元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「アダプテーション」

2006-09-01 06:51:16 | 映画の感想(あ行)
 (原題:Adaptation)2002年作品。
[概要]新進脚本家のチャーリー・カウフマンはノンフィクション「蘭に魅せられた男」の脚色を依頼されるが筆が進まない。彼と同居している正反対の性格の双子の弟ドナルドも脚本家を目指し養成セミナーに参加。行き詰まった兄を尻目に娯楽映画の脚本をモノにするが、事態は思わぬ方向に向かい出す。「マルコビッチの穴」の監督スパイク・ジョーンズと脚本家チャーリー・カウフマンによるシニカルな実録風ドラマ。なお、主人公のチャーリーは脚本家自身をモデルにしているが、弟のドナルドは架空の人物である。

[感想]映画のメイキングを装ってスタッフの苦悩を笑い飛ばそうという仕掛けはフェリーニの「8 1/2」と同様であるが、こういう趣向はフェリーニのような大物がやってこそサマになるもので、カウフマンみたいな駆け出しの映画人には似つかわしくない。

 それでも前半は主人公と双子の弟との、顔は同じだが映画に対する姿勢は正反対の二人の掛け合い漫才的な展開は悪くない。特に、才気煥発だったはずの兄が、スランプのあまり弟と同じ初心者向け脚本講座を受け、はからずも自信を取り戻してしまう展開には爆笑させられた。一人二役のニコラス・ケイジも快演だ。

 しかし、こんな一種の「禁じ手」はボロの出ないうちにサッと切り上げるのが鉄則なのだが、この作品は不必要に長い。後半、メリル・ストリープ扮する「蘭に魅せられた男」の作者との絡みになると、映画は平板な追跡劇になってしまう。時折挿入される進化論もどきの科学ドキュメント風画面も意味不明。

 たぶん作者は哲学的な「何か」を表現しようとしているのだとは思うが、それまでに暗示も伏線もないため完全に浮いている。全体的に“自分の頭の中だけでデッチ上げた楽屋落ちドラマ”との雰囲気が強く、新進作家としては早くも“ネタ切れ”との印象を受ける。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする