A&K の NOTES

あちこちスケッチ行脚 。映画館で映画を見ることが楽しみ。いつか何処かでお会いしましょう。

空気人形

2017-08-15 | chinema(日本映画)

映画を観た。

★空気人形
監督:是枝裕和
出演:ペ・ドゥナ、板尾創路、ARATA、他
2009/日本

《李屏賓(リー・ピンビン)の捕らえた東京・・・空気人形》
リー・ピンビンが東京の街をどのようにみせてくれるのでしょうか。
その興味はとても押さえがたいものでした。

メイド服を着た「空気人形」の物語は、是枝監督がどのように言い訳を作ろうが、監督自身のエロスへの趣味そのものであり、この映画は性的興奮を狙った確信犯的AV作品です。映画のテーマとして所々で「生きる」ことを問いかけてはいましたが、現実に生きる人物たちの存在そのものが陽炎のように儚く弱々しく描かれていましたので、ちょっと謎掛けをした程度のように、まさに言い訳程度のように聞こえました。逆に性的行為の代用品としての「空気人形」の存在がリアルにまぶしく描かれています。その対比の際立ちがエロスの美しさを一層印象づけたように思いました。

この作品の興味の一つは、是枝裕和監督は日本人、主演のヒロイン、ペ・ドゥナは韓国人、カメラ撮影のリー・ピンビンは台湾人という、東アジア人の映画であるということです。
3人の視点が微妙にぶつかり合い、東アジア風というか、いわゆる無国籍風に仕上がっていました。

カメラのリー・ピンビンが捕らえたものは、現実と夢とが交錯した白昼夢の東京下町。
ねじ巻時計のちょっとリズムの狂ったような時間の刻み方。
シュールな表現ですがこの感覚は好きですね。

 

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初恋

2017-08-15 | chinema(日本映画)

映画を観た。

1968年、12月10日、雨。
ボクはこの物語ヒロインと同世代、40年前の三億円強奪事件が起きたときは高校生だった。当時の記憶はセピア色どころかほとん真白っぽいくらいだが、事件の輪郭ははっきり覚えている。犯罪ではあるが、事件に生臭さがなくヒーロー的扱いだったような気がする。(今でもたぶんにそうかも知れない)反権力への空気があちこちに充満していた時代だった。短時間で行われた離れ業はただ感嘆するばかり、「白いヘルメット男」の写真は強烈なインパクトを与えてくれた。その後の捜査の迷走ぶりも記憶に残る。時効となった75年までに約10億円近い費用がかかったとか。消えた3億円は,いまだ使われた形跡がないというから、さらに謎が謎を呼び、夢想が膨らむ。

本屋さんで「初恋」の文庫版を見た時も強烈。帯の宮崎あおいがじっとこちらをみつめていた。読むしかないと観念して読んだ。

孤独と権力への憎しみとそして漂う寂寞感。この文章は何のために書かれたのか。「初恋」と甘いタイトルだが、中身は淡々と当時を振り返る冷徹な文章であり、共に生きた友人達への追悼のことばのような哀調を持つ。フィクションであることにまちがいないのに、作者中原みすずが「3億円の犯人」であるかのようなリアリティを持つ。70年前後の時代の空気を3億円強奪犯人が憎しみと優しさを込めて語ってくれた。同時代人としては共感できる部分が多く、個人的にもいろいろ振り返ることが多くなる。

しかし、いったい、これは真実の物語だろうか?
作者中原みすず、プロフィール未公開。

DVDで「初恋」を観る。原作の冷徹さがなく、宮崎あおいのキュートさが目立ち、フィクション性が強くなる。映画になると、どうでもいいいろんな情報が氾濫してしまい、主題がぼやけてしまった。当時流行ったグループサウンズの歌声、ミニスカートのファッション、映画ポスター、クルマ、バイク、当時の街並。懐かしいものばかり。「ブルーシャトー」、「スワンの涙」、そちらの方に感激。原作はジャズ調だったのに、映画は歌謡曲調である。

20世紀はしだいに遠くなりにけり、、、、と思いに耽る。

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