ブルックナー
交響曲第8番
指揮…ハイティンク
演奏…ドレスデンシュターツカペレ
好み度…5(5点満点)
堂々たる大きさ、重み、音の圧、美しさ。
弦は深みを帯びたそれでいて輝かしいばかりの艶をもった響きで鳴り渡り、金管は重く重なり合って十分に咆哮しながら尖らず、ティンパニのここぞでの迫力も十分。
各楽器群はめいっぱい力強く響きながらもそれぞれオケ全体の中でのバランスを知っているかのようにどれが突出しすぎることなく、浮かぶべき音を浮かび上がらせる。
いやぁ、これはすごい盤があったものですね。
ハイティンクというと頑固に無難と真面目を貫く体の大きなどこかのそういうタイプの校長先生のようなイメージがあって、これまでこの人のブルックナーを聴いてこなかったが、考えてみれば余計ないじりをしない実直なスタイルはブルックナーに合っているのかもしれない。
オケのよいところを引き出すことには定評があるようだから、3番のウィーンフィルもオケの美音を堪能する思いがしたし、この盤もドレスデンシュターツカペレってこんな凄い音を出すオケだっけ?と感動に似た思いを受けながら感じたりする。
テンポは急がず変にいじらず、堂々と自然な流れ。ゆったりだが決して弛緩などせず、むしろ一音一音が柔らかく光り輝くような艶と重みを持って、思わずこれを聞き逃しまいとするような緊張感を与えて第1楽章等あっという間の感すらある。圧倒的な重量感と、一音ですら単調になぞらず独特の息遣いを感じるような丁寧な表現力、金管も弦もティンパニもめいっぱい鳴っているようで、しかしきっと極上のバランスをそれぞれが知っていて、どれも効果的に響いてうるさくなく、大きく重く美しい。第1楽章からこんなに圧倒的な演奏があったろうか。
アダージョは静かに光り輝く大海原のように大きく重く美しく、終楽章もファンファーレは重くかっこいいし緊張感は緩まず飽きさせることがない。長い曲だし、終盤に向けて失速しちゃう演奏や逆に尻上がりによくなる演奏もあるが、よく団員の集中力がもったものだと感心する。
テンポはゆっくりだし、全体でとても長いんだけど、最初から最後まで美しさが密度濃くぎゅっと詰まって重くなってるような、圧倒的な大きさと美しさを感じる演奏。こういう演奏を聴くとこの曲が他と一線を画す美しき大交響曲であるとの評も頷ける気がする。
この曲の大名盤と思う。
ブラームス、ベートーヴェン、マーラー…、今までハイティンクの交響曲はしっかりはしているが感銘を受けたことはなかったが、これとウィーンフィルとの3番、特にこの盤は別格となった。