
愛しい星
午後の暖かい日だまりで
わたしの子供がまどろんでいるとき
君の国では明るい月が高くのぼり
あなたの国では朝餉を囲んでいるだろう
――時は途方に暮れている
いま わたしの国をあたためている太陽は
君の国からめぐってきた
そしてやがてあなたの国へ朝を届けるだろう
――時がひそかに立ち上がり
武器を手にする気配がする
太陽が一日をかけてめぐってゆく
この小さな星のわたしたちの時間が凍えてゆく
愛よ
あまりにもひ弱な愛よ
さあ立って! はやく!
この星には
戦争と正義を一つの箱に入れて
一羽の白い鳩に変えてみせる
魔術師たちがいる
わたしたちが
その魔法にかけられる前に
愛よ
(1991年1月16日に。)
* 高田昭子詩集「河辺の家・1998年・思潮社刊」より。