駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

デジタルとアナログの違いに気付く

2014年11月03日 | 小験

                      

 車の定期点検で代車に乗った。旧い型だったせいか時計がアナログだ。「アナログはいいね。一目で時間がわかる」。何でも取り敢えず反対する同乗者は「デジタルの方が正確にわかるわよ」とデジタルの肩を持つ。

 不思議なことに気がついた。アナログ時計を見て瞬時に時間がわかるが、何時何分というのは一二秒遅れてしか頭に浮かばない。それでは瞬時に分かった時間はなんなんだと言われそうだが、何時何分と言えなくてもわかるんだよとしか言えない。アナログ時計は形で瞬時にだいたいの時刻を理解できるが、何時何分というのは短針と長針から時間を割り出さねばならないので一二秒掛ってしまう。デジタルで時間を知るにも字を読まなければならないので、瞬時とはいかない。

 こうした脳の働きは既に科学的に調査研究されているはずで、機械の操作法などに生かされていると思う。こうしたことを指摘すると直ぐアナログ派デジタル派などと分けようとしたり優劣を決めようとする人たちが居るが、それは理解に代わるものではない。よく考えないとわかりにくいことを順序や好悪に置き換えるのは面白いかもしれないが、皮相の理解に留まり、しばしばより深い理解を妨げてしまう。

 瞬時に分かることは多い。そしてそれには生得のものと獲得したものとがあるようだ。医者は患者の顔を見て一瞬で分かることが数多くある、しかしそれには少なくとも五六年の修行が必要なようだ。救急外来のベテランの看護師などは患者の顔を見ただけ手が動き始めている。これは明らかにアナログ的な情報からの判断に基づいている。戸惑う新人は教えてくれないとこぼすかもしれないが、必ずしもベテラン看護師が意地悪というわけではなく、アナログはうまく言葉にし難いところもあるのだ。

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