好曲好盤探訪

名曲か、名盤か、というより、個人的好みで好きな曲の好きな演奏との出会いを求めてボチボチと。同じような方の参考になれば

ラフマニノフ ピアノ協奏曲第2番 ヴァーシャーリ/アーロノヴィチ/ロンドン響

2017-11-18 17:38:57 | ラフマニノフ ピアノ協奏曲第2番
ラフマニノフ
ピアノ協奏曲第2番 

ピアノ…ヴァーシャーリ
指揮…アーロノヴィチ
演奏…ロンドン響
好み度…4(5点満点)

第1楽章はピアノよりむしろオケの濃さが印象的。叙情性というよりは濃い。洗練とか絢爛というのとは違う響きで、鳴らすところは重い金管も思い切りよく鳴らして濃い重量感を感じさせる。
ピアノは録音のせいか高音が綺麗に抜けていくというよりは、また、繊細な叙情性を聴かせるというよりは、どこか抜け切らないが真面目に少し甘い感触で虚飾のない力感を感じさせる、といった感であり、これは第2楽章では温かく優しい響きとなって甘い切なさを帯びた美しい雰囲気を醸しているように感じる。オケも木管ソロも弦も情感豊かで第2楽章はなかなか秀逸と思う。
終楽章はオケもピアノも結構音量を上げ、ピアノも結構力強いが、特にオケは特有のドンジャン鳴らすオーケストレーションを結構思い切ってやるもんだから両者相まって力強いといえばそうだが、ラフマニノフの叙情性等は吹き飛ばされているようにも感じる。
全体の印象として、濃さはともかく重さはやや過剰な感も受けるが、野暮ったいほどの素朴さ温かみも感じ、少なくとも個性的であること、第2楽章はなかなか秀逸であること、は言えるように思う。

ラフマニノフ ピアノ協奏曲第2番 グリモー/アシュケナージ/フィルハーモニア管

2017-03-05 16:14:17 | ラフマニノフ ピアノ協奏曲第2番
ラフマニノフ 
ピアノ協奏曲第2番 

ピアノ…グリモー
指揮…アシュケナージ
演奏…フィルハーモニア管
好み度…4(5点満点)

ピアノは重厚感だったりほの暗さといったようなものは感じないが、堂々とした若々しい力に満ちたかのような打鍵のように感じる。
オケも同様、ほの暗さなどは感じないが誠に達者。
ただ、ピアノでいえば、元気でクリアな音で揃いすぎて、感情の起伏の表現だったり、ラフマニノフらしい叙情的な雰囲気といった点ではむしろロイヤルフィルとの盤のほうが色濃かったように思う。
印象としては水準高い健全なラフ2といったところだろうか。

ラフマニノフ ピアノ協奏曲第2番 ブロンフマン/サロネン/フィルハーモニア管

2016-10-22 21:22:58 | ラフマニノフ ピアノ協奏曲第2番
ラフマニノフ 
ピアノ協奏曲第2番 

ピアノ…ブロンフマン
指揮…サロネン
演奏…フィルハーモニア管
好み度…3.5(5点満点)

冒頭から、オケもピアノも落ち着きと重さも湛えて叙情味も感じさせ、また、両者のバランスもよく、ピアノはしっかりと澄んだ音を打ち、オケは弦を中心にしっかり厚く哀愁も帯びてなかなかに美しい。
ただ、特にピアノのほうは、良演ではあろうと思われるが、あまり感情の起伏が表現されている印象はなく、もう少し力強さあるいは激しさ含め何か訴求力がほしいようにも思われる。

ラフマニノフ ピアノ協奏曲第2番 リヒテル/ヴィスロツキ/ワルシャワフィル

2016-08-08 09:20:08 | ラフマニノフ ピアノ協奏曲第2番
ラフマニノフ 
ピアノ協奏曲第2番 

ピアノ…リヒテル
指揮…ヴィスロツキ
演奏…ワルシャワフィル
好み度…4.5(5点満点)

冒頭からほの暗く力強い打鍵と、弦楽器の重くほの暗い響きが緊張感を漂わせながら印象的。
ピアノはことさらには情緒的ではないが、しっかりほの暗く情感を織り交ぜながら堂々と、ときに染み入る美しさを聴かせつつ、ここというときの力強さはさすがである。
やはり重く情感豊かな強打が印象的で、強打が映える分、そのコントラストとしての叙情部での深みを湛えた優しい音色もまた印象的。
オケの力量不足をいう声もあるようだが、特に感銘を受けるものでもないが特にもたつき感も感じないし、少し重めでほの暗い響きはこの曲に合っていてよいと思う。
ピアノとオケの距離感は、冒頭の主題でもフィナーレでもピアノががっちり前に出て聴こえるくらいにピアノが前だが、この演奏はピアノが主役の、これでよいように思う。
鉄板の名盤として名高いのが頷ける1枚である。

ラフマニノフ ピアノ協奏曲第2番 ポコルナ/ワルドハンス/ブルノ国立フィル

2016-02-07 22:43:41 | ラフマニノフ ピアノ協奏曲第2番
ラフマニノフ
ピアノ協奏曲第2番

ピアノ…ポコルナ
指揮…ワルドハンス
演奏…ブルノ国立フィル
好み度…4(5点満点)

奔放で野性的な印象を受ける演奏といえるのではないだろうか。
ピアノもオケも結構自由に演奏しており、音もどこか激しさを秘めている。
展開も、例えば冒頭は徐々に音を大きくしていってオケとの主題、でなく、途中で一度音量を落としてからの主題だし、終楽章の出だしも他の演奏では目まぐるしく弾き通してしまうところを一音一音わかるくらいの速さで別の曲みたいだし。
ただ、奇をてらうのでなく、このピアニストの真摯な解釈であり意志が感じられるようで変な違和感はないし、かなり個性的だけど所謂ラフマニノフ的な叙情性もほのかに感じさせる。
ピアノには結構力も感じられるし、表現意欲旺盛な感もあって、どちらかといえば同じような雰囲気の多いこの曲の録音の中にあってはちょっと魅力を放っているようにも思う。
第1楽章冒頭は、和音の一音一音が余韻の中に現れてくるというか、ちょっと雰囲気を感じさせ、オケとの協奏部分もピアノが存分に存在感あって結構雰囲気ある出だしだし、終楽章出だしもこんな音あったのか、という新鮮さもあり悪くない。
第2楽章は切ないような叙情性とかというよりは凛とした美しさを感じるかな。
フィナーレをそれなりに厚いながらも何の未練もないかのようにあっさりやっているのもこの演奏らしいといえばらしいかもしれない。
この曲の録音の中では変り種かもしれないが、意思の通った共感できる変り種のように思う。

ラフマニノフ ピアノ協奏曲第2番 キーシン/ゲルギエフ/ロンドン響

2015-11-14 23:55:26 | ラフマニノフ ピアノ協奏曲第2番
ラフマニノフ
ピアノ協奏曲第2番

ピアノ…キーシン
指揮…ゲルギエフ
演奏…ロンドン響
好み度…5(5点満点)

冒頭から雰囲気を湛えて引き込まれる。
オケもピアノも情感豊かにスケール感を感じさせる。
叙情部のピアノは1音1音美しく、第1楽章中間の強奏部ではオケもピアノもゆっくり踏みしめるような強さを持ち、その後のピアノと沈んだ美しさの弦との協奏も美しい。
第2楽章も終楽章も、瑞々しくも心地よい広がりと情感を感じさせて美しい。
第2楽章は温かみのある情感とかいうよりは、むしろ夢の中あるいは幻想的であり、
終楽章もほどよい厚さと強さの中にたっぷりの叙情性を感じさせて美しい。
ネットでの記述などによればキーシン16歳、ゲルもどちらかといえば売出し中といった時期の録音のようであるが、
ピアノもオケもこの曲によく合ったスケール感と力感と、重さはあまり感じないが少しのほの暗さを湛えて美しく、
3番に比べると個性の出にくい2番にあって、幻想的なスケールを湛えたラフマニらしい情感を感じさせる、ありがちではない演奏であり、私にとっては結構な名盤。

ラフマニノフ ピアノ協奏曲第2番 グリモー/コボス/ロイヤルフィル

2015-09-19 23:14:56 | ラフマニノフ ピアノ協奏曲第2番
ラフマニノフ
ピアノ協奏曲第2番

ピアノ…グリモー
指揮…コボス
演奏…ロイヤルフィル
好み度…4(5点満点)

ピアノは清楚で薄日差すような明るさあるいは優しさを漂わせつつ、なかなかのスケール感と強さ、ときにはほの暗さをも感じさせ、表現意欲を感じさせる心地よい起伏もあって、奏者の情熱が叙情性になり強さになり音に現れているようでもある。
オケも特にうまいとか深いとかというのともちがうが、叙情的な雰囲気も漂わせて厚く美しく響き、ピアノとともにラフマニノフらしい雰囲気をつくっているように思う。
情感の込められた起伏に清廉な「華」も感じさせる、この曲のよさを、重くせずに美しく引き出した、実は名演?の類の良演と感じる。

ラフマニノフ ピアノ協奏曲第2番 ルービンシュタイン/オーマンディ/フィラデルフィア管

2015-04-12 10:55:04 | ラフマニノフ ピアノ協奏曲第2番
ラフマニノフ
ピアノ協奏曲第2番

ピアノ…ルービンシュタイン
指揮…オーマンディ 
演奏…フィラデルフィア管
好み度…4(5点満点)

出だしは特別な情感も見せずほんの少し速めの、しかし落ち着いた厚い音で入っている。
フィラデルフィアの柔らかな響きとルービンの輪郭のはっきりしたピアノは、
ほの暗さや重さよりむしろほのかな明るさをこの曲に与えているようにも感じる。
1楽章中ほどのピアノによる主題のちょっと激しく再提示の部分も特に強く打ってはいず、ドラマ性とか情緒性はあまり表現対象になっていないのかもしれない。
チャイ1の序奏の主題もルービンは軽く弾いていたし、この演奏でも冒頭の主題やフィナーレの全奏時のオケに乗るピアノは結構控えめであり、この頃のルービンはあえて力強い強打を避けるとか、そういう傾向にあったのだろうか。
第2楽章は消え入るような幽玄な弾き方でなくしっかり奏し、凛として美しく、
オケの柔らかい響きもあって協奏曲の2楽章というよりここだけで1つの小品の名盤として聴けるくらいのものである。
終楽章も特に緊張感や圧倒感やドラマ性を出していく感はない。
力まず、普段どおりの美しさをしっかり出していく、といったスタンスにも聴こえる。
とはいえフィナーレに向けての高揚とフィナーレはそれなりの雄大さと盛り上がりを聴かせている。
全体的に柔らかさと力まない美しさが印象的な、上質の演奏であると思うが、個人的には、両端楽章は、力強さなりほの暗さなり叙情性なりを感じられる演奏が他にあるようにも思い、好み度はちょっと控えめ。ただ、第2楽章の美しさは絶品の域にて格別のようにも思う。

ラフマニノフ ピアノ協奏曲第2番 アシュケナージ/ハイティンク/コンセルトヘボウ管弦楽団

2015-01-12 21:06:16 | ラフマニノフ ピアノ協奏曲第2番
ラフマニノフ
ピアノ協奏曲第2番

ピアノ…アシュケナージ
指揮…ハイティンク
演奏…コンセルトヘボウ管弦楽団

好み度…5(5点満点)

アシュケナージのラフマニノフにはプレヴィン/ロンドン響とのものとハイティンク/コンセルトヘボウ管とのものがあり(ハイティンク版が後)、
評価や好みは人様々のようであるが、個人的には表現力あるいは上質な叙情性という点でハイティンク版のほうがプレヴィン版に勝ると思っている。
そのハイティンク版だが、アシュケナージのピアノのしっとり落ち着いた優しく澄んだ音色はひたすらに美しい。
オケも厚く上品なほの暗い大河のようなくすみと力強さを湛えたコンセルトへボウの音色がなんとも美しくラフマニに合っている。
出だしの主題からしてどこまでも広いロシアの雪原に一人立つような風景が眼前に浮かぶかのような響きである。
全編通してオケもかなりしっかり鳴っているが、ロシアの大地にごく自然に雪がのっているように、オケとピアノの溶け込み具合も至って自然であり、
この演奏は両者あってのものである。
どの楽章でもピアノもオケも叙情性たっぷりの、深い美しさを湛え、どこまでも広い雪原と、その広さゆえにあぶりだされる静かな優しい孤独…そしてそれを解き放つフィナーレ、
なんて情景が自然と連想されるようである。この演奏の美しさは文学的な美しさなのかもしれない。
この曲はこれくらいたっぷり表現してくれたほうが真価が出るように思う。名盤でしょう。