ずいぶん昔のことだが、パソコンの操作を、1段階ずつ筆記記録している人がいた。
次に同じことをやってみるときには、ノートを見ながらまた1段階ずつ確認しながら操作をしている。
これで頭に入るのだろうかと、感心しながら見ていた。
ノートに書いたとおりの手順に沿って操作するから、もし書いてあることに、誤りとは言えなくても、どうでもよい余分な手順が入っていれば、几帳面にそれが実行される。
何か余計なことをしていないかとの疑問ももたれることがなく、いつも同じことが繰り返される。
メモの仕方もいろいろで、しっかりしたノートならよいが、手近にある紙切れなどに記録する人もいる。とにかく書けば安心するらしい。
記事が紙の下端にまで届くと、あいているところを探してまた書く。
過程を書いているだけなので、何の操作をしたのか、後で見てもきっとわからないと思う。
きのうのこと、医院の窓口で「保険証、さっきMさんのところに忘れてきちゃったの、後で持ってくるから」と言って、待合室のソファに座り込んだ人がいた。
トートバッグの底をごそごそかき回しているうちに保険証が見つかったらしい。
「あ、あった、あった、ありました」
紙切れのメモ書きも、これに似たようなことになるのではないか。うまく見つかれば「俺のやっていることに間違いはない」とまた安心する。
VBAマクロのように、操作過程を記録できて、どんなアプリケーションにも使えるソフトはできないものだらうか。
画面の切り替えは厄介だから声で教えてくれるとよい。いや、声ではだめだ、言葉を覚えるのにまたメモが要るから。