(原題:Mission: Impossible III )間違いなくこのシリーズでは一番出来が良い。ただしそれは“本作は素晴らしく面白い”ということでは断じてなく、単に前の2作が酷すぎたからに過ぎない(爆)。
もとよりトムくんに頭の良いエージェントなんか演じられるはずもなく、さりとてあまりに脳天気な活劇編にしてしまうと、根強い“往年のテレビシリーズのファン”から引導を渡されるのは確実。では今回はどうしたかというと、巧みな工作の段取りなんかハナから無視する代わりに、局面ごとの新メカや珍兵器のスピーディな“プレゼンテーション”に徹するという作戦に出た。確かにこれなら少なくともスパイ映画の雰囲気だけは味わえる。
これが劇場用映画デビューとなるJ・J・エイブラムスの演出は実に歯切れが良く、各シークエンスをボロが出ないうちにサッと切り上げ、見た目にはアクションに次ぐアクションのジェットコースタームービーに仕上げている。フィリップ・シーモア・ホフマンの悪役をはじめ、ヴィング・レイムスやローレンス・フィッシュバーンなど、脇の面子も揃っていてトムくんをしっかりフォローしている(笑)。
ただし、筋書きの方は超脱力。往年の香港製アクションも真っ青の場当たり的な脈絡のなさで失笑の連続だ。攻防戦の焦点になる“ラビットフット”なるシロモノの正体が不明であるのは序の口。後半には、作っている側は気の利いたドンデン返しのつもりが無茶苦茶な与太話に終始しているのには閉口するしかない。
ただし、あまりにも脚本が良く出来過ぎていると、主役をもっとスマートにする必要があり、そうなるとトムくんが主演では似合わなくなるわけで、そのあたりの匙加減としてはこれが妥当かも知れない。まあ、暇つぶしに何も考えず観るにはいいだろう。