生命哲学/生物哲学/生活哲学ブログ

《生命/生物、生活》を、システム的かつ体系的に、分析し総合し統合する。射程域:哲学、美術音楽詩、政治経済社会、秘教

オオシモフリエダシャクの工業暗化 捏造? 1

2010年07月08日 12時01分18秒 | 生命生物生活哲学
2010年7月8日-3
オオシモフリエダシャクの工業暗化 捏造? 1

 どういうわけか、2010年7月4日から、

Majerus, M.E.N. 1998. Melanism: Evolution in Action. xiii+338pp. Oxford University Press. [W980716, y13860]

の、
第6章 The peppered moth story dissected(pp.116-156, color plates 1-8)
   [直訳:胡椒を降りかけられた蛾の物語を解剖する]
   [プログレッシブ和英中辞典では、霜降りの pepper-and-salt ((cloth))とあるので、
    やや意訳:霜降り蛾物語を解剖する〔むろん、解剖は比喩的に言っているので、著者がやっていることは、辞書訳語にもあるように、分析〕]

を(間欠的に)読んでいる。ようやく、鳥の視覚は人と違って四色型であることや紫外線領域での解像度は高いだろうといったことが述べられた後の、136頁からのOther factors pertinent to melanism in the peppred moth という節へ突入(むろん、本の中へ物理的に突入したわけではありません)。
 なお、本の第5章は The peppered moth story(pp.97-115)。

 この本の出版は1998年だから、その後の展開はどうなっているのだろうと思って、webcatで「Melanism」で検索すると、(Majerus (1998)の所蔵図書館数は7箇所(も?、しか?)あった。某大学図書館にも所蔵されているが、webcatには登録されていないということになる)、それより後の本は無く、1998年に直近の本は、

Kettlewell, Bernard. 1973. The evolution of melanism : The study of a recurring necessity; with special reference to industrial melanism in the Lepidoptera. xxiv+423 pp. Clarendon Press.

となっていた。

 で、
  「オオシモフリエダシャク 工業暗化」
でgoogleと、約 489 件 (0.09 秒)で、検索結果の一位は、「オオシモフリエダシャクのウソ」と題する記事であった。
http://www.sacra.com/bible/cre/creation/ooshimo.htm
というサイトの記事は、伊勢崎キリスト福音館が作ったものらしいが、「青年会で使ったプリントの一部抜粋・改変」とある。
 「高校の教科書では進化論の一つの証明として蛾のなかまのオオシモフリエダシャクの工業暗化が書かれています。……オオシモフリエダシャクの例を持ち出して来ることは多くの誤りを含んでいます」と言う。

  「一つはもともと黒いものと白いものと両方が生存していた、という事実です。つまり進化も何もしていないということです。ただ今まで多かったのが白いものだったのが黒いものに変化しただけということになります。」

 「もう一つの大きな誤りを紹介します」として、
Photo by David Fox/Oxford Scientific Films
を掲げ、「これが黒のオオシモフリエダシャク」、「これが白のオオシモフリエダシャク」と矢印で蛾の位置を示している。
 [進化論で一般にいわれていること]を、わたしによって簡略化すると、

  マンチェスターでのオオシモフリエダシャクの暗色型の割合
   1848年  わずかな割合
   1898年  95%
  原因:
   「煤煙などにより環境全体が黒っぽくなり、樹木にとまった場合に捕食者にみつかりにくくなった。そのため自然淘汰に有利な種となり急激に増加することになった。」

 「有利な種」と記載した文献は何だろうか? おそらく、「種」とはしていないと思う。もししていたら、間違った紹介と言うべきだろう。

 一方、[最近わかったこと]は、

  「オオシモフリエダシャクはこのように簡単に観察できるものではない。20年にわたってこの蛾のことを研究してきた科学者は20年間に野生のオオシモフリエダシャクを数匹しか観察していない。それではそうやってこの写真を撮ったかが問題である。当時この写真が公開されたとき、写真にはオオシモフリエダシャクが5匹ほど写っているものである。(教科書に載っているもの) 驚くべきことに、この写真は実験室で飼育されていたオオシモフリエダシャクの死骸を接着剤で木の幹に貼り付けたのを撮った。」

としている。

系列/系譜/系図

2010年07月08日 10時41分16秒 | 生命生物生活哲学
2010年7月8日-2
系列/系譜/系図

 一個体(一性生殖〔無性生殖と呼ぶ人もある〕)または二個体(二性生殖)あるいはn組からの2個体以上の親(n性生殖)から、親子関係(これはforceではない。親子関係とは、forcesの結果をわれわれの想像力によって構築したものである)によって繋がらせた生物体たちを指して、系譜 lineageと(仮に)呼ぶことにする。

 プログレッシブ和英中辞典には、「直系の」は、linealとある。また、
  直系の子孫 a direct descendant
  直系血族 a lineal relation
  直系尊[卑]属 a lineal ascendant [descendant]
とある。混乱を避けるために、

  系譜
   系譜の一部
  系列
   系列の一部
  部分系譜
   部分系譜の一部
  完全系譜
   完全系譜の一部

をきちんと定義しよう。
 たとえば種タクソンは、系列や系譜には、少なくとも直接的関係は無いから、やはり、これら無しで済ませるのが得策か。

生物学的周期性/タクソン学

2010年07月08日 09時49分35秒 | 生命生物生活哲学
2010年7月8日-1
生物学的周期性/タクソン学

 2010年7月7日、梅田で本を2冊買ってしまった。
 一つは、
[H]
本多久夫.2010.5.形の生物学.372pp.日本放送出版協会.
[ISBN 9784140911563 / y1,470] [B20100707]

 157頁からの3.1節は、「細胞は集まって自分たちだけで形をつくる」と題されている。
 自己集成self assemblyという概念が理解できないでいるので、手がかりがあるかもしれない。
  自己とは何か?(「自分たちだけで」)
  作用の(種類と程度の)分析(「集まって」)
  自己集成とは?(「自分たちだけで~をつくる」)
  発生と形態(「自分たちだけで形をつくる」)

 もう一つの本は、

リマ・デ・ファリア,アントニオ.1995.(土明文訳/松野孝一郎監訳 2010.3)生物への周期律:自然界のリズムと進化.442[+2]pp.工作舎.[ISBN 9784875024262 / B20100707=y5,040] [Lima-de-Faria, A. 1995. Biological Periodicity: Its Molecular Mechanism and Evolutionary Implications. JAI [Jai?] Press.]

 直訳すれば、「生物学的周期性:それの分子的メカニズム〔機構〕と進化的含意」。

  「リマ・デ・ファリアが周期律の考え方を生物に適用しようとしたのは、年代を隔てて現〔わ〕れることになる、同じような生物機能を指してのことである。」(松野孝一郎 440頁)。

 松野孝一郎氏の監訳者あとがき「積極的な欠如」(438-442頁)に、
  有翅昆虫の出現     3億1000万年前  一部生残
  プテロサウルスの出現  2億3000万年前  絶滅
  コウモリの出現       4000万年前  生残

と表化できるような記述がある。
 無脊椎動物、爬虫類、そして哺乳類というタクソン上での比較が公平でない。プテロサウルスの子孫は鳥となっているとすれば(タクソン学的には、鳥類+爬虫類として比較すると)、絶滅していない(もっとも、生命は一つなので、何者も絶滅していない。プテロサウルスの系列[狭義でのlineage=親子関係のみでいわば単線的に結んだ生物体たち(これは、実在するシステムreal systemではなく、親子関係という、諸作用の結果(種システムの産出メカニズムが作動した結果)を概念的に表現したもの、つまり概念であるから構築体である。実在物ではない)]が鳥にならなかったとしても、少し系列を時間的にさかのぼれば、鳥類となったどれかの系列に繋がるはず[繋がると前提するのが、そのような一つの仮定を設定した上での進化理論。それを前提としない進化理論を立てて、相互排除的な諸進化理論を網羅分類的に立てれば、いわゆるダーウィン的進化論(これはすでに過剰に鵺的だが)をテストできるだろう)。もっともタクソン上か、それとも種数で比較するかの問題もある。
 魚類のトビウオがいるな、と思った(大昔、青海島付近の海上を飛行するいつくかのトビウオを船上から見た。10mくらいはバタバタとしながら飛ぶことに感心した)。パラパラと本文をめくると、49頁に図6として、2枚翼のトビウオと4枚翼のトビウオの図があった(昆虫での翅の類推(双翅目Dipteraを考えよ)からすると、発生的には4枚翼のほうが先で、2枚翼は抑制的制御で出現した??)。

  「われわれの言語慣習の枠内では、因果律の適用に抗しがたい魅力を覚えながら、それを分析的に理解する限り、導かれるのは、結果は原因と恒等である、とすることのみである。」(松野孝一郎 442頁)。

 分析的って、総合的の反対の意味で?。
 「結果は原因と恒等である」とは? 法則の存在論的地位は? 法則性と契機との関係は? 縁起論。


[L]
Lima-de-Faria, A. 1988. Evolution Without Selection: Form and Function by Autoevolution. xxvi+372pp. Elsevier. [hb=y29664]
[リマ・デ・ファリア,A.1988.(池田正子・法橋 登訳,1993)選択なしの進化:形態と機能をめぐる自律進化.468pp.工作舎. [B19940704 y4,650*, y5,500]]

*Lima-de-Faria, A. 1995.12. Biological Periodicity: Its Molecular Mechanism and Evolutionary Implications. JAI [Jai?] Press. [ISBN 9781559384124]
[リマ・デ・ファリア,アントニオ.1995.(土明文訳/松野孝一郎監訳 2010.3)生物への周期律:自然界のリズムと進化.442[+2]pp.工作舎.[ISBN 9784875024262 / B20100707=y5,040]]

*Lima-de-Faria, A. 1997. The atomic basis of biological symmetry and periodicity. Biosystems 43: 115?135.