
線の千束 高田昭子
初夏の夕暮空は薄あかく
線描きのような白い雲が流れている
時間はゆっくりと
夜の地平線に降りてゆく
哀しみはあの雲のような細い線
日々のなかで
それは少しずつ殖えて
見えない手が束ねてゆく
ひとたちから愛されること
ひとたちを愛すること
「生きた」ということはこれだけのもので
それでも抱えきれないものとなる
愛の細い線は時間のなかで絡まる
切るか 切られるか
目には見えないものに
刃物をあてる危険を冒すこともある
哀しみは
わたくしの閉じた目のなかで
いとおしくたなびく線の千束
今夜も夢のなかでひっそりと機を織っている
