北野進の活動日記

志賀原発の廃炉に向けた取り組みや珠洲の情報、ときにはうちの庭の様子も紹介。

「コロナ禍の中の原発事故」で破たんする原発防災!

2020-11-23 | 志賀原発


新型コロナの感染流行が拡大する中、昨日(11月22日)は志賀原発の重大事故を想定した原子力防災訓練が実施された。

「密閉を避ける感染防止策」と「密閉が求められる被ばく防止対策」は両立できるのか、あるいは密集・密接を避けてどうやって迅速な避難を実現するのか、コロナ禍の中の原子力防災には例年以上に多くの難問が立ちはだかる。
今回の原子力防災訓練はこれらの矛盾にどう向き合うのかが問われたはずだ。
さらに言うならば「コロナ禍の中、原子力防災は成り立つのか」を問う訓練でなければならなかった。


北陸中日新聞(11月23日)

しかし、いざ蓋を開けてみると、実施した「コロナ対応」は避難所受付での検温と消毒や避難スペースのゾーニングなど地震や洪水などの災害を想定した避難訓練でも実施する対策だけ。
ここ8年、毎年実施してきた住民参加の避難訓練は、コロナ禍を理由に今年はなし。
ようするに難問はパスである。
「コロナ禍の中の原子力防災訓練」に値しない手抜きに終始した訓練だったが、それでも下のような見出しの記事が地元紙の一面を飾る。
県をはじめとした防災関係者は安堵していることだろう。


北國新聞(11月23日)

一応、北國新聞も社会面では課題について触れているので紹介しておく。


北國新聞(11月23日)

志賀原発は9年8か月停止中。
北電は一日も早い再稼働実現を掲げてはいるが、まったく目途は立っていない。
こうした状況下、活断層上に今現在も核燃料が存在するにもかかわらず、県や周辺自治体など防災関係機関は気を緩め、複合災害対応なども含め実効性を高める訓練の実施を怠ってきた。
その延長線上に、今回のコロナ禍に向き合わない手抜き訓練がある。
「今年もやりましたあ~」という単なる実績づくりである。

これに対して社民党議員団を中心に今年も監視行動を実施し、原告団など3団体は下記の抗議声明を発表した。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
抗 議 声 明

 本日午前8時30分から志賀原発の重大事故を想定した石川県原子力防災訓練が実施された。東京電力福島第一原発事故後9回目となる訓練である。この間の8回の訓練では、不十分ながらも住民参加の広域避難訓練が実施されてきたが、今回は「新型コロナウイルス感染防止のため」として防災業務関係者のみによる応急対策の手順確認を主とした訓練に変更された。
 いま、国内では第三波とも言われる新型コロナの感染急拡大期を迎えており、政府はあらためて国民に対してソーシャルディスタンスの確保やマスクの着用、密集・密接・密閉の「三密」回避など新しい生活様式の徹底を求めている。しかし、災害時の避難行動や避難所生活においては密になりがちであり、人との接触機会も増えるため、感染リスクは高まらざるを得ない。このため、内閣府は災害時の避難所の開設や運営に関して、多岐に渡る感染拡大防止策を盛り込んだガイドラインを示しており、すでに各自治体ではこれを踏まえた防災訓練を実施している。
本日の訓練は、部分的にこの感染対策ガイドラインの内容を盛り込んでいるが、原子力防災訓練と称するからには、当然ながら原子力災害の特殊性を踏まえたものでなければならない。原子力防災の基本は、外部被ばくに対しては「より早く」「より遠くへ」であり、放射線の「遮断」という手段もある。内部被ばくに対しては放射性物質を体内に取り込まないための「密閉」が重要となる。原子力防災では新型コロナ感染対策と相反する取り組みが求められるのである。
内閣府は両者の可能な限りの両立を目指し、本年6月、新型コロナ流行下における防護措置についての「基本的な考え方」を示し、さらに11月2日には「実施ガイドライン」を公表している。今回の訓練では、国が示した「基本的な考え方」や「実施ガイドライン」の実効性の検証が第一に掲げられなければならなかった。さらに言うならば、「コロナ禍において原子力防災は成り立つのか」という命題に真正面から向き合う訓練でなければならなかった。
国内を見渡せば、今秋に入り福井県(大飯・高浜原発)、愛媛県(伊方原発)、島根県(島根原発)、新潟県(柏崎刈羽原発)、北海道(泊原発)、佐賀県(玄海原発)が「実施ガイドライン」を先取りした内容で住民参加の避難訓練を相次いで実施し、課題の検証に取り組んでいる。
ところが本日の訓練は、コロナ禍に向き合うどこか、コロナ禍を言い訳とした「住民参加なし、参加機関・参加者の大幅削減」の完全な手抜き訓練であった。石川県の消極姿勢は際立っている。志賀原発は停止中とはいえ、現在も活断層上の原子炉建屋内に核燃料が保管され、住民は原子力災害のリスクに晒され続けている。にもかかわらず県や北陸電力をはじめとした防災関係機関がこのような訓練しか「しない」、「できない」のならば、県民にとって深刻な事態である。
以下、本日の監視行動を踏まえ、手抜き訓練の実態と問題点を4点に絞り指摘する。
1. PAZ(原発から半径5km)圏内の住民避難をスルーした訓練
今回の訓練想定は、前回訓練同様「志賀町で震度6強の地震が発生し、志賀2号機が自動停止、全電源喪失し、全面緊急事態となる」というものである。PAZ圏内の住民3,831人(2019年資料)は、基本的にはUPZ圏外の指定避難所へ自家用車あるいは用意されたバスなどで避難することとなる。
ところが今回は、志賀町総合武道館などの施設を屋内退避施設として開設し稼働させる訓練のみ。本来は被ばく低減策と感染対策を踏まえた一時集合場所の開設や避難車両の手配、換気も含めた車内での感染対策、防護措置と感染対策を講じたスクリーニング施設の運用などを実施すべきところ、今回はこれらの課題をすべてスルーしてしまった。
武道館の定員は130人。今回は感染対策のガイドラインに基づき、模擬住民の受付対応がおこなわれたが、全面緊急事態に至ると、防護措置の実施ガイドラインに基づき、扉や窓の開放による換気は行わず密閉空間となり、感染対策とのジレンマに直面する。
2. UPZ(原発から半径5~30km)圏内の住民を「自宅に封じ込める」訓練
 全面緊急事態に至るにもかかわらず、密閉が不十分な自宅での屋内退避訓練で終了する。手抜き訓練の象徴である。実際は、避難指示を受け、次の3で指摘する課題に直面する。
3.「被ばく低減策」と「感染対策」の矛盾を隠す訓練
 30km圏内の避難住民は約15万1千人(2019年度資料より)。原子力防災の避難行動は時間とのたたかいでもある。感染対策のガイドラインを踏まえるならば、一時集合場所やスクリーニングポイントなどで要する時間は確実に長くなり、渋滞も懸念される。避難の遅れは必至であり、検証が不可欠である。
避難手段は、感染対策を優先するならば可能な限り少人数の自家用車避難を推奨すべきであるが、ヨウ素剤の受け渡しやスクリーニング施設での渋滞は深刻化する。一方、換気を行わないことを基本とするバス移動は「三密」であり、感染リスクは高まる。ここにもジレンマがある。
避難バスは「濃厚接触者」や「感染疑い者」、「その他の避難者」が乗車するバスに分け、座席も間隔をあけなければならない。従来の想定を大きく上回る台数が必要となるが、バス事業者は果たして対応できるのか。今年8月に実施された大飯・高浜原発の避難訓練では、避難住民27人に対してバス4台が避難車両として手配されている。
被ばく低減策と感染対策との間には矛盾が山積している。
4. 典型的「三密」のオフサイトセンター
 今回の訓練の中心舞台は、床面積約1400㎡弱のオフサイトセンター2階フロア。例年は志賀原子力規制事務所職員や県の原子力防災担当職員、北陸電力社員に加え、北は輪島市から南はかほく市まで各市町の職員、陸・海・空の各自衛隊、県警、海上保安庁等の担当者、さらには報道関係者も含めて200人以上が参集する。典型的な「3密」空間である。事態収拾が難航し対応が長引けば、施設内で感染が拡大し、事故対応自体が十分できなくなる可能性すらあるが、マスクの着用や検温、手指消毒の実施など通常の感染拡大防止策以上の対策は示されていない。

 私たちはこの間、近年常態化する巨大自然災害に起因する原発の重大事故、あるいは巨大自然災害と並行して起こる重大事故に対する原子力防災の検証が必要と指摘し、都合のいい想定の下、取り組みやすい項目だけをつまみ食いする訓練に終始する県の姿勢を批判してきた。残念ながら手抜き体質はさらに深刻化し、今回は直面するコロナ禍にも背を向けることとなった。
再稼働を前提とした、非現実的で実効性のない、単なる実績づくりのための訓練の繰り返しに今こそ終止符を打たなければならない。東電福島第一原発事故の教訓を踏まえるなら最善の原子力防災は原発廃炉であると断言する。あらためて活断層上にある危険な志賀原発の一日も早い廃炉を北陸電力に要求するとともに、廃炉実現に向け全力で取り組む決意をここに表明する。
   2020年11月22日
志賀原発を廃炉に!訴訟原告団
石川県平和運動センター
社会民主党石川県連合


コメントを投稿