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いのちを見つめたレンズ

2014年01月11日 | Camera


去年の暮れから義母の葬儀および法要に至るまでの約10日間、4人の娘(妻と妹たち)や孫たちのようすを記録しつづけたカメラは、ライカM8であった。
レンズはエルマリート28ミリF2.8とローライゾナー40ミリF2.8、そしてズミクロン50ミリF2.0の3本だ。一番よく使ったのはゾナー40ミリ。
M8のセンサーサイズはAPS-H型なので、レンズの焦点距離に1.33を乗じた数(40ミリなら53.2ミリ)が、35ミリ判に換算したときの焦点距離だ。
単焦点のレンズを使うときに、どんな焦点距離が自分の視覚に合うかは人それぞれであるが、それは単に画角的な好みの問題ではない。その人が日ごろどのように世界を見ているか、という形而上的な世界観や価値観に由来しているのではないかと思っている。



50ミリを標準レンズとするならば、この焦点距離が切り取る約40度(※)という画角は、人間の眼が片目で捉える視野に相当する。(※35ミリ判における長辺方向の画角。対角線方向では47度)
すなわち標準レンズを付けたカメラのファインダーを片目で覗き、そのときに見える映像は、ふだん見ている景色にもっとも近い。

これに対し、広角レンズは文字どおり広い画角を写しこむレンズだ。が、画角が広いからといって、世界が広く写せるかというと、じつはそうではない。
広角レンズというのは被写体に肉薄して使うもので、そうすることによって強い遠近感を生み、背景を被写体から遠ざける効果がある。なので広い世界を見ているようでいて、じつは目のまえの被写体だけしか見ていないことが多い。あるいは意識的に見せようとしていない。

また、望遠レンズはまさに望遠鏡のように、風景の一部分だけを切り取るレンズであるから、そのまわりの世界は見えない。しかも長焦点になればなるほど背景がボケるという特性があるので、じつは被写体以外はなにも写らない、という言い方さえできる。
広角レンズで背景を遠ざけたり、望遠レンズで背景をぼかすことは、写真のテクニックでは「いろは」の「い」であるが、レンズの力に頼った作画ばかりしていると、ものごとの本質を見あやまる。
写真でなにを記録するのか、そしてそれをだれに見せるのか。そのことを努々忘れてはならない。

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