好曲好盤探訪

名曲か、名盤か、というより、個人的好みで好きな曲の好きな演奏との出会いを求めてボチボチと。同じような方の参考になれば

ラフマニノフ ピアノ協奏曲第3番 ティボーデ/アシュケナージ/クリーヴランド管

2015-05-30 23:17:46 | ラフマニノフ ピアノ協奏曲第3番
ラフマニノフ
ピアノ協奏曲第3番

ピアノ…ティボーデ
指揮…アシュケナージ 
演奏…クリーヴランド管 
好み度…5(5点満点)

ピアノもオケも、過度な表現を避け、むしろぐっと表現を抑えているようで、なぜか音に情感がのっている、独特の雰囲気がつくられている、そんな演奏である。
出だしからしてそんな雰囲気を持った演奏で、派手さはないがしっかり弾かれた名盤だと思う。
的確で、それでいて少しも無機的でなく、小さな起伏はきちんとつけながら、騒がず力まず大人のラフ3といった雰囲気で展開していき、大カデンツァへ向かう高揚部と大カデンツァでは、その大人の底力を見せ付けられるかのような迫力に満ち、その後の静けさの中で弾かれる音はまた優しく美しい。第1楽章が終わってみれば、大きなヤマは大カデンツァと決めてかかっていたかのような感さえあり、その分その迫力は際立つ。
第2楽章も叙情性の強調とかとは距離を置いたスタンスのようでいて、どこか人間味のある美しさも漂わせる。
終楽章のピアノは適度な力感をもちつつ、それが重くなったり威圧感になることなく、むしろその力感の中にはピアノの素朴な美しさや暖かさを感じるくらいである。
この演奏中、オケはかなり控えめだが、フィナーレはそれなりに鳴らしている。 
この演奏に大曲感はない。特に力強さを誇示するわけでもラフマニノフの曲が持つ叙情性を強調するわけでもない。
虚飾や余分を捨てて、なお余裕のある大人のような演奏、であり、コンパクトで機能的だが血の通ったぬくもりのある演奏、である。
マツーエフやアルゲリッチなどとは全然違ったタイプの、これも名盤だと思う。
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サン=サーンス ヴァイオリン協奏曲第2番 ヘルシャー/デルヴォー/ニューフィルハーモニア管

2015-05-30 23:13:15 | サン=サーンス
サン=サーンス 
ヴァイオリン協奏曲第2番 

ヴァイオリン…ヘルシャー
指揮…デルヴォー
演奏…ニューフィルハーモニア管弦楽団

好み度…5(5点満点)

この曲、私は名旋律に満ちた名曲だと思う。
第一楽章では、冒頭からそうだが明るく張りのある旋律とオーケストレーションが心地よく(特にこの曲では開放感のある金管の使い方が心地よい)、
第2楽章の一転、ハープに乗って奏される哀愁を帯びた調べや途中の狂おしいばかりの調べもサン=サーンスならではというかヴァイオリンならではというか、なかなか他にはないものだし、第3楽章は第1楽章にも増して明るく開放感ある旋律とオーケストレーションが大変心地よい。
この盤では少し力の入ったヴァイオリンがこの若々しい曲に合っているし、オケのふくよかで透明感のある響きが秀逸。名曲だと思うけど他の盤を聴きたいと思わないほどである。
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ベートーヴェン 交響曲第5番「運命」 チェリビダッケ/ミュンヘンフィル

2015-05-30 23:09:03 | ベートーヴェン 交響曲第5番「運命」
ベートーヴェン
交響曲第5番「運命」

指揮…チェリビダッケ
演奏…ミュンヘンフィル
好み度…3.5(5点満点)

何というか、ベートーヴェンの運命というよりはチェリの運命といえようか。
独自の解釈が随所にあり、いいなぁ、と思うところもある。
第2楽章はちょっと他に類を見ない美しさである。
音は堂々としていて神経の行き届いた一糸乱れぬアンサンブルは、ライブでこれだけの演奏をやってしまうことに演奏の好き嫌いは抜きに感心する。
第一楽章で冒頭の動機の反復がないのにはびっくりさせられた(そういう演奏は初めてだったので。デーヴィスのBBCとの盤とかもないんですね)。
終楽章は反復なしで10分を超えるので、かなりゆったり、また、結構トランペットが強調されている。
とにかく全体としてがっちり統制がとれ堂々としているが熱さは不思議なくらいに感じない。
表現は悪いかもしれないが運命の盤の中では変り種との印象を受ける。
チェリの音楽を聴きたいときにはいいと思うが、これはチェリの運命だな、と思う。
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ブラームス 交響曲第1番 ショルティ/シカゴ響

2015-05-29 23:35:03 | ブラームス 交響曲第1番
ブラームス
交響曲第1番

指揮…ショルティ
演奏…シカゴ響 
好み度…3.5(5点満点)

上手いし縦の線をしっかり揃えて、各パートはしっかり鳴って、かつお互いを邪魔せずに全体として機能的で心地よい響きをつくっている。
優れたアンサンブルである。
歌もそれなりに心地よく歌い、メリハリも適度につけて飽きさせない。フィナーレの凱歌もまさに勝利のファンファーレのようにたっぷりした歌いっぷりである。
ただ、その響きは機能的ではあるが、深みとはベクトルを異にしているように思われ、
歌も心地よいが叙情性となって心に届く類ではないように感じる。
高い技量を持った集団の、質の高い演奏であることは確かだと思うし、好みの問題であり、私にとっては、良質のエンターテイナーの優れたショーを聴く、そんな印象の盤。
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チャイコフスキー 交響曲第5番 ロストロポーヴィチ/ロンドンフィル

2015-05-29 23:30:38 | チャイコフスキー 交響曲第5番
チャイコフスキー
交響曲第5番

指揮…ロストロポーヴィチ
演奏…ロンドンフィル
好み度…4.5(5点満点)

事実としては、とにかくゆっくりとしたテンポである。
躍動感に欠けた冗長な演奏と捉えるか、堂々と、かつ叙情性を湛えた名演と捉えるか、
人によって印象は異なるかもしれない。
私は、この曲が賑やかなだけではなく深い叙情性を湛えた曲であることを表現した、この曲の名盤であると思っている。
演奏時間は約52分と長いが、常に響きに艶と緊張感を保った密度の濃い52分であり、
一音一音への意識が、失礼だがほんとにロンドンフィルかと思うばかりの美しさと緊張感を伴った完成度で表現されている。
他の演奏で聴き慣れた強奏部で、艶と美しさを伴った雰囲気を感じたり、この曲の力強さの中の美しさを表現するためにこのテンポが必要なのだと説得力がある演奏であり、楽章あるいは曲全体を見通しての雄大な起伏も印象的。
2楽章の冒頭も絶品であるし、フィナーレの堂々とした様も爽快である。
こういう重みと叙情性を感じさせるチャイ5は是非あっていいと思うし、
しかし、この曲はアプローチのしかたでいろんな面を見せる曲だな、と改めて思う。
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ベートーヴェン 交響曲第7番 フリッリャイ/ベルリンフィル

2015-05-29 23:22:23 | ベートーヴェン 交響曲第7番
ベートーヴェン
交響曲第7番

指揮…フリッチャイ
演奏…ベルリンフィル
好み度…5(5点満点)

最初の一音から力強く、そしてまさにベートーヴェンといった響き。
これくらい一音一音を強くしっかり音をつくりつつ骨太の流れを感じさせるベト7も他にはないと思われる。
一音一音しっかり弾かれる高弦とうなるかのように響く低弦と、木管やホルンの効果的な重なりがあって、
重厚でいかにもベートーヴェンらしい響きの、ど真ん中の剛球のような実直で力強いベト7である。
そんな中でも木管などによる柔らかさも併せ持ち、各パートが快活な活力を持った重厚さである。
どこか古風であり、快活であり、力強く、木管やホルンのからんだ響きが何ともベートーヴェン的な、
剛毅なベト7の代表格のような名盤といえるのではないだろうか。
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ベートーヴェン 交響曲第6番「田園」 クーベリック/バイエルン放送響

2015-05-23 23:03:23 | ベートーヴェン 交響曲第6番「田園」
ベートーヴェン
交響曲第6番「田園」

指揮…クーベリック
演奏…バイエルン放送響
好み度…5(5点満点)

何と瑞々しく、透明感があって、明るく虚飾のない活力に満ちた響きであろうか。
明るく伸びやかで透明感のあるこのオケの音色と瑞々しく様々な音を重ねられるクーベリックの音づくりがピッタリはまっている。
正直眠くなってしまうことの多かった第2楽章も瑞々しく伸びやかで新鮮な音にあふれているし(小川の情景だからといってひっそりやらずにこれくらい伸びやかにいろんな音が出入りすると結構聴き応えのある楽章であることに気がついた)、嵐も十分に激しく、終楽章は喜びがあふれ出るかのような、瑞々しく清らかで活力に満ち溢れた弦の響きであり、最後の高揚部も力があって美しい。
田園ではあるが終わったときには即「ブラボー」と叫びたくなるような、純粋で輝くような、田園の名盤である。
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ブラームス 交響曲第4番 アバド/ベルリンフィル

2015-05-23 22:57:07 | ブラームス 交響曲第4番
ブラームス
交響曲第4番

指揮…アバド
演奏…ベルリンフィル
好み度…4.5(5点満点)

何とも分厚いブラ4。
出だしは潤いのある弦の響きと謳い方でなかなか情緒的。
その後も重厚に、輝きと少しの哀愁とを湛えて重なり合う弦は厚く美しい。
第2楽章での弦の厚い美しさは一種迫力を感じるほどでもある 
全編の印象として金管はどちらかといえばやや控えめ、木管は優しく深みを添え、迫力あるほどに重厚でかつ暗くならない弦楽器中心の厚く豊かなアンサンブルが印象的な、いかにもこのコンビらしい演奏。
ほのかに叙情的でもあり、厚く美しい演奏だと思う。
この曲はクライバー盤等が有名なようだが、これは立派な名盤だと思う。 
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ラフマニノフ ピアノ協奏曲第3番 アシュケナージ/プレヴィン/ロンドン響

2015-05-23 22:53:16 | ラフマニノフ ピアノ協奏曲第3番
ラフマニノフ
ピアノ協奏曲第3番

ピアノ…アシュケナージ
指揮…プレヴィン
演奏…ロンドン響
好み度…3.5(5点満点)

音色や歌のはっきりした良版ではあると思うが、良くも悪くもCDの帯にある「映画音楽そのもの」との表現にまさに納得の演奏と思う。
全体の印象も明るめであり、音色は厚く明瞭でたっぷり歌い、鳴らしどころはしっかり鳴らしてきかせどころもわかりやすくとっつきやすいが、どこか深みに欠ける印象とでもいおうか。
音質がやや固めのせいもあるかもしれない。
アシュケナージにしかない叙情性も希薄な印象である。
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ラフマニノフ ピアノ協奏曲第3番 アルゲリッチ/シャイー/ベルリン放送響

2015-05-21 23:23:52 | ラフマニノフ ピアノ協奏曲第3番
ラフマニノフ
ピアノ協奏曲第3番

ピアノ…アルゲリッチ
指揮…シャイー
演奏…ベルリン放送響
好み度…4.5(5点満点)

併録のコンドラシンとのチャイ1があまりに有名だが、個人的にはどちらかといえばこちらのほうを推したい。
出だしから何か雰囲気があり、瑞々しく回転の速いアルゲリッチのピアノは適度な力感も伴って快演の予感を感じさせる。
シャイーとベルリン放送響のオケも、ついていけていない、などの声も聞くが、そうとも思われず、出だしの低弦の響きなど、この演奏に聴くものを引き込んでいくような響きである(この低弦の響きは全編にわたって印象的でこの演奏によい雰囲気を与えていると思う)。
アルゲリッチのピアノは滴る水滴のような瑞々しさと激しい情を同居させながら、
重くならず暗くならず、緊張感に満ちた、美しくも激しく鋭いラフ3の雰囲気をつくっている。
ここではロシア的かどうかは関係ないように思える。
カデンツァは大カデンツァではないが、重厚長大な雰囲気の演奏ではないので、むしろこちらのほうが合っている気もする。
第1楽章は高い緊張感のもと、息をのむ激しさと美しさの連続、2
第2楽章ではピアノの入り等で劇的な側面も持たせているのも印象的。
終楽章も激しさと美しさは健在のまま燃焼度高くこの曲を締め括っている。
ロシアの風景とか関係なく、大曲然とさせることもなく、むしろ熱さをコンパクトに集約して、類まれな緊張感と燃焼度を以って駆け抜けた名演奏だと思う。
これだけの熱さと完成度を同居させたライブ演奏というのもそうはなかろうかと思う。録音も優秀。
瑞々しいばかりの美しさと、同居する激しさ、アルゲリッチの魅力を感じられる1枚であり、この曲の名盤でしょう。
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