2011年1月11日-1
タクソンとニッチ(1)
■ タクソンの定義
■ (種タクサの定義)
■ 種概念(の定義)と現実タクサの定義との関係
Mayr & Ashlock (1991)のtaxonの定義が述べられているはずのところは、索引によれば、p.20とp.116である。
まず、p.20では、
「bluebirds〔ルリコマドリ〕、thrushes〔ツグミ〕、songbirds〔鳴き鳥〕、そしてvertebrates〔脊椎動物〕というwords〔語、言葉〕は、有機体〔生物体〕の集団〔グループ〕を指す。動物学的分類のこのような具体的な対象 objects は、タクサ taxa である。〔或る一つの〕タクソン a taxon とは、Simpson (1961: 19)によって、『階層的分類のどのレベルのものでも、公式的単位として認識される実在する有機体〔生物体〕の集団である』と定義されている。同じ考えは、次のように表現され得るだろう。すなわち、
A taxon is a named taxonomic group of any rank that is considered sufficiently distinct by taxonomists to be formally recognized and assigned to a definate category.
タクソンとは、どの位階 rank であれ、タクソン学者〔分類学者〕によって、公式に認められ、かつ、或る明確な〔一定の;definite〕カテゴリーに割り当てられるほどに、十分に区別される〔明瞭な、別個の;distinct〕と熟考されて、命名されるタクソン的集団である。」(Mayr & Ashlock 1991: 20;試訳)。
〔わが見解:
1. taxonomistsではなく、人 humansで良いだろう。
2. a named taxonomic groupではなく、a named group で良い。taxonomicを入れたら、定義項に被定義項が入っているようなもの。
3. もし、「それ」と指すことができるものならば、命名されていなくとも良い。もちろん、Mayr & Ashlockは命名規約に認められた、つまり公式に命名されたものだけが、タクソンだと言っているわけだが。〕
bluebirdsやvertebratesは英語の語であり、英語圏社会では日常語である。bluebirdsと複数形なので、数えることができるものだと解釈できる。タクソンを『意味』しているとも取れる。
続く段〔段落;paragraph〕は、
「二つの側面が強調されなければならない。_タクソン_という用語はつねに、具体的な対象を指す〔指示する;refer to〕。ゆえに種 the species は、一つのタクソンではなく、一つのカテゴリーである。たとえば、the robin 〔ヨーロッパコマドリ〕(_Turdus migratorius_) は一つのタクソンである。次に、タクソンは、タクソン学者〔分類学者〕によって公式に認めら〔認識さ〕れなければならない。」(Mayr & Ashlock 1991: 20;試訳)。
問題は次の段の主張である。
「タクサは、クラスではなく、哲学者たちが個体〔個物;individuals〕または特殊者 〔特称者;particulars〕と呼ぶものである。これはすべての(狭義での)生物個体群 biopolulationsを含む。それらは、内的な凝集性と、第2章で論議されるが、種の存在論についての他の側面によって特徴づけられる。より高位のタクサは、種によって示される凝集度を欠いているから、せいぜい、_歴史的集団_(Wiley 1981)として言及〔指示〕されるが、それでも、より高位のタクサは、明瞭に個体の様 clearly individuallikeであり、クラスではない。」(Mayr & Ashlock 1991: 20;試訳)。
なんという、ちんぷんかんぷんさ! いやむしろ、たんに辻褄が合わないだけではないか。種によって示される凝集度を欠くのなら、どうして、明瞭に個体の様だと言えるのか? また、せいぜい歴史的集団だというのに、個体似だと言えるのか?
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[次回は category。混乱を招くので、(levelではなく)rank 位階または位、を使おう。同定カテゴリーという言い方を多義的になならないように使うため。]
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[D]
ドレツキ,フレッド.1988(水本正晴訳 2005.10).行動を説明する:因果の世界における理由[双書現代哲学1].勁草書房.[Dretske, F. 1988. Explaining Behavior: Reasons in a World of Causes.] [y3,400+] [B20071119]