定された配布場所を経由して受け渡しをするのが基本となるが、配布場所周辺での渋滞も危惧される。各配布場所では配布を予定する区域の住民の訓練参加率を高め、課題の検証につなげていくこと。
A.国から詳細な方針が示されていないので、まだ事前配備できていない。今回は備蓄場所からの搬送で対応する。
(2)汚染スクリーニングについて
ア.PAZ内からの避難住民については計画通りの迅速な避難が実施されていれば汚染は少ないと考えられるが、避難行動が遅れた場合は、深刻な汚染、被ばくが危惧される。EALに基づき適切な対応ができたかどうかを踏まえ、スクリーニング体制を組むこと。
A.国からまだ方針が示されていないが、国公立病院の医療関係者の研修を充実、強化している。
イ.UPZ内は多くの住民も体表面の汚染、放射性ヨウ素による被ばくの恐れがある。プルーム通過前の避難を想定していた改定前の計画との違いを明確に認識したスクリーニング体制を組むこと。
A.今回はスクリーニングポイントを2か所設ける(奥能登行政センターと県立看護大)。
ウ.被ばく住民に対する汚染の検査、除染をおこなう体制を拡大すること。
A.国公立病院の医療関係者の研修を充実、強化している。
エ.避難車両の汚染についても測定し、除染できる体制を整えること。
A.自衛隊の協力を得て対応する。
9.その他
(1)防災業務関係者の被ばく対策については、計画に基づき万全を期すこと。
A。ポケット線量計を身に付け、累積の被ばく量を管理する。計画改訂で上限の数値は削除されているが、放射線業務従事者の規定に沿って従来通り対応する。
(2)以上の要請項目について、訓練に参加する県内関係市町や富山県、氷見市とも十分な調整をおこない訓練に臨むこと。
A.今回は氷見市、富山県も参加する。内容を調整しているところである。
以上
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赤字は回答(文責北野)。
前文でも書いている通り、原子力災害対策指針の策定を受けて県の原子力防災計画は今年3月、さらに8月と、2度にわたって改定されている。この指針や防災計画の内容をご存じの方なら、なぜこんな改訂はケシカランという姿勢で申し入れないのかと疑問に思われるかもしれない。
もちろん私たちも計画は大いに問題があるということは認識しているが、今回の訓練では、まずこの計画に記載されている内容に沿った最大限の訓練を実施し、その問題点を明らかにすることが大切だと考える。
もはや否定することのできない過酷事故が起こった場合、果たしてPAZ(5キロ圏)の住民はひばくする前に避難できるのか。UPZ圏内の住民は空間放射線量率が500μSv/h(通常の約1万倍)という数値になるまで屋内退避を続けるのか。こんな恐ろしい計画をはたして住民や関係自治体は受け入れるのか。あるいは安定ヨウ素剤の配布方法も変わるが机上の空論ということにはならないか。
さらには今回の改定で緊急時放射線モニタリングも国の指揮下に置かれることになった。避難に指示など防護措置の決定も含め、国に住民の命と健康を委ねる仕組みが徹底されることになった。JCOの事故、福島の事故の防災面での教訓は、結局国は機能しない、あるいは一番対応が遅く、住民の安全確保は身近な自治体が動かざるをえなかったということである。新たな組織と計画はできたが、果たして国は機能するのか。そこを少しでも検証できる訓練とすることも大切だ。
今回の申し入れ事項は決して県に無理難題を吹っ掛けたわけではない。計画に盛り込まれている項目がきちんと機能するのかどうかを訓練を通じて確認するという極めて基本的なことを求めたに過ぎない。
その上で、仮に計画通りにいったらどうなるのかも確認する必要がある。
今日の申し入れで明らかになったのは、残念ながら今回の訓練は改訂された防災計画が機能するかどうか検証するほどの内容が伴った訓練ではないということだ。
時間の制約や国から多くの実務的な指針がまだ示されていないなど、様々な言い訳が語られたが、ようするに非常に中途半端な訓練であることだけは間違いない。
志賀原発は再稼働の申請段階にいたっているわけではない。そういう意味でのんびり構えているとしたらとんでもない間違いだ。そこに放射性物質がある限り住民は危険とが背中合わせであり、停止中であろうと廃炉手続きが進められようと、実効性ある防災計画が常に求められる。
来月16日の防災訓練当日には、社民党議員団が中心となり調査行動を実施する予定だ。防災計画や防災訓練の問題点をより鮮明に浮き彫りにしていきたい。
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