細田暁の日々の思い

土木工学の研究者・大学教員のブログです。

「元気なインフラ研究所」の目指す方向性

2023-09-23 10:48:40 | 職場のこと

豊穣な社会研究センター、センター長の細田 暁です。

このセンターには、3つの研究所があり、その一つが「元気なインフラ研究所」です。

元気なインフラ研究所では、社会の活動を支える様々なインフラ(社会基盤)のうち、土木や建築の分野のインフラについての研究、教育を行います。

インフラは平時の皆さんの生活を支えています。現代文明社会においては、インフラが無くなると、我々は死にます。日本という国土に1億2千万人以上もの人がひしめいて住んでいる以上、これは冗談ではなく、我々のほとんどはインフラに支えられて生きています。

例えば、道路、鉄道、水道、下水道、港湾、空港、建築物、電力、ガス、橋、トンネル、ダム、防災施設などのインフラが、長期間に渡って健全に機能を果たすことは、我々の社会が元気に活動をするための大前提条件です。そして、これらのインフラは、災害時にも極めて重要な役割を果たし、直接的に防災・減災に役立つ場合もあるでしょうし、災害後の復旧を迅速にするために役立つものもあります。

インフラが元気であるための研究、は私たちの現代文明が続く限り、重要な研究であり続けると確信しています。

元気なインフラ研究所では、そこに集う研究者、実務者たちの得意技を生かして、技術開発、技術の社会実装、インフラの建設や維持管理のためのシステムの構築や改善、に取り組みます。

元気なインフラ研究所に集う、コンクリート、地盤、鋼、交通、建築構造、などを専門とする研究者たちが、学内外の様々な方々と連携して、実践的研究にチャレンジします。

例えば、私自身が関わる研究は、以下のようなイメージです。

(1) コンクリート構造物を建設する際の品質確保、耐久性確保、ひび割れ抑制
 2009年から山口県のひび割れ抑制システム、品質確保システムに参画しており、土木学会技術賞も受賞しています。「山口システム」は、その後、東日本大震災後の東北の復興道路の建設で応用され、多くの橋、トンネルの建設で長持ちするコンクリート構造物の建設が産官学の協働で実践されました。私はその中核で活動してきたので、現在も、国交省の品質確保の試行工事の指導など、数多くのプロジェクトに実践的に関わっており、コンサルティングが可能です。また、山口システム、東北システムなどすでに動いている現実のシステムの改善にも関わっており、研究はもちろん現在進行形です。



(2) 革新的な環境負荷低減型の建設材料の開発
 私自身、正直に言うと、「脱炭素」という動きには賛同していません。そんな看板を掲げなくとも、「省エネ」や「廃棄物の有効利用」で十分だと思っています。
 私は、2021年から、生コン会社などの元気な方々とチームを組み(チーム名は「HAYN隊」(ヘインたいと読みます))、どんどんと技術開発し、社会実装をしています。真に革新的と言える、廃棄物も有効に使った、社会に喜んでいただける建設材料を開発し、実際に市場で売れて使われていく状況は、極めてエキサイティングで、楽しいです。
 今のところ、私が関わっている材料は、「オワコン」と「イワモル」です。
 HAYN隊の活動は、まさに自律分散的であり、このような活動のやり方がどんどんと拡がっていくとよいな、と思っています。



(3) 膨大なインフラの維持管理システムの改善
 社会を支える膨大なインフラをどのように維持管理していくのか、は私たちの社会の命運を握るといって過言でありません。100年、200年と使われる可能性のあるコンクリート構造物の維持管理技術そのものが研究テーマなのですが、膨大なインフラ群を効率的に維持管理していくシステムの構築、継続、改善となると、これまた相当に難しい研究テーマとなります。
 私は、若いころ、JR東日本で技術者として働いていた経験もあるので、実務的、実践的な研究が好きなのですが、現在は、富山県の高岡市の橋梁の維持管理システムの改善、過酷環境で供用されるコンクリート構造物の維持管理技術の開発、などに関わっています。
 人、技術、金、に困っている地方自治体などのインフラ管理者の維持管理システムの改善のために、元気なインフラ研究所としてでき得ることにチャレンジしていきたいと思っています。



以下、私自身も含め、元気なインフラ研究所でチャレンジできるかな、と思うテーマを並べてみました。近く、元気なインフラ研究所のコンソーシアムを立ち上げます。インフラ管理者、行政機関、建設会社、コンサルタント、材料メーカー、研究機関などなど、クリエイティブな活動を自律分散的にチャレンジしていく仲間になりませんか?お問い合わせはお気軽に。センター長 メールアドレス:concrete(あっと)ynu.ac.jp

・新設インフラの建設時の長寿命化
・膨大な既設インフラの維持管理システムの改善
・既設インフラの診断、補修、補強技術
・建築物の長寿命化
・建築物の供用時の使用エネルギー削減
・建設での廃棄物削減、使用エネルギー削減
・建設材料の技術開発
・構造物のスマート解体技術
・建設マネジメント(システム、契約、国際協力、海外支援)
・交通施設(バスターミナルなど)の利便性、快適性
・交通システムの改善、交通の安全性の改善
・大都市問題の改善
・自動運転システム
・流域、海岸の防災
・湾、湖の環境マネジメント
・地域の防災
・幸せ、健康のための街づくり
・人口環境と自然環境の調和
・風の災害
・火災
・極限環境でのインフラの性能評価
・インフラの事故への対応
・人財育成


豊穣な社会研究センター、とは?

2023-09-23 10:29:45 | 職場のこと

皆さん、こんにちは。

横浜国立大学、豊穣な社会研究センターのセンター長の細田 暁です。

豊穣な社会研究センターは、2023年4月に発足しました。「豊穣な社会」を目指して、研究と教育に取り組みます。

「豊穣な社会」とは何か?

この問いこそが重要であると考えています。

私が抱く「豊穣な社会」のイメージは、「すべての人が先天的・後天的に与えられた資質と能力を十分に活かし、生き生きと生活し、将来世代のために夢と希望を抱いて生きるための環境を耕し続ける、豊かで稔りある社会」というものです。センターでは、「豊穣な社会」を目指して、総合学術的かつ実践的な研究・教育を展開します。

なぜ、豊穣な社会を目指す必要があるのか?

現在の日本社会が、豊穣な社会からどんどんとかけ離れて行っているから、と考えるからです。なぜ、どんどんかけ離れていくのか。この根幹的な原因についても、センターのメンバーで勉強を重ねていますので、どんどん情報発信していきたいと思います。

2023年4月の開設を目指して、「防災・減災」に貢献する研究センターの設立を横浜国立大学が検討していました。土木工学という分野で、防災・減災に関する研究・教育に取り組んできたYNU防災研に白羽の矢が立ち、検討を重ねた結果、「豊穣な社会研究センター」が設立されました。

私は、防災・減災という取組みに対して、自然災害のみをイメージしません。むしろ、人災と呼ぶべき災害によって、日本社会の良さ・強さがどんどんと毀損されている状況にあると思っています。その上でさらに巨大な自然災害に見舞われるリスクがある、と認識しています。

そこで、センター長の専門分野である土木工学も含んで、社会を支えるインフラに関する研究、デジタルツイン技術による防災・減災のための研究、そして、幸せな社会のための人と人のつながり方についての研究、を通じて豊穣な社会を目指す研究センターを構築しました。



豊穣な社会研究センターには、横浜国立大学の中の様々な分野の研究者が集い、また学外からもセンタのビジョンに共鳴する優秀な研究者・実務者に参画してもらい、それぞれの得意技を生かして、豊穣な社会のための研究、教育に取り組んでいます。

また、2023年度中に、「元気なインフラ研究所」と「つながり方研究所」については、それぞれのコンソーシアムの設立を計画しており、学外の行政機関、インフラ管理者、ゼネコン、コンサルタント、材料メーカー、つながり方研究に関心のある様々なプレーヤーが集い、議論し、共同研究も自由闊達に実施できる仕組みを構築します。

「もしも×可視化研究所」においては、「都市丸ごと解析」のデジタルツイン技術を用いて、横浜市と連携して研究を行っており、巨大災害に対する防災計画の改善や都市のレジリエンスの改善のための実践的な研究をスタートしています。

豊穣な社会研究センターの活動にご関心の方は、遠慮なくお問い合わせください!

センター長 メールアドレス: concrete(あっと)ynu.ac.jp