2011年1月5日-5
システム主義、システム的アプローチ systemism, systemic approach
マーナ & ブーンゲ流のシステム主義は、
「全体の存在を認めつつも,構成,環境,そして構造によって分析する.1.7.2節のCES分析という概念を思い出してほしい.生態学における最近のシステム主義擁護論についてはTuomivaara 1994を見よ.)」(マーナ & ブーンゲ『生物哲学の基礎』訳書第5章、224頁)。
システム主義の中心的な存在論的テーゼ〔論証されるべき命題または措定。定立。〕とは、
「
『あらゆる物は他の何かと繋がれている』
(Every thing is connected to some of other thing(s))
」マーナ & ブーンゲ『生物哲学の基礎』訳書第5章、224頁)。
であり、これは、
「あらゆるものは他のあらゆるものと繋がれている
(Everything is connected to everything else)
という全体論的テーゼよりも,はるかに弱い主張」(224頁)
である。
システム主義は、認識論的には,反分析的ではなく、CES分析またはCESM分析と名づけて、システムを、その構成要素、その構造(要素または下位システム間の関係)、その環境、そしてその機構 mechanism を同定することによって、分析していく。
しかし、
1. <あらゆる物事(=ものとこと)は、他のあらゆる物事と繋がれている>という存在論と、
2. <或る物は、他の有限個の何かと繋がれている>という認識論的方法、
を採用するほうが、scope (視程、射程)を広くできる。
「或る物(=システム)」と言えるのは、この世界の残余のものから、なんらかの関心または興味によって、認識上の便宜から(物理的にあるいは心理的に)取り出したものである。なんらかの境界を定めているのであって、そのことは、<あらゆる物は、他の何かと繋がれている>という存在論的仮定と矛盾するわけではない。
或る物と他の或る(それこそ無数個のような)物が、なんらかの関係を持つかどうかは、認識的または実践的に、或る関心のもとに決定することである。したがって、マーナ & ブーンゲ『生物哲学の基礎』の採用する、<あらゆる物は、他の何かと繋がれている>は、むしろ強い規定である。というのは、繋がり度がゼロの場合を含めるようにすれば、<あらゆる物事(=ものとこと)は、他のあらゆる物事と繋がれている>は、<あらゆる物は、他の何かと繋がれている>を含むことになる。そうしておいて、この世界について実際に観測して、どうであるかを主張または決定すればよいことである。
したがって、存在論的には、
1. あらゆる物事は、他のあらゆる物事と繋がれている。
を採用する(つまり、そのように<仮定>する)。
そして、(いわゆる超能力者はさておき)われわれの現在の認識装置は無限個の対象を認識できないようであり、また、(現在のところ)実践的にも時間は限定されているので、あらゆる物事を対象範囲とすることはできない。そして、対象を操作したり加工する上でも、通常は時間および空間規模の小さい局所的な相互作用によるほかないから、認識的に、
2. 或る物事は、他のいくつかの物事と繋がれている。
とするのが、得策であろう。むろん、或る物事が他のどれだけの種類と個数の物事と繋がれているかは、その物事の何を問題とするかという関心に依存する。
このように考えれば、存在論的仮定において、システム主義と全体論は同一にできる。違いは、対象への接近方法であり、全体論は全体としての存在をいわば尊重して、分析を適用しなかったのだと思う。
おそらく全体論ではこれまで有効な分析的方法を提供しなかったこと、また、統合する方法も提供しなかったことではないか、と思う。
では、フォン・ベルタランフィ Bertalanffyが主導したシステム論の運動成果はどうだったのか? フォン・ベルタランフィ自身が、総合のたは統合の方向への無成果をぼやいているのである(フォン・ベルタランフィ 訳書1973 ***頁)。
あるゆる対象は、(広義の)システムである。こうみなして、システム的アプローチをなにごとに対しても適用するのが、システム主義である。
[V]
von Bertalanffy, L. 1969(1971). General System Theory: Foundations, Development, Applications. Revised Edition. xxiv+295pp. George Braziller.
フォン・ベルタランフィ,ルートヴィヒ.(長野敬・太田邦昌訳 1973.1).一般システム理論:その基礎・発展・応用.[von Bertalanffy, Ludwig. 4622025221]
=== 続く。
備忘録
或る対象は、なんらかの種類と程度において、複雑である。→複雑度の測度(ゲルマン『**』の議論)。
全体性の問題。統一力=制御者の存在。→レベル構造の導入。階層の同定。入れ子構造との差異。
システム主義、システム的アプローチ systemism, systemic approach
マーナ & ブーンゲ流のシステム主義は、
「全体の存在を認めつつも,構成,環境,そして構造によって分析する.1.7.2節のCES分析という概念を思い出してほしい.生態学における最近のシステム主義擁護論についてはTuomivaara 1994を見よ.)」(マーナ & ブーンゲ『生物哲学の基礎』訳書第5章、224頁)。
システム主義の中心的な存在論的テーゼ〔論証されるべき命題または措定。定立。〕とは、
「
『あらゆる物は他の何かと繋がれている』
(Every thing is connected to some of other thing(s))
」マーナ & ブーンゲ『生物哲学の基礎』訳書第5章、224頁)。
であり、これは、
「あらゆるものは他のあらゆるものと繋がれている
(Everything is connected to everything else)
という全体論的テーゼよりも,はるかに弱い主張」(224頁)
である。
システム主義は、認識論的には,反分析的ではなく、CES分析またはCESM分析と名づけて、システムを、その構成要素、その構造(要素または下位システム間の関係)、その環境、そしてその機構 mechanism を同定することによって、分析していく。
しかし、
1. <あらゆる物事(=ものとこと)は、他のあらゆる物事と繋がれている>という存在論と、
2. <或る物は、他の有限個の何かと繋がれている>という認識論的方法、
を採用するほうが、scope (視程、射程)を広くできる。
「或る物(=システム)」と言えるのは、この世界の残余のものから、なんらかの関心または興味によって、認識上の便宜から(物理的にあるいは心理的に)取り出したものである。なんらかの境界を定めているのであって、そのことは、<あらゆる物は、他の何かと繋がれている>という存在論的仮定と矛盾するわけではない。
或る物と他の或る(それこそ無数個のような)物が、なんらかの関係を持つかどうかは、認識的または実践的に、或る関心のもとに決定することである。したがって、マーナ & ブーンゲ『生物哲学の基礎』の採用する、<あらゆる物は、他の何かと繋がれている>は、むしろ強い規定である。というのは、繋がり度がゼロの場合を含めるようにすれば、<あらゆる物事(=ものとこと)は、他のあらゆる物事と繋がれている>は、<あらゆる物は、他の何かと繋がれている>を含むことになる。そうしておいて、この世界について実際に観測して、どうであるかを主張または決定すればよいことである。
したがって、存在論的には、
1. あらゆる物事は、他のあらゆる物事と繋がれている。
を採用する(つまり、そのように<仮定>する)。
そして、(いわゆる超能力者はさておき)われわれの現在の認識装置は無限個の対象を認識できないようであり、また、(現在のところ)実践的にも時間は限定されているので、あらゆる物事を対象範囲とすることはできない。そして、対象を操作したり加工する上でも、通常は時間および空間規模の小さい局所的な相互作用によるほかないから、認識的に、
2. 或る物事は、他のいくつかの物事と繋がれている。
とするのが、得策であろう。むろん、或る物事が他のどれだけの種類と個数の物事と繋がれているかは、その物事の何を問題とするかという関心に依存する。
このように考えれば、存在論的仮定において、システム主義と全体論は同一にできる。違いは、対象への接近方法であり、全体論は全体としての存在をいわば尊重して、分析を適用しなかったのだと思う。
おそらく全体論ではこれまで有効な分析的方法を提供しなかったこと、また、統合する方法も提供しなかったことではないか、と思う。
では、フォン・ベルタランフィ Bertalanffyが主導したシステム論の運動成果はどうだったのか? フォン・ベルタランフィ自身が、総合のたは統合の方向への無成果をぼやいているのである(フォン・ベルタランフィ 訳書1973 ***頁)。
あるゆる対象は、(広義の)システムである。こうみなして、システム的アプローチをなにごとに対しても適用するのが、システム主義である。
[V]
von Bertalanffy, L. 1969(1971). General System Theory: Foundations, Development, Applications. Revised Edition. xxiv+295pp. George Braziller.
フォン・ベルタランフィ,ルートヴィヒ.(長野敬・太田邦昌訳 1973.1).一般システム理論:その基礎・発展・応用.[von Bertalanffy, Ludwig. 4622025221]
=== 続く。
備忘録
或る対象は、なんらかの種類と程度において、複雑である。→複雑度の測度(ゲルマン『**』の議論)。
全体性の問題。統一力=制御者の存在。→レベル構造の導入。階層の同定。入れ子構造との差異。