駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

枕元のゲーリークーパー

2014年11月06日 | 小考

               

 今朝はさほど寒くないが、秋らしい陽気だった。校庭の銀杏が黄色く色づきき始めている。陽がよく当たる側が早く黄色くなるようだ。まだ散っていないが、二三週間すると黄色い落ち葉を踏みしめて歩くことになるだろう。

 Tさんは九十の坂を越えトイレ以外は殆ど寝たきりになったが、頭は達者で受け答えはしっかり出来る。先日往診に行くと枕元にゲーリークーパーが表紙の映画雑誌が置いてある。

 「映画がお好きですか」。

 「娘の時は休み毎に見に行ったわよ。一日と十五日が休みでね」。どうも昔と行っても戦前の話のようだ。

 「学校出て直ぐ働きに出たからね」。今も二軒映画館が残っている辺りかなと

 「**町ですか」。

 「そうよ、あの頃はたくさん映画館があってね」。と教えてくれた。爺さんは十五年前に亡くなり、今は息子夫婦と住んで、座敷を根城にしている。時々可愛い曾孫の女の子が遊びに来ている。

 それこそ七十五年前の昔が脳裏には鮮やかに生きているようで、ゲーリークーパーが懐かしいようだ。なぜ、私がゲーリークーパーをよく知っているかと言えばTさんと同年代だった母親がファンだったからだ。

 

コメント (2)
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