シャープ & ふらっと

半音上がって半音下がる。 それが楽しい、美しい。
思ったこと、感じたことはナチュラルに。  writer カノン

落葉松の林を過ぎて

2007-11-15 14:50:27 | 旅・町歩き
晩秋から初冬にかけてのこの季節。
今日の東京は20℃を超えた。
しかし、明日からは寒さがやってくるという。

落葉松の葉が落ちる季節・・。


北原白秋の詩、「落葉松」が頭に浮かぶ。

浅間山の麓に、「文学の小道」という道がある。
林の中を貫く、散策道だ。

信州の追分。
白秋をはじめ、中原中也、立原道造などが、
この地に身を置き、数々の詩を創作した。

彼らが歩いたであろう、林の小道を、
再現したかのような「文学の小道」だが、
一人で歩くと、「侘び寂び」を感じる。

言葉に迷ったとき、
言葉に困ったとき、
そして、言葉に悲しんだとき・・

文学の小道を、歩いてみたいと思う。



からまつの林を過ぎて
からまつをしみじみと見き
からまつはさびしかりけり
たびゆくはさびしかりけり

からまつの林を出でて
からまつの林に入りぬ
からまつの林に入りて
また細く道はつづけり

からまつの林の奥も
わが通る道はありけり
霧雨(きりさめ)のかかる道なり
山風のかよう道なり

からまつの林の道は
われのみか ひともかよいぬ
ほそぼそと通う道なり
さびさびといそぐ道なり

からまつの林を過ぎて
ゆえしらず歩みひそめつ
からまつはさびしかりけり
からまつとささやきにけり

からまつの林を出でて
浅間嶺(あさまね)にけぶり立つ見つ
浅間嶺にけぶり立つ見つ
からまつのまたそのうえに

からまつの林の雨は
さびしけどいよよしずけし
かんこ鳥鳴けるのみなる
からまつの濡るるのみなる

世の中よ あわれなりけり
常なけどうれしかりけり
山川に山がわの音
からまつにからまつのかぜ


     北原白秋 「落葉松」

最新の画像もっと見る

4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (aosta)
2007-11-15 16:35:43
白秋のこの詩、私も大好きです。
なんとも言えない哀感を感じます。
白秋の言葉はきらびやかで輝いますが、その言葉が紡ぎだす世界は寂寥感に満ちているのはなぜなんでしょうね。

昔、立原道造への思いが募って、信濃追分まで旅をしたことを思い出しました。
人影もない晩夏の高原、懐かしいです。
(今では"高原”に住んでいるのですが・笑)
返信する
驚きです (カノン)
2007-11-16 08:44:59
>aostaさん

私も昔、同じく立原道造の詩を読んで、
追分まで行ったんですよ。
同じ気持ちで、同じ場所を訪れたとは、びっくりしました。

20年ほど前ですが、私は合唱団にいました。
その時、立原道造の「優しき歌」という12の詩の中の、
『樹木の影に』という詩を、合唱曲として練習していました。
しかし、都合でこの曲は歌われなかったんです。

でも、この詩を読んで感銘を受け、
9月のある日、追分へ旅しました。
文学の小道も、その時に歩いたんです・・。

信濃追分といえば、
狩人の「コスモス街道」という歌も、ここが舞台ですね。
この歌も、詞・曲ともに大好きです。
返信する
Unknown (aosta)
2007-11-16 21:40:09
>『樹木の影に』という詩を、合唱曲として練習して  いました。
  しかし、都合でこの曲は歌われなかったんです。

もう合唱はなさらないのでしょうか。
私は男性合唱のあの深くて厚いハーモニーが大好きです。もちろん混声も美しいことに違いはありません。個人的な好みです・笑)


いま 僕たちは憩ふ
ふたりして待つ この深い耳に
意味ふかく 風はささやいて過ぎる

『樹木の影に』の中でも、私が好きな部分です。
立原の詩には音楽とダブル・イメージで迫ってくる物がたくさんありますが、この詩にはどんな旋律が付けられたのでしょうか。
返信する
Unknown (カノン)
2007-11-17 16:31:11
>aostaさん

私は、混声でやってました。
この曲は、その年の「全国合唱コンクール」の、課題曲だったんです。

でも、私の合唱団は、諸事情があって予選参加を断念しました。
その後、この曲を歌う機会も、詩に触れることもありませんでした。

aostaさんは、男声合唱がお好きですか?
私も、一時男声に誘われて、何度か歌ったことがあります。
ロシア民謡などは、歌っていても聴いていてもいいですよ。
混声の出来も、男性次第という感じです。
やはり、深い部分・・支えの部分が大事なんですよね。

「優しき歌」は、12の詩にすべて曲がつけられています。
早い話が、組曲になっています。
「樹木の影に」は、少し眠たい感じの曲ですが(笑)、
最後の、「夢みたものは」は、綺麗な旋律ですよ。
返信する

コメントを投稿