好曲好盤探訪

名曲か、名盤か、というより、個人的好みで好きな曲の好きな演奏との出会いを求めてボチボチと。同じような方の参考になれば

ベートーヴェン 交響曲第3番「英雄」 若杉/シュターツカペレドレスデン

2021-09-26 12:05:38 | ベートーヴェン 交響曲第3番「英雄」
ベートーヴェン 
交響曲第3番「英雄」

指揮…若杉 
演奏…シュターツカペレドレスデン 
好み度…5(5点満点)

ケルン放送響との盤がよかったと思ったら、シュターツカペレドレスデンも振ってたんですね。
というよりこのオケの常任だったって、すごいことですね。
演奏はケルン放送響との録音の8年後、ケルン放送響との盤がライブでこちらはセッション。
ライブかどうかの違いなのかオケの違いなのか、ケルン放送響との演奏に熱気とか迫力という点で分があり、完成度とか洗練味という点でこちらに分がある、といったところか。
小細工無しにこのオケの美音を活力も十分に引き出していると思われ、その響きはルカ教会での録音という影響もあるかと思うが低弦やエッジの効いた迫力の響きというよりは、やや高音寄り残響多めで、しかし輪郭があいまいになったりせずほのかに深みも帯びて美しい。
明るく活力のある英雄をオケと自然な一体感を示しつつ美しく伸びやかに謳った英雄であり、特に特徴めいたものは感じないが流麗なだけの凡演との印象にならず、いい音でいい音楽を聴いたといった爽快感を受けるのはその闊達なおおらかさと美しい響き故だろうか。
同じオケのデイヴィス盤と比べても、あちらが渋みの効いた艶と力を感じさせるのに対し、こちらは輝くような明るさと活力を感じさせるようで、溌剌とした明るい活力に満ちた美しい英雄である。

ベートーヴェン 交響曲第3番「英雄」 ヨッフム/ロンドン響

2021-08-07 21:24:18 | ベートーヴェン 交響曲第3番「英雄」
ベートーヴェン 
交響曲第3番「英雄」 

指揮…ヨッフム
演奏…ロンドン響
好み度…4.5(5点満点)

伸びやかでおおらかなスケール感を感じさせる。
程よい重厚感と推進力も併せ持ち、明るく力強い雄大な英雄といえようか。
響きには結構深みも感じられる。
巨匠然とか威圧的なものは感じないが、自然な威風堂々たる雰囲気があって、フィナーレだけちょっと軽めだけど、まぁ立派な演奏でしょう。

ベートーヴェン 交響曲第3番「英雄」 フルネ/東京都響

2021-06-26 15:56:44 | ベートーヴェン 交響曲第3番「英雄」
ベートーヴェン 
交響曲第3番「英雄」 

指揮…フルネ
演奏…東京都響
好み度…5(5点満点)

何を煽るでもことさら誇張するでもない。
全楽章ともゆっくりめのテンポで何気なく流れるようでその音楽は何とも心地よい。
気品と風格を漂わせた古典の風雅、とでも言えばよいのだろうか。
ことさらに重さや力感とか快活とかは感じさせないが低弦がしっかり響いて重心の低いどっしりした感覚を与えつつ、内声が豊かによく聴こえ、しかし聴かせたい音は自然に前に出てきてその内声の聴かせ方がまた心地よく、かつ和音のバランスも崩さない。
都響のいぶしたような古風な音色もこの演奏に合っている。
第2楽章の古風な重みは最近ではちょっと珍しいようにも思うし、ときにただ流れてしまう演奏もある終楽章もゆっくり目にとったテンポによって弦の重なりの妙とか風格とかが感じられるようで充実。
ゆっくり目のテンポと渋みを帯びた都響の響きや弦と金管と木管のバランスのとれた和音はよき古典の趣を感じさせ、豊かな内声とその出し入れは華あるいは雅を感じさせて、虚飾や派手を排して、どこか朴訥として豊かな、聴けば聴くほど、の味わいを持った名演の類ではなかろうかと思う。

ベートーヴェン 交響曲第3番「英雄」 ヘルビヒ/ベルリン響

2021-06-12 21:15:02 | ベートーヴェン 交響曲第3番「英雄」
ベートーヴェン 
交響曲第3番「英雄」

指揮…ヘルビヒ 
演奏…ベルリン響 
好み度…4.5(5点満点)

響きが、いい。教会で録ったのではないかと思われるような録音の影響もあるかと思うが、透明感のある厚みは、開放感のある大きさと清らかな雰囲気を感じさせ、欲を言えばもうちょっと決め所でティンパニがもうちょっと強く決まっても、とも思うが、各楽器のバランスもとてもよく感じられる。おおらかな大きな流れを感じさせる運びで、ベルリン響の響きもアンサンブルもよく厚く美しい。
12年後にロイヤルフィルとの録音があり、どちらも重厚と言うよりは明るく華やかな、しかし軽くない雰囲気といった点は共通していて、世評も同じくらいに好意的なようだが、響きに感じられるわくわくさせられるような覇気、明るく強くおおらかな大きさ、私にはこちらがいい。
重心の低い重厚な英雄を求めるなら別の盤だろうが、明るく大きく颯爽とした推進力を感じる、何度聴いてももたれたり飽きたりすることのない、隠れた名盤的な盤ではなかろうか。

ベートーヴェン 交響曲第3番「英雄」 クーベリック/ウィーンフィル

2021-05-16 15:10:45 | ベートーヴェン 交響曲第3番「英雄」
ベートーヴェン 
交響曲第3番「英雄」

指揮…クーベリック 
演奏…ウィーンフィル
好み度…5(5点満点)

硬派で、ほの暗くがっちりした重みをもった強烈な響きの英雄。
クーベリックとバイエルンに聴かれるような明るさや透明感はなく、ウィーンフィルに特有の軽妙な気品を帯びた艶はない。
その響きは明るさや流麗ではなく、硬い重さとほの暗さを帯び、第1楽章等硬骨な大きさと、ときに悲痛な叫びを響かせているようであるし、終楽章の重い影を思わせるような力強さと大きさはなかなか聴かれないもののように思う。
テンポはゆっくりで第1楽章の反復無しで約56分、流麗さはないが曲全体の中で「ここ」と決め打ちされたような強奏部での迫力は印象的で、随所での金管の響きは圧するような重さと大きさとときに切迫感を持つ。ここで聴かれるほの暗くも美しく不調和すれすれのような重量感もウィーンフィルならではかもしれない。
一聴クーベリックとウィーンフィルの両者のよさが出ていないように思えるが、そういう先入観をリセットして聴けば、これくらいほの暗い硬骨な重みと大きさと情感を感じさせる英雄も稀有なのではないだろうか。
全集のベルリン盤と同じ年のライブのようだが、同じ指揮者が同じ年に同じ曲をやって、こうも違うものか(全集が悪いというのではない、タイプが違うという意味で)とも思う。

ベートーヴェン 交響曲第3番「英雄」 ケーゲル/ライプツィヒ放送響

2021-03-20 16:21:44 | ベートーヴェン 交響曲第3番「英雄」
ベートーヴェン 
交響曲第3番「英雄」

指揮…ケーゲル 
演奏…ライプツィヒ放送響 
好み度…5(5点満点)

太い。そして、ゆっくりやっているわけではないがほのかに大きい。
金管とか何となく危なっかしいし(ただそれは前半だけかな。後半はむしろいい雰囲気を醸している)、完成度を褒めるような演奏ではないし、絹のような艶が響きにあるわけでもないけれど、不器用ではあるかもしれないが実直で力の込もった熱を感じるようで、いい。
木管がいい感じでおおらかにからんだり弦にせよ金管にせよ低い音がどっしり響いていたり、ティンパニも結構重く力強かったり、全体でときに厚く深みのある響きをつくったり、聴かせどころでは濃い情感と熱い重みが迫るような感を受けたり、武骨ではあるがこのコンビならでは雰囲気をつくって、ケーゲルならでは感銘が感じられる名演のように思う。
今風の演奏とは対極にあるような、ざらついているが、熱を帯びて鈍く光る重金属のような、実直で太く熱い、ケーゲルらしさを求めて裏切られない盤と思う。

ベートーヴェン 交響曲第3番「英雄」 ジョルダン/ウィーン響 

2020-10-11 12:02:43 | ベートーヴェン 交響曲第3番「英雄」
ベートーヴェン 
交響曲第3番「英雄」 

指揮…ジョルダン
演奏…ウィーン響 
好み度…4(5点満点)
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新鮮味があって面白い。それとウィーン響ってこんなに機能的で張りと艶に満ちた弦の響きだったかな、とも思う。ホールもいいのかな(ムジークフェラインでのライブ録音とのこと)。
演奏は結構快速(第1楽章反復ありで46分46秒)。けど古楽器風でなく、活力と緊張感に満ちた響きと自在の緩急で、快速な中にフルオケならではの力強さとメリハリの効いた十分な表現付けがあって、速い中にしっかり歌も感じる。
解説等に「終楽章が最大のクライマックス」というほどには終楽章に特別なものを感じることはない(前半はいいんだけど。後半を特に力強く盛り上げてないように感じられるのはあえてなのかな…)し、大きさや重さを感じる演奏ではないが、輝くようなウィーン響の響きと自在で思い切りのよい活き活きとした緩急が新鮮爽快な、明るい覇気に満ちた快演。特に第1楽章がいい。

ベートーヴェン 交響曲第3番「英雄」 ラトル/ウィーンフィル

2020-07-24 14:27:11 | ベートーヴェン 交響曲第3番「英雄」
ベートーヴェン 
交響曲第3番「英雄」

指揮…ラトル 
演奏…ウィーンフィル
好み度…4(5点満点)

小編成風、テンポは速め。ちょっと新鮮なウィーンフィルではあるし、むしろ小編成風の雰囲気で気品とうまさをより感じるようなところもあるが、個人的な好みからはやっぱりちょっと軽いかな、という感を感じる。
とはいえ良好な録音も相まって、このうまさと綺麗な音の重なりや響きの艶、これらひっくるめての新鮮さは捨て難く、軽妙なタイプの英雄の代表として聴くこともあるかな、といったところ。

ベートーヴェン 交響曲第3番「英雄」 ティーレマン/ウィーンフィル

2020-07-11 17:47:28 | ベートーヴェン 交響曲第3番「英雄」
ベートーヴェン
交響曲第3番「英雄」

指揮…ティーレマン 
演奏…ウィーンフィル
好み度…4.5(5点満点)

何でかわからないが響きはどこか眠たげではあるが、それでもやっぱり古風な気品と重みと大きさを漂わせながら高い完成度も感じさせるいい響きである。
ウィーンフィルもやっぱり美しいと思うし、ゆったり重めの流れに細かくテンポを動かした情感豊かな味付けも好感が持てる。
ゆったり大きく構えつつ、重さというよりはどこか優雅な気品を感じさせ内声も結構豊か。
少し眠たげではあるが今どき珍しい古風な大きさを演出しようとする、まぁこの人らしい演奏のように思うし、個人的にはいまどきやはりこういう重厚(ともちがうんだけど)長大系の演奏をしてくれる指揮者がいてくれるのはいいことだとも感じる。
特に終楽章での弦の美音を中心とした気品ある風格を漂わせた響きはウィーンフィルならではの感も受ける。
いろいろな感想はあろうが、やっぱり上質のいい演奏であることに間違いはないと思う。

ベートーヴェン 交響曲第3番「英雄」 ショルティ/ウィーンフィル

2020-06-27 16:32:40 | ベートーヴェン 交響曲第3番「英雄」
ベートーヴェン
交響曲第3番「英雄」

指揮…ショルティ 
演奏…ウィーンフィル 
好み度…4(5点満点)

かっちりよくまとまって、引き締めるような低弦も含めよく鳴って、どちらかといえば歯切れのよい颯爽とした力強さを感じさせるショルティらしい隙のないよい演奏のように思う。
ウィーンフィルの響きもなかなかに力強くも美しい。
シカゴ響との録音より少し熱を感じるようであるが、それでも充実しつつも情を織り込まず、力強く華麗ではあるが感銘の余韻は残さないのもまたショルティらしい。
英雄の入門であるようで、あるタイプの完成形でもあるような、やっぱり流石の演奏ではあるように思う。