超人日記・俳句

俳句を中心に、短歌や随筆も登場します。

#俳句・川柳ブログ 

西東三鬼の名句読む

2023-06-15 05:10:23 | 無題
〇わが天に蝶昇りつめ消え去りし
昇天した人への惜別だろうか。遠き天への憧れだろうか。天に蝶が舞い昇って消える心象いかに。
〇灯を消せば我が体のみ秋の闇
明かりを消して、一人で床に横たわるとき、感じるのは、孤独と人の世の無明だろうか。
〇クリスマス馬小屋ありて馬が住む
一見、当たり前のことを詠んでいるが、聖母子のことを語らずに語り、馬の眼で聖夜を見ている。
〇モナリザに仮死いつまでもこがね虫
モナリザの絵にこがね虫が止まって、安らいで我を忘れて眠っている。異性の懐に安らぐ至福。
〇吹雪を行くこのため生まれ来しごとく
なぜこんな吹雪の中、自分は歩いているのか。これは何かの巡り合わせだろう。この一歩が私だ。
〇握りめし食う枯枝に帽子掛け
何気ない昼食風景だが、寒い中、一人食事を楽しむ自分がいる。しばし仕事の手を休めて。
〇クローバに青年ならぬ寝型残す
クローバーの野原に、青年らしからぬ寝型を残す。否、異性が寝型を残したのか。
〇群衆のためよろよろと花火昇る
キリスト教に入信した三鬼にとって、群衆のために敢えて尽力するイエスの姿を花火に見た句。
〇わが天使なりやおののく寒雀
寺山の、わが天使なるやもしれぬ小雀を撃ちて硝煙嗅ぎつつ帰る、の元歌。無垢に対し、挑発。
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歳時記俳句・夏燕

2023-06-14 05:06:38 | 自作俳句
梅雨寒にボーリングピン崩す音
長雨にマーラー全集順に観る
兎菊梅雨の晴れ間に散歩する

物思いゲンノショウコは肝に効く
誕生日思い出深い真珠貝
水源池叔父の素描の初夏見舞い

風薫る瞳に揺れる水中花
白昼の濃い黒カレー汗も引く
昼寝から目覚めて涼し讃岐そば
車窓にて原稿書けば夏燕

母親の安き遺品の首飾り
きんつばは真面目な四角ひと充たす
琵琶目指し顔の間近に鳥かすめ
くるみ割りバレエ教室 梅雨の夢
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くるみ割り人形でイブの夢

2023-06-13 05:11:28 | 無題
チャイコフスキーのバレエ「くるみ割り人形」をYouTubeで観る。
主にウクライナ国立バレエ団の長篇を観る。
クララにイブのパーティでドロッセルマイヤーという客人が
くるみ割り人形を贈り物としてくれる。
兄が、もらったくるみ割り人形を壊してしまう。
クララが心配して覗きに行くと、
王子になったくるみ割り人形とネズミの軍隊が戦う。
クララが助け、これを撃退。
クララはくるみ割り人形の王子に連れられて、お菓子の国を旅する。
金平糖の女王や、雪の妖精の歓待を受ける。白い雪の妖精の群舞がきれい。
各国の菓子の人形が、中東やスペインなど自国の舞いを披露してくれる。
異国情緒がたっぷり味わえる、夢の世界。
イブが終わって目が覚めてみると、
クララの側には、昨夜もらったくるみ割り人形が座っていた。
すてきなクリスマスのお菓子の国の夢まぼろしを見せてくれた、
一夜の王子、くるみ割り人形をクララは抱きしめる。
各キャラクターに個性があり、それぞれに独特な振り付けがある。
1時間半に及ぶバレエだが、小粋なイブの夢物語が立体的に味わえる。

イブの夜クララがもらう人形が戰さのあとに夢へ誘う

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富沢赤黄男の名句読む

2023-06-12 05:05:07 | 無題
〇恋びとはもぐらのようにぬれている
 抒情性にあふれた句、とある。む しろ、官能性が際立っている。
〇南国のこの早熟の青貝よ
 映像的な初夏の句、とある。これも異性を思わす官能的な句。
〇春宵のきんいろの鳥 瞳に棲める
 なんと日本画的な映像だろう。外界が目に住んでいる、というのは意表を突く。
〇貝殻の青き肌に雨くるよ
赤黄男は外界を官能的にみる感性に優れていたようだ。
〇絶壁へ冬の落日吹きよせられ
何とも、破壊的な句だ。日本的美意識に、意図的に緊迫感が向けられている。
〇賑やかなカルタの裏のさみしい絵
この句には、自画像という副題が添えてある。明るい世界に馴染めない自分がカルタに込められる。
〇黄昏は枯れ木が抱いている竪琴
竪琴には、ハープとルビが振ってある。枯れ木の想像上の音を高音の竪琴に例えている。夢ある句。
〇少年の雲白ければむく蜜柑
純真な少年の無垢さに、なぜか恥じらいが感じられる句。そう受け取れるのが、俳句の妙。
〇美しきネオンのなかに失職せり
他人事ではない事態が、耽美的にまとめられていて、救われる。
〇一本のマッチをすれば湖は霧
寺山が、マッチする束の間海に霧深し身捨つるほどの祖国はありや、と真似した句。両方いい。
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歳時記俳句・幾月日

2023-06-11 05:04:55 | 自作俳句
休日にジャズに聞き入る岩煙草
某日を飽かずに思う千日草
襟を立て線路歩けば飛燕草
薄紅のスニーカーにて初雪草

雛罌粟が咲く散歩道生まれ月
北離れ銀の翼で都草
思い出の回転木馬矢車草
進むにも進まぬ読書山法師

道端で手をくぐらせるラベンダー
黒髪の毬つく仕草あやめ花
甘茶花何も言えずに幾月日

物思い止める文字あり一薬草
パンカフェで窓辺に見える兎菊
今一度巻き戻せれば延齢草
夏野行く眼は思い出の万華鏡



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