駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

鳥より怖い豚インフルエンザ

2009年04月28日 | 医療
 インフルエンザというのはインフルエンザウイルスによる感染症で毎年冬に流行する。流行の大きさは年によって異なる。今年は大流行ではなかった。
 毎年流行しているインフルエンザの死亡率は0.05%から0.1%程度でさほど高くなく、多く見積もって千人に一人くらいで、しかも亡くなる方の多くは高齢者で毎年のことなので大騒ぎにはならない。
 インフルエンザは麻疹や風疹などのウイルスと異なり、連続的抗原変異を起こすために、同じ人が何度も感染してしまう。
 一般には、一度あるウイルスに感染するとそのウイルスに対する抗体(専門の警察官)が出来る(養成される)ため、次にそのウイルスが体内に侵入した時には直ぐ発見され抗体(専門の警察官)が付着し(取り押さえ)排除されるので、感染が成立しない。つまり免疫が出来るわけである。ところがインフルエンザウイルスは連続的抗原変異(変装)をするために、折角用意(養成)した抗体(専門の警察官)が十分に働かず、感染が成立してしまうことが多い。そのためインフルエンザは毎年予想された変異株(変装)用のワクチンを打つ必要がある。
 新型インフルエンザは連続的抗原変異でなく、組み替えによる不連続抗原変異が豚の中で起きるために、全く新しい抗原性を持っている。つまり変装でなく形成手術で目鼻や腕などを取り替えてしまうので、誰もそれに対する抗体を持っておらず大流行する危険が大きいのだ(形成手術が小幅の場合は多少免疫が働く、類推が利く、こともある)。
 何で豚が登場するかというと、豚は鳥のインフルエンザにも人のインフルエンザにも感染するため豚の体内で鳥と人のインフルエンザが交雑して人に感染しうる新種(新型インフルエンザ)ができることがあるのだ。それが今までに大流行した新型インフルエンザの出現メカニズムだと考えられている。この場合生まれる新型インフルエンザは感染力は強くても毒性(死亡率)はさほど高くないと予想されている。毒性(死亡率)が高くないとしても母数が大きくなり億の単位になれば亡くなる方も何百万の数になる可能性があり、まさに非常事態となる。
 もう一つ騒がれている鳥インフルエンザは鳥に発生した鳥の新型インフルエンザ(鳥に対し毒性が高く死亡率も高い)が人への感染性を獲得した場合を想定している。これは人にも強毒性で死亡率が20-40%と極めて高い恐ろしいウイルスで医者も逃げ出すと言われている。しかし、この強毒の鳥インフルエンザ(H5N1)はインフルエンザの専門家の間では大流行はしないと言われている(政府の見解対応と異なるので内緒の話なのだが)。私は医者なので彼等の見解を妥当と受け取り、実際には大流行しない鳥よりも、実際に大流行する可能性の高い豚が怖いと考えている。
コメント (5)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする