アジアフォーカス福岡映画祭2006出品作品。これは面白い。韓流コメディの快作だ。
妻の積立金を詐欺で失ってしまった専業主夫の主人公が、賞金目当てでテレビの“主婦クイズ番組”に出演したことから始まる騒動を描くこの映画、実に作りがスマートなのだ。わざとらしい泣かせのシーンも、出演者の自己陶酔的な大芝居もなく、明朗そのもののストーリーで誰でも楽しめ、後味は極上だ。もちろん、世相を反映した題材はアピール度が高い。
主演のハン・ソッキュが良い。最近は気難しい役ばかりで“熱演型”の俳優としての評価が固まったかに見えた彼が、久しぶりに肩の力を抜いた軽妙な役柄を上手くこなしている・・・・というか、こういう“気の良いアンチャン役”こそ彼に最も似合っていると思う。しかも、彼が演じるとどんなにアホなマネをやっても絶対に下品にならない。専業主夫として団地の自治会役員や家事をいそいそとこなす姿は、韓国俳優なら思いっきり臭く笑いを取りに来るところだが、ギリギリのところでスッと“引いて”いるあたり、なかなかのクレバーさを見せつける。
妻役のシン・ウンギョンも気の強さと可愛さとを上手くブレンドした妙演だし、幼い娘に扮する子役が腹の立つほど達者だ(笑)。明色を基調にした画面デザインも心地良い。
舞台挨拶に出てきたユ・ソンドン監督は、どう見ても20代の若造で、最初は本作でデビューした若手男優かと思ったほど。この若さで手練れの職人監督みたいに娯楽映画のツボを掴んでしまったとは、何とも驚きだ。今後の活躍が期待できる。