ふくろう日記・別室

日々の備忘録です。

オルフォイスへのソネット第二部・29

2010-03-11 22:28:53 | Poem
多くの静けさの静かな友よ、感じとるがよい、
おまえの呼吸が空間の広がりをさらに増し加えることを。
暗い鐘楼の骨木のなかから
おまえを鳴りひびかせよ。おまえを費やすものこそ、

力強くなるのだ、おまえという糧にはぐくまれ。
変容の境を出入りするがよい。
おまえのもっとも苦しい経験はなに?
飲むことが苦しければ葡萄酒になれ。

この 過剰からなる夜のうちにあって
おまえの五感が交わる道の魔法の力であれ、
感覚と感覚の不思議な出会いの意味であれ。

そして地上のものがおまえを忘れたら、
静かな大地に向かっては言え、私は流れる と。
急流の水に向かっては語れ、私は在る と。

 (田口義弘訳)


 さて最後の1編となりました。「ドゥイノの悲歌」は、1912年から1922年まで、10年かかって書き上げられたもので、その間には「第一次世界大戦・1914年~1918年」がありました。しかしこの「オルフォイスへのソネット」は驚くほどの短期間で書かれています。書かれた時期は「ドゥイノの悲歌」と重なっていますが。

 第一部全編:1922年2月2日~5日
 第二部全編:同年2月15日~23日

 「呼吸」「空間の広がり」は、繰り返し表れた言葉でした。リルケ独特の世界観と言うべきか?あるいは共生観とも言えることかもしれません。鐘楼の音の響きさえ、その空間世界に漣をたてる存在となる。

 マイナデスの理不尽ともいえる憎悪という苦い酒を強いられたオルフォイスは、自ら葡萄酒に変容することによって、わたくしたちを酔わせてくれるのだろう。

「夜」はあらゆる事物の形が闇に溶けるので、ようやく宇宙全体が開かれて、星座が見えるようになると、リルケは言っているのだろうか?

 さらに「存続」と「無常」についても、くりかえし語られてきた言葉ですが、人間は変容しつつ存続しうるものらしい。「流れる」「在る」との繰り返しによって・・・・・・。

 しかしながら、この最後のソネットは、ひどく抽象的に書かれています。あれこれと思いめぐらす歓びがあるとも言えますが、そう思うことの虚しさに、むしろ気づくべきなのかもしれません。

 *    *    *

 あまりにも未熟(熟成不足?)ながら、どうやら最後まできました。長い間のお目汚しで申し訳ありませんでした。「はやく読んで!」と別の本が呼んでいるようです。ではまた。

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6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ついに至りぬ (タクランケ)
2010-03-12 12:33:11
おめでとうございます。

とうとうゴールです。

では、明日のお酒のためのexecuseに乾杯。
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Danke schön. (Aki)
2010-03-12 20:17:18
やっとゴールまできました。いろいろとありがとうございました。

でも・・・・・・もう呑んでるでしょ?(^^)。

呑むのは明日の午後だよん♪
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おめでとうございます (リベル)
2010-03-14 00:19:31
おおっ!ついに仕上げられましたね!

勿論私奴などは全文を理解する能力も根気も持ち合わせては居ませんが、毎日覗き込んでは何とか溶け込もうと儚い努力は続けておりました・・・(^^;)

Akiさんの弛まぬ精進と素晴らしい成果に、心からのお慶びを、申し上げたくて・・・^^
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ありがとうございます。 (Aki)
2010-03-14 00:31:14
リベルさん。

ありがとうございました。
自分の力量を超えた計画だったように思いますが、こうして自分を鍛えることもできるのではないか?という試みでした。

でも、リベルさんの研究には及びません。
これからもお元気で続行なさってくださいね。
女王さまのために(^^)。
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はいはい・・・ (リベル)
2010-03-15 01:08:43
はい、分かりました・・・(汗、汗・・・)
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はい♪ (Aki)
2010-03-15 14:30:43
うふふふ♪
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