ケパとドルカス

『肝心なことは目では見えない』
これは星の王子さまの友達になったきつねの言葉。

「感謝」は教えることができるか?

2014年01月24日 | 感謝

 今週のニューズウィーク誌上では、「感謝の気持ちを子供に教えるコツ」というタイトルで、どうやって感謝を教えるか、記事が載っていた。
 今「感謝」は私たちの群れの最重要継承事項であり、「子供に教える」ときたら元教師の経験からひと言もふた言もコメントしたいことでもある。

Photo 記事では、愛するわが子を「わがままで手に負えない子供にしない」ために、「感謝する心を教える」ためのHow to(ハウ・ツー)が載っている。「親が世話を焼き過ぎる」と「自分はダメだ」と感じてわがままで不機嫌な子供になる可能性がある、とか「ほめすぎる」のも高慢にさせる、「家庭内ルール」を厳守させると良い・・・・・とか。
 しかし結局は親自身が感謝し、(自分のわがままを)自制できているか、また定まった決まりをちゃんと守れているか・・・・という、親自身の人間力がポイントであるといっている。結局、「数千年前からの当たり前の原理原則」ではないかと思う。いわゆるカエルの子は(オタマジャクシのように、親と違って見えていても、結局は)カエルである。子供に高望みしても仕方がない。

 ところで感謝について、こんな記憶が私にある。私は小学生の頃、ものすごくうらやましくてしかたがないことがあった。それは登校後、昼時分から雨が降ってきた場面のこと。下校時間になると学校の脱靴場には、つぎつぎと傘を持った親たちが現れ、みなそれぞれ傘を差して帰宅して行く(こういう習慣がない地域も多いとは思うが)。そんな日の私は、最後までじっと、来るはずのない傘を待ち続けていた。雨の備えがないので帰れないということもあったが、なにかこう、これまで一度としてなかったことなのだが、しかし
Photoいつか傘をもって母が、いやぜいたくは言わない、誰かが来て来れることを信じたい、そういう望みをすてきれなかったのだ。

 しかし結局最後まで一度もそんなことはなく、私は一人ずぶ濡れになりながら帰った。母親は共稼ぎをしていたわけでもなかったので、時には恨みにさえ思ったものだ。たとえ周囲の皆が行こうと、母は自分のしたいことが大切なようで、まったく傘届けの必要を感じていないようだった。たぶん甘やかしに感じていたのだと思う。
 だから私が小学校の教師にな
った時、雨の日の脱靴場には気を配った。自分と似たような、そんな子供を見た時にはたまらなかったので、必ず傘を走り回って用意したり、職員室には内緒でこっそりマイカーで送ったりもした。そのうち各教室に、こうした時に備えて傘を各自置くようになったのだが。

 今思い返すと、あの時感じたつらさ、わびしさというもの。人並みには気にかけてもらえていない自分が、私に耐える力を培ったのではないかと思う。雨に顔を濡らして、それはちょうど自分の気持ちに合っていたのだが、とぼとぼと帰り続けた経験は、人に期待しないで生きる力になった。

 ところでわが家猫のコールだが、これがほんとうに甘やかされ猫で、しつけ失敗作だ。二人から溺愛されて、何をしても自分は許されるという「ゆるぎない確信」があるのがわかる。これは猫がどうのこうのではなく、育てた方の問題である。

 対するにドルカスの実家にクロという真っ黒な猫がいる。コールより半年早い春生まれで、信州が寒くなって来た時分、不憫に思われてようやくドルカス実家に入れてもらった猫である。クロには命の試練が寸前まであった。だから「恩」がわかっているのか、感謝というか礼節をわきまえている。たとえば決して台所のテーブルに上がったりしないし、わがまま猫のコールが来たら遠慮して自分の家に入らない。コールに爪の垢でも飲ませたい。

 何を言いたいか?

 感謝は教えることができないと思うことだ。儒教、朱子学などは中国・韓国・日本共通の文化だが、学べば人間性が上がるとされている。学問とは徳だった。しかし私はそういう学問で、知的な学習で徳ができるなどとは思えない。徳の要点である忠孝礼節の土台である「感謝」は、育ち(環境)という体験が決定的に大きいと思うからだ。

 私たちの教会は『感謝』の教会である。悪いと思われる「試練」「困難」こそ感謝する。どうしてか?それを許された神の計画があり、その計画は最善だからだ。つまり、つらい経験は己を低くし砕き、真に神の恵みがわかる人間へとされていくからだ。自分の努力ではできないことだ。その上で、砕かれた者に、実際的な祝福も神からくるのだ。祝福の価値がわかる者とされたとも言える。

 こうしてみると、雨の日に傘を届けてもらった子どもたちは、せっかくのチャンスを失ったことになり、わがままで手のつけられない高慢だった私に、とても良い薬だったと思えてきた。これは感謝である。  ケパ

コメント
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