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駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

体重を巡る攻防

2018年11月19日 | 診療

         

 

 寒いといってもさほど寒くなく、晩秋初冬の感じがしない。何だか寒くないと心が引き締らない。

 肥満の方を痩せさせるのは生活習慣病を診る内科医の重要な仕事なのだが、これが難しい。減らすのは現体重の5%で取り敢えずの合格点を差し上げられるのだが、その3-4kgが難しい。高血圧の方はさほどでもないのだが、2型糖尿病や脂質異常症の人では非常に難しい。美食家というか食に関しては自分に甘く、運動も億劫という方が多いのだ。馴染みの医者を舐めているのか甘えているのか食品模型を見せて口酸っぱく言っても半数近い人が暖簾に腕押しだ。石の上にも三年で、三年くらい言い続けると漸く効果が出てくる患者さんもいるのでそれを励みに注意し続けている。尤も女性の患者さんの中には不機嫌になられる方もあり、やむなく撤退することもある。

 正確な体重計を使っているのだが、いちいち下着だけにしているわけではないので、1kgは着ているものや食事量で簡単に変動する。2kg以上減って初めて褒めて丸を差し上げるようにしている。

 肥満は生活習慣病によくないのだが、BMI25,26のやや太り気味程度はさほど問題ではなく、特に七十歳以上の高齢者では痩せている方が手術や肺炎などの時に頑張りが効かないので、高齢者は痩せないように注意している。大まかに74,5歳を歳過ぎたら、あれこれ駄目というのは止めて好きに楽しくと手綱を緩めている。患者さんの中には十年以上通われている方も多いので、この頃先生も年を取って甘くなったと思われている方もおられるかもしれない。

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言葉で蓋をする技能

2018年11月18日 | 町医者診言

              

 

 総合病院を辞めて個人医院を開業するまでは世の中の実態について殆ど何も知らなかった気がする。開業して徐々に世の中の仕組みや実態が少しはわかるようになってきた。

 医学の世界では希有なことだが、言葉が誤魔化すために使われているのに驚く。技能実習制度という美名の元に外国から夢を持って入国した若い人が、名ばかりの実習で実は搾取されている実態。

 ここにきて技能実習生だけでは補えない労働力不足を新たな外国人材を受け入れて凌ごうとする法案が提出されているが、どうも単にその場しのぎに外国人労働者を使おうとしているように読めてしまう。

 労働力不足と言えば、若年労働者数が減っているので確かに成る程と納得して仕舞いがちだが、どの分野でどの程度の人材が何人くらい不足しているのかは明確にされていない。付け焼き刃の数字が出されてはいるが、技能実習生の実態に関して誤った数字を出し、パソコンの打ち間違いだなどという理解できない言い訳をするような役所の報告を鵜呑みには出来ない。国内日本人の未開発未就業の潜在人材をきちんと把握しているのか、内閣には都合の悪いことを隠す姿勢があるように見える。

 家族同居で日本に根を下ろして働く人達を移民ではないと答弁しているが、日本語を母国語とするような子供が育てばそれは移民のような気がする。移民という言葉にアレルギーを持つ人達をなだめるために移民でないと定義の曖昧さでまやかしているように聞こえる。

 なぜ本当のことを正確正直に表現しないのだろう。なぜ上辺の言葉でまやかされてしまう?のだろう。

 人材は材と呼ばれても人間。人口の年齢構成推移は十年以上前からわかっていること、政治家は本当に将来のことをきちんと考えて政治をしているのか?、パソコンを扱ったことのない大臣がサイバー攻撃を防ぐ部門の担当、世界の笑いものになってしまう。

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無知の知を知る

2018年11月17日 | 人生

          

 

 無知の知はソクラテスが言った言葉とされ、自分が無知であることを知ることによって、より深い思索と知へ辿り着けるといった意味らしい。哲学的な解釈はよく分からないので脇に置いて、単純に自分が物事をよく知らないことを自覚することが、どんなに重要かということには気付いているつもりだ。

 ソクラテスの時代に比べたらそれこそ何千倍否何万倍も人類全体の持つ知識は増えているだろうが、無知の知の持つ意義は変わっていない。奇妙に聞こえるかもしれなが、新知見に伴い新たな無知の範囲が広がってくるし、個人の脳力はソクラテスの時代とさほど変わっていないと考えられるからだ。多少脳力が上がっているとしても 失われた謙虚さや感性を差し引けば総合力が大きく優ってきているとは思えない。

 自分を例に取れば医学の知識は研修医の頃に比べたら何倍も増えているが、医学の進歩は目覚ましく新知見が何十倍にも膨らんでいるので、無知の分野は広がっている。幸い人間そのものはさほど変わらず、臨床経験が生きるので、研修医の頃に比べればより良い診療ができているとは思う。

 今では課していた一日三十分の勉強時間も、十五分二十分に減り新知見に追いつけなくなっているが、こんなに知らないことがあるという自覚は保つことができている。尤もこんなに知らないことが増えちゃあ、そろそろ引退かなあという思いも湧いてくるので難しい。

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葉子がまた何かしでかした

2018年11月16日 | 人物、女

 

         

 

 多和田葉子さんが全米図書賞を受賞されたようだ。確か三ページ読んで放り出した「献灯使」は本棚のどこかにあるはずだ。探し出して読んでみるか、多分十一ページくらいで頓挫するだろう。エッセイや旅行記は大好きなのだが、どうも小説はファンを自称しながら読めていない。

 多和田さんは私見では言葉というか言語に憑かれた人で、日本が生んだコスモポリタンのお一人だ。梯久美子さんよりも先に、生きているうちに会ってみたいと思っていた人だ。

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医院でのマナー

2018年11月15日 | 診療

        

 

 あなたのかかりつけ医からお願いがあります。

 名前を呼ばれたら返事をして下さい。聞こえて歩き始めていても、私からは見えないのでもう一度大声で呼ばなければなりません。

 看護師が居ない時は診察室のドアは自分で締めて下さい。私が立ち上がって締めに行かねばなりません。折角個室にしているので、お話が他の患者さんに聞こえないようにしたいのです。

 ご主人を診察している間中、私の耳元で「この頃物忘れがひどくなった」、「よく怒る」などと囁き続けないでください。

 「どこが痛いの」と聞いた時、私の身体を触って場所を示さないでください。

 診察室のベットに横になる時は靴を脱いでください。シーツが汚れます。

 常識というか礼儀と思います。いい大人なのにと申し上げたくなります。

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