好曲好盤探訪

名曲か、名盤か、というより、個人的好みで好きな曲の好きな演奏との出会いを求めてボチボチと。同じような方の参考になれば

ブラームス 交響曲第1番 マーク/トリノRAI響

2015-10-31 10:33:36 | ブラームス 交響曲第1番
ブラームス
交響曲第1番

指揮…マーク
演奏…トリノRAI響
好み度…4.5(5点満点)

燃焼感と力感漲る重さとスケール感をも兼ね備えた、結構すごいブラ1。
響きは分厚いが重苦しくはない。
特に第1楽章の迫力は圧巻の感がある。
尻すぼみというわけではなく、全編通して弦を鳴らすときは太く力強くならして、第2楽章も分厚い美しさを出しているし、フィナーレの迫力の追い込みと高らかな堂々たる凱歌もこれまた圧巻の感がある。
部分的にここはもうちょっとこうやって、と思うところがないでもないが、大きなうねりのような生きた力感の中では、まぁ、それはそれ、といったところ。
力感漲る重量感とスケール感、虚飾でない骨太な展開と、高い燃焼度を持った、こういう指揮者と楽団がこういう盤を残していたかとちょっと驚きの、なかなか得難い力をもった盤だと思う。

チャイコフスキー ピアノ協奏曲第1番 マガロフ/オッテルロー/ハーグ・レジデンティ管

2015-10-31 10:30:48 | チャイコフスキー ピアノ協奏曲第1番
チャイコフスキー
ピアノ協奏曲第1番

ピアノ…マガロフ
指揮…オッテルロー
演奏…ハーグ・レジデンティ管
好み度…4.5(5点満点)

なんとも剛毅な演奏である。
冒頭のホルンなどは雄大さにかける感もあるが、その後のピアノは力強く、熱く真摯な表現意欲と確かな技量に裏打ちされた芯の通った豪快な強打には圧倒されるばかりであり心地よい。
その熱く起伏の大きな音楽には頑固職人のような職人の情熱を感じるかのようであり、叙情部でも情熱の微熱を帯びているかのようである。
オケも所謂一流かといわれればそうではないかもしれないが、邪心なく熱い響きで悪くない。
第2楽章では打って変わっての素朴な美しさと安穏…ピアノの表情の豊かさを改めて思う。
終楽章は、第1楽章と比べると豪快さや起伏の大きさは感じられないがフィナーレは熱く〆ている。
録音は古味も感じ弦楽器の音などかすれ気味ではあるが、上手さや評価に汲々とすることなく純粋によいものをつくろうと邁進するかのような豪快さや熱さが伝わるような、そういう意味では近年では得がたい名盤かもしれない。
昔のものとリマスター盤とがあるようだが、ピアノの音は昔のもの、オケの音はリマスター盤がよいような印象である。個人的には昔のものを推す。

ブラームス 交響曲第1番 ルートヴィヒ/ハンブルク国立フィル

2015-10-18 10:22:02 | ブラームス 交響曲第1番
ブラームス
交響曲第1番

指揮…ルートヴィヒ
演奏…ハンブルク国立フィル
好み度…4(5点満点)

CDの帯の紹介文言曰く(抜粋)「豊潤な音楽・圧倒する推進力・揺ぎない自信」。
その通りの演奏のように思う(豊潤といってもむしろ乾き目の響きの中での豊かさ)。
やや速めのテンポ設定の中で、弦も管も思い切りよく鳴り、ちょっと古風で、洗練されきっていない味を帯びた響きはこの曲によく合っていて、厚く豊かで、力強い推進力を伴っている。
第2楽章は厚い弦の響きがそれなりの情感も帯び、
終楽章など要所では速度を落として落ち着きも保ち、ホルンも聴かせどころでは雄大である。
やや残念といえば終楽章ホルンのソロが少し情感に欠けるのと、フィナーレの凱歌の後が少し急ぎすぎなところ等だが、飾らない豊かな響きと、歯切れのよい圧倒的な力感と推進力が印象的な盤だと思う。

ドヴォルザーク 交響曲第9番「新世界より」 フィッシャー/ブダペスト祝祭管

2015-10-18 10:17:50 | ドヴォルザーク 交響曲第9番 新世界より
ドヴォルザーク
交響曲第9番「新世界より」

指揮…フィッシャー
演奏…ブダペスト祝祭管
好み度…3.5(5点満点)

少し速めに感じるテンポで、冒頭のティンパニの打ち込み等は強いが、全体としての強さや厚みが伴わない分、キレを感じるといった印象でもなく、コンパクトに精緻にまとまっているが叙情性を感じるタイプでもないように思う。
何らかの情感を込めた、というよりは整い美しくあることに主眼を置いたかのような印象を受ける。
小気味よく、よくまとめられているとは思うが、厚い、あるいは深みのある弦の響きがあるわけでも金管のスケール感ある響きがあるわけでもなく、全体として流麗でライトな新世界、という印象かな。

ベートーヴェン 交響曲第5番「運命」 ジュリーニ/ロサンゼルスフィル

2015-10-18 10:14:29 | ベートーヴェン 交響曲第5番「運命」
ベートーヴェン
交響曲第5番「運命」

指揮…ジュリーニ
演奏…ロサンゼルスフィル
好み度…4(5点満点)

ジュリーニはウィーンフィルとのブラームスはやったらゆっくりで重い音質だった印象があるが、この運命ではそうではない。
終楽章は結構ゆっくりだが、聴いていてじれったさや違和感を感じるものではないし、音質は楽団の性質にもよるのかもしれないが、それなりに厚いがむしろ軽め明るめ。
第1楽章冒頭の動機は厚く思い切りよく入り、あまり音を区切らず鳴らしているのが少し特徴的。
その後も縦の線をそろえて、というよりはどこかおおらかな印象。
「運命」だけど、深刻さや緊張感、激しさというよりは、どこか明るくのびやかである。
ジュリーニを評して「謳う」とはよく見かける。全編通して随所に感じるが、第2楽章等聴いていると柔らかい伸びやかさに、そんな評に頷ける感もある。
終楽章も緊張感や圧倒感というよりは、慌てず興奮せず素朴な喜びをかみしめるような、分かち合うような、弦も管もたっぷりとおおらかで素朴な響きである。
ゆっくりだが、大曲感などともちがう、響きは厚いけど重さは感じない、特に完成度を誇るようなタイプの演奏でもない、深刻さ、激しさ、厳しさ、などとはちがう方向を向いた、どこか明るく田園あるいは明るい森林を連想するくらいおおらかでのびやかな、そんな運命との印象である。

ラフマニノフ ピアノ協奏曲第3番 プレトニョフ/ロストロポーヴィチ/ロシア・ナショナル管

2015-10-10 23:34:36 | ラフマニノフ ピアノ協奏曲第3番
ラフマニノフ
ピアノ協奏曲第3番

ピアノ…プレトニョフ
指揮…ロストロポーヴィチ
演奏…ロシア・ナショナル管
好み度…4.5(5点満点)

ピアノの音のなんと澄んでいることか。
澄んでいてなおダイナミックさを備え、豊かな情感を湛えている。
起伏の動きも細やかで大きく凛として美しい。
大カデンツァも激しさと強さとともに強い情感を表現して聴き応えあり、その後の叙情部は夢見心地に誘われるように美しい。
オケはロストロの棒で重く重厚かと思いきやどちらかといえばむしろクリアで控えめ、ながら、緊張感を湛えた起伏をもってピアノの美音をしっかり支えている。
両者相まって高い完成度の中にこの盤ならではの緊張感と雰囲気を醸している。
この曲のドライな激しさと緊張感とともに情感と美しさも存分に聴かせる、難曲であることを忘れるほどにプレトニョフの名人芸が光る名盤と思う。

ブラームス 交響曲第1番 ミュンシュ/パリ管

2015-10-10 23:28:14 | ブラームス 交響曲第1番
ブラームス
交響曲第1番

指揮…ミュンシュ
演奏…パリ管
好み度…3.5(5点満点)

何とまぁ豪華で重いブラ1だろうか。
第1楽章のテンポはむしろゆったり構えたところもあるが、力感に溢れ、重い刃物のような鋭さと凄みも感じさせ、
いろんな音がめいっぱいの力感をもって主張し合うところは豪華な食材をこれでもかと、しかも大きな弁当箱にぎっしり詰めたような感さえある。
第2楽章は、がっちりと低音が響き、重みあるものだが、もっと情感と深みに勝る演奏は他にあるだろうし、第3楽章も特別な雰囲気を感じるというものでもない。
終楽章は芝居がかったくらいにゆっくりのソロから始まり、第1楽章ほどではないにせよ十分に豪華であり強い推進力と力感と重い切れ味は保たれ、ときおり見せるティンパニの強打も強烈である。
フィナーレへ向かう追い込み、ティンパニ大活躍のフィナーレとももはやブラームス離れといえるほどに何者かをねじ伏せるがごとく強烈である。
情感とか渋い深みとかはかなぐり捨てて、各楽器の豪華な競演、力感と重量感を重い切れ味たっぷりに、それでいて明るく奏しきった豪演だろうと思う。
重いけれどどこか明るいのはフランスのオケだからなのだろうか。
私の好みとはちがうが、強く豪華なブラームスが好みの方には堪えられない1枚ではなかろうか。

ベートーヴェン 交響曲第7番 クーベリック/バイエルン放送響

2015-10-10 23:25:08 | ベートーヴェン 交響曲第7番
ベートーヴェン
交響曲第7番

指揮…クーベリック
演奏…バイエルン放送響
好み度…5(5点満点)

この曲は1音目の印象がそのままその後の演奏の印象となるケースが結構多いような気がしているが、その1音目は活力あって華やかな響きで入る。
そしてやはりその後も大いに活力があって華やかなベト7である。
重くなく、清清しく内声豊かに音をつくるクーベリックと、やはり清清しい響きのバイエルンの組み合わせは、ある意味でこの曲に合っている。
清清しいが決して軽いわけではない。活気があり、華やかで、内声も華麗で、その明るい力感にあふれる響きには心地よく圧倒される感があり、華麗な内声は楽しいばかりである。
この盤でのバイエルンの響きはいつにも増して輝かんばかりの活力に満ちている。
フィナーレも躍動感十分、フィナーレへ向けての追い込みでは左右からかけあって聞こえるヴァイオリンも華やかに、聴いていて楽しいばかりに締めくくっている。
ケーゲル/SKD盤が剛、デイヴィス/SKD盤が深、ならばこのクーベリック/バイエルン盤は活、の私にとってはこの曲の3大名盤である。