11月20日の記事「暦とは裏腹に秋まだ浅い東博でした」のつづきです。
東京国立博物館(東博)の本館2階、総合文化展「日本美術の流れ」の入口と出口に挟まれた真ん中(エントランスの真上)に、普段はビシリと扉が閉じられていて、なかなか内部を観ることのできない部屋があります。
この「便殿(びんでん)」という天皇・皇族専用の貴賓室(私が撮影したデキの悪い写真
はこちら)の隣りに新しい展示室がオープン
しました。
asahi.comの記事を引用しますと、
高円宮ご夫妻収集の「根付」展示へ 東京国立博物館
高円宮妃久子さまが故・高円宮さまとともに集めた装身具「根付(ねつけ)」のコレクションを東京・上野の東京国立博物館に寄贈した。博物館は「世界的にも有名な現代根付コレクション」と位置づけ、専用の展示室「高円宮コレクション室」を新設した。11月1日から常設展示を始める。
ということで、「現代根付」のコレクションで、展示ケース1基だけの、かなりこぢんまりした展示室です。
その1基だけのケースには、なんとも楽しい、「宮様のコレクション」というイメージを打ち破るような「現代根付」が並んでいました。
例えば、桑原仁の2000年の作品、
「新巻鮭」
(高橋由一の「鮭」を連想します
)とか、
馬糞山馬六(奥田浩六)の1994年の作品、
なんとも、いろいろな意味で、新しい世界が広がる気がしました
展示室に掲げられた高円宮妃久子さまのコメントを記しておきましょう。
根付は印籠や煙草入れなどを帯から提げる際に紐の端につけた留め具です、江戸時代の日本社会において、実用的な装身具として幅広い人気を得ていました。提げ物を身につける習慣は、明治時代の洋装や紙煙草の普及に伴い失われてしまいましたが、その繊細巧緻を極めた作風は欧米の美術愛好家の心を捉え、彼らの要望に応えて根付制作は続けられたのです。そして、1970年頃、海外の蒐集家からの熱心な勧めもあり、伝統を守りつつも20世紀を反映する新しい感覚の根付制作が始まりました。高円宮コレクションは主にこの「現代根付」のコレクションです。しかし、宮様は江戸時代の根付も好まれ、多くの文献をご覧になるに従って根付の歴史を後世に伝えることの重要性を感じられるようになりました。「どの時代の根付も、その当時は現代根付」と仰せでしたが、将来、来館される方々が20世紀を代表する良いコレクションだ、とお褒めくださったなら、宮様はたいそうお喜びになることでしょう。展示された根付の温かみ、優しさやユーモアを通して宮様のお人柄を偲んでいただければ嬉しく存じます。
東博の収蔵品・寄託品占める20世紀の作品の比率はかなり低いと思います。
そんな東博に、これほどユニークな、20世紀の作品群が加わったということは、東博が次世代に向けて新しい一歩を踏み出したような気がします。
あ、そうだ
11月16日の記事「上野の山は東叡山」の冒頭に載せた写真は、「高円宮コレクション室」の照明器具です。
つづき:2011/11/26 作者本人は「そんなはずでは…」と苦笑い?冷や汗?